第五十二話=始まる終わり
ラルフは未だに目を覚まさない。しかし、それを見過ごすことはできないのは、私たち仲間というもの。
師匠は相変わらず人がどこにいるのかはわからない。ですが、このあたりにいるのはわかっている。探知を使って回りを探ったあと、師匠の力を探知できた。だが、その場所が……まさかの王宮内だった。
おそらく師匠は、捕まったんだろう。どうするべきか……そして、彼女の隣には、もうひとつ強い力がある。あれはまた、誰だろう。
「チェレスさん!」
前線へたどり着いた。硬く閉ざされていた城門は今、すでに開かれていた。そして、その城門を潜ろうとするチェレスさんを呼び止めた。
「なんだ、何が用だ。」
明らかに不機嫌だ。まぁ、私に呼び止められたせいだろう。見た感じ傷はつけられていないし、体力的にも大丈夫みたいだ。だから今攻め込もうとするときにとめられたのは、きっと不機嫌の理由でしょう。
「はい、お時間を頂戴します。このあたりに、何か牢屋がないのでしょうか。」
「アタイにそれ聞くの?もう十何年も帰ってきていないのに。」
「う、うろ覚えで大丈夫です!師匠が、捕らわれているみたいです!」
「捕まった?例の探知の賜物か。しかしな……おい、アンタらこいつについていけ。」
そして、隣を走っていこうとした兵士を捕まって私に投げつけた。
「おっと、な、何をなさるのですか、チェレス様!」
「ついていってやれ、心配だ。」
「はぁ、わかりました。で、どこへ行くんですか、ゆうしゃさん?」
「ありがとうございます。少し、牢屋を探そうかと。」
「牢屋?誰かが捕まったんですか?」
「はい、そうです……では、行きましょうか。」
歩き出す私たち、そして私たちの前でチェレスさんが兵を率いている。
足音が響いてくる。大理石つくりの地面を軍靴が叩いて、国が奪還される足音が響いている。
チェレスさんたちとの進行方向が違い、私たちは牢屋を探し始めた。師匠を救い出すために。
だけど、師匠はいつ捕まったんだろう。そしてどこで?この前のスラム街で会ったのが最後で、あれから何日も会っていない。そして動向もわからなかった。だから、今捕まっていることが何よりも驚いている。
「しかし、どこに……」
牢屋は地下に置かれているはずだ。だが、どうして王宮の中におくんだ?おかしいだろ。外に設置されているべきだろ。それなのに……?
「この部屋……か?」
しばらく探して、師匠の力を探知できた部屋をやっと見つけた。しかし、これはどう見ても牢屋ではない。むしろ客室である。少なくとも外から見た感じはそうだった。
「うん?」
ドアノブに手を掛け、開こうとしたがどうやら鍵がかかっているみたいだ。だが、今は鍵なんて探す暇はない。
「兵士さん、手伝ってくださいますか?」
「あぁ、まかせてくれ。」
ドアの前を譲って、破ることを頼んだ。そしてすぐに……どったん!と、斬られて壊れて、蹴って開いた。
「どうぞ。」
「助かる、ありがとう。」
兵士さんに礼をして、中へ入った。
しかし、中では……
「師匠!」
師匠と、見知らぬ女性が眠っている。しかもベッドの上で、すやすやと眠っておられる。
「ふえ?ゆ、ゆうしゃ、君……?」
まだ眠たそうに起き、目をこすりながら私の姿を確認した。
「よかった、何もされませんでしたよね。」
「は、はい!しかし、ここは……?うわぁ!きれいなお部屋!」
どうやら頭が花畑な師匠のようだ。いつも通りで、なんだか安心した。
「しかし、隣にいる彼女は……?」
「うーん?あっ!レイチェルちゃんだ!」
「うっ……ん……」
名前を呼ばれて、やっと起きた。レイチェル……つまり、この前チェレスさんと話していた、あの女性?ということは、カルカッサの腹心の魔族!?
「あぁ、クリアか……アタシは、眠っていた?」
自分に質問をしたあと、彼女も身を起こした。見た感じ外傷はないようだ。
「君がゆうしゃか。」
「はい、そうですけど。だが、どうして?」
「どうして知っているか、だな。例の狂神から君のことを聞いた。ただ、それだけ。」
なるほど、狂神か……つまりアマドリですか。彼は私にも目をつけているのは、光栄か、もしくは疑問を持つべきか。
「ところで、どうしてここに?」
「覚えていない、何も……何をされたのか、もしくはされていないのか、それでさえも……」
彼女からは、恐怖を感じない。むしろ、疑問、猜疑に満ちている。
カルカッサは彼女を捕まって、ここに閉じ込めたのは何のためだ。そしてその隣には師匠までいる。いったい、何を考えているんだ……?
「――!!」
外から大きな音が鳴り響いてくる。おそらく何かが崩れたんだろう。
「どうした、外で何が起こっている!?」
「はっ!我らがチェレス様が、ここまで攻め入って、今にでも国を奪還する……すみません、つい……」
「いや、いい。しかし、チェレスがここまできたのか……ところで、ゆうしゃ。ラルフは?」
「それが……」
ここまでのことの経緯をざっくりと教えた。そうしたら、レイチェルさんがベッドから降りてきた。
「ラルフの居場所を教えてくれ、助けに行く。」
「えっえ!?助けられるんですか!?」
「任せてくれ。」
それだけ言って、外へ出た。すると、すぐに戻ってきた。
「道案内を頼む。」
「はい、わかりました。行きましょうか、師匠。」
「……いや、いいの。アタシはチェレスちゃんのところに行く。」
うん?何も食べずに、素に戻った?
「そうですか、わかりました。では、兵士さん。師匠の護衛をお願いできますか。」
「ああ、大丈夫です。一応進行方向を覚えております。」
師匠もベッドから降りてきた。パッパッと、体についている埃を払い、周りに武器になれるものを探した。
そういえば、いまさらだが、師匠たちの剣はどこへ持って行かれたんだろう。
外へ歩いていった。師匠と兵士はチェレスさんの元へ、私とレイチェルさんはラルフの場所へ。
(つづく)




