早めの思春期
俺は、三人に薬草を切る様子を見せながら、こう説明する。
「この薬草は地中に本当の茎があって、この茎に見える部分は全部葉っぱなんです。なので、少し上の方を切れば簡単に切れますし、暫くするとまた生えてきますよ」
そうして、この辺りで見かけた薬草の見た目や特徴を説明していく。
「すげぇ!まるでマーシャの母さんみたいだな!」
「マーシャさんのお母さんも詳しいんですか?」
「ああ!マーシャの母さんは街でポーションを売ってるからな。取った薬草もその店で買い取ってもらってるんだ」
マーシャが俺の薬草に強く反応したのは、単に依頼のためだと思っていたが、どうやら違うみたいだ。
「よかったら、この後一緒に行こうぜ!なぁ、いいだろマーシャ!」
薬草を観察しながらなにやらアリスと話し込んでいる様子のマーシャだったが、自分に話が振られたことに気づくと、顔を上げた。
「うん、これだけお世話になったし、まだ聞きたいこともいっぱいあるしね」
アリスもこちらを向き、俺にこう言った。
「それより、私達同じくらいの年齢でしょ?あんまりかしこまったら、息が詰まっちゃうじゃない」
「そうだな!俺も気になってたんだ!」
「あんたはかしこまったことなんてないでしょ」
言われてみれば確かにそうだが、同年代の子どもとあまり接点がなかった俺は、少し躊躇いながらもこう言った。
「分かった。それじゃあ、改めてよろしくな」
「おう!それじゃ、マーシャの家に行こうぜ!」
マーシャの家の道中、三人と少し雑談をしたが、俺の身の上を話すと三人とも驚いた様子だった。
「じゃあ、オーラにはポーション屋はなかったの?」
「あるにはあったが、材料を売りに行くだけで実際に使ってみたことはないな」
他の街に行ったことのないらしい彼らにとって、オーラの街並みや様子はかなり興味をそそられるものだったのだろう。
そんなことを話しているうちに、看板に大釜の描かれたお店へと辿り着く。
「お母さーん!薬草取ってきたよ!」
今までで一番大きな声を出しながら、マーシャは店の裏へと入っていく。
暫くすると、黒のローブを来た一人の女性を連れてマーシャが戻ってくる。
「あらあら、いつもは三人なのに、新しいお友達が出来たみたいね」
おそらく、この人がマーシャのお母さんだろう。
俺はお辞儀をしながら挨拶をする。
「こんにちは、私はキュクロスと申します。皆さんとは街の外でお会いして、ご縁があって一緒に薬草を採取したのです。買取をお願い出来ますか?」
カバンから薬草を取り出し、カウンターへと置く。
「あらあら、丁寧にどうもねぇ。私はラミルよ、よろしくねぇ」
ゆったりとした喋りではあるが、その手はテキパキと動き、すぐに薬草の確認を終える。
「あら、状態が良いわね、これなら銀貨二枚ってとこかしら」
「ではそれで、お願いします」
そうして手渡された銀貨をポケットの中へ入れる。
「キュクロスに教えてもらったんだ、綺麗に切れてるだろ!」
「あらあら、三人ともよく出来てるわ、キュクロスくん、ありがとねぇ」
三人の薬草の確認を終えたラミルさんは、こちらを向き、微笑みながらそう言った。
「それじゃあ飯でも食べに行こうぜ!もちろん俺がキュクロスの分まで払うからよ!」
一日中薬草採取をしたにも関わらず、そのハツラツさに衰えを見せない様子でマークは言った。
「ごめん、マーク。色々あって昨日から寝てなくて、体力の限界でね。代わりにと言ってはなんだけど、また明日も一緒に薬草採取に行ってくれないか?」
窓の外を見ると、先程より少し暗くなっていた。
もうそろそろ日が沈むのだろう。
「おう!もちろん大丈夫だぜ!二人は明日どうする?」
彼はアリスとマーシャにそう声をかける。
「もちろん行くわ、まだまだ学び足りないもの」
「うん。それに、まだ何も返せてないからね」
二人の返事を聞き、嬉しそうな顔でマークはこちらにこう言った。
「よし!明日の朝、門の前に集合な!」
「分かった。じゃあ、また明日」
俺はそう別れを告げて店を出る。
そうして宿へと戻ると、荷物を置き、床へ寝転がる。
食べ忘れた干し肉を取り出し、齧る。
俺はちゃんと喋れていただろうか。
今までのやり取りを思い出し、振り返る。
悪くはなかったはずだ。それに、明日も行こうと誘えたのも大きい。
唐突な出会いであったが、新鮮な体験ができたな。
それに、マギアをよく知る彼らの話を聞けたし、薬草を扱う店を探す手間も省けた。
正直なところ、俺はかなり緊張していた。
なにしろ、同年代の子とああやって関わるのは初めてのことだったし、いつも一人だったからだ。
次第に緊張がほぐれていった俺は、明日のことを考えながら、ゆっくりとまぶたを閉じた。
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




