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僕のルーズな日常  作者: 案山子 劣四


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6/7

凹んだ気持ちは、彼に慰めて貰い

それからは、少し会話をした後それぞれ別々の電車に乗って帰った。心持ち、いつもより街灯が少なく見える帰路を、アルコールと沈んだ気持ちで重い足を持ち上げながら家に着き、部屋の鍵を開けると、電気が着いていることに気が付いた。


消し忘れだろうか。と思ったけれど、すぐにソファに横になってくつろいでいる彼の姿が目に映る。


「おお、早かったな。」


スマホから目線をこちらに向けて一瞥し、それだけ言うと、すぐにスマホに目線を戻す。なんでもなさそうなその瞳の奥に、安堵が見えて、僕は察した。さては、僕が浮気しないか、不安だったんだな。


先程まで落ち込んでいた気持ちは、そんな彼への愛しさで上書きされた。ソファの、彼が頭を置いている側に回り込み、床に座って肩から脇の下に腕を滑らせるように抱き着き、頭を彼の頭の上に重ねる。



「……重い。」


そう言いながら、払い除ける様子はない。


「何その漫画?」


「『将太の寿司 全国大会編』。今、大念寺三郎太が電車に轢かれたところ。」


「こういう時に読む漫画が、『将太の寿司』でいいわけなくない?てか、なんで寿司漫画で人が電車に撥ねられるの?」


「別に何読んだっていいだろ。ガキが頑張ってる漫画が好きなんだよ。」


「見た感じ、大念寺三郎太?って人はガキに見えないんだけど……?」


そんな僕の問いには答えず、スマホの画面を消してポケットにしまうと、自分の頭の上に乗った僕の頭を、彼は優しく撫でた。


「それにしても、こういう甘え方をしてくるの珍しいな。」


どこか見透かしたような、優しい言い方だった。


「……まあ、お酒飲んでるから。」


それも、嘘ではない。お酒を飲んだせいで、いつもより理性的に行動できない、という事にしてもいいくらいには心地いい酩酊感はある。


顔を持ち上げて、彼の頬に軽くキスをして、再び顔を離す。すると、身体を90度彼は回転させて、僕と顔の向きは正反対だけれど、互いに見つめ合う姿勢になったので、反対の彼の口に、自らの唇を重ねた。


「へえ。ま、そういう事にしたいなら、そうしてもいいけど?」


そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべ、頭を引き寄せるようにして僕の唇を奪った。強引な彼の手つきは、先程までと変わらず、どこか優しい。


「今日、合コンでね。」


「結局話すんかい。」


そう言って、呆れたように彼は笑うが、僕は続けた。合コンで散々な目に遭ったこと、彼女に助けられた事、そして、彼女に打ち明けようとしたけれど、冗談にして誤魔化した事。


彼は、合コンで遭った事に関しては顔を顰めていたが、それ以外はなんでもないような顔で聞いていた。事実、僕が話し終えた後、



「まあ、そんなもんだろうな、世の中。」


と、あっけらかんとした様子で言っている。



「なんか、冷めてない?」



恥ずかしながら、これを理由に彼に沢山甘やかしてもらうつもりでいた。だから、少し温度差を感じて、一緒に観た映画を、自分だけが気に入ってしまったかのような疎外感を覚える。


「まあ、気持ちは分からなくはないからな。合コンの奴らは最悪だが、あいつの方は。お前だって、いきなり友達が『同姓愛者だ』って明かされたら、受け入れる受けいらないはともかく、びっくりするだろ。多分、そういう事だと思うぜ?」


彼の言っていることは、確かに納得出来た。思い返すと、彼女の反応は拒絶と言うよりも、動揺に近かった、ような気がする。


「けど、もうあの子にカミングアウトするのは怖いなあ……。」


座った姿勢のまま、彼の横に突っ伏して、顔をソファに埋める。彼の匂いがして、少し落ち着いたが、彼女の反応を思い出して、私の胸はざわめいた。


「まあ、別にしなくていいだろ。」


「そうだけどさ、やっぱり隠し事はない方がストレスないし。」


「言われた側は、隠し事を抱える羽目になるけどな。」


「……なんか今日、意地悪じゃない?」


普段から、別に優しい方ではないけれど、それにしても今日はどこか突き放されているような、そんな気がする。体の距離はいつもより近いのに、心はいつもより離れている。そんな気がする。


「彼氏がいるのに合コンに行くような浮気者にはふさわしい態度だろ。」



「……別に行きたかった訳じゃないって、知ってるくせに。」


そう言って拗ねながらも、彼がこうして嫉妬してくれているのが、少し嬉しい。それはそれとして、愚痴は聞いて欲しいけれど。正しくは、聞いて欲しいと言うより、「そうだね、辛かったね」と、とりあえず同意して欲しいだけなのだけれど。



「ま、とにかくだ。落ち込んだのなら、明日気分転換にどっか行くか。」


「え、いいの?それならカラオケ行こうよ。」


僕の変わり身の早さに何か言いたそうではあったが、二、三巡した後、深くため息を吐き、黙って僕の頬を撫でた。



兎にも角にも、僕が行った合コンの思い出は、こんな感じ。

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