第四十五話=束の間の休息
戦いが、終わった。それを証明するかのように、姫様から一言が飛び出した。
「すまん、ちょっと……疲れた。休ませてくれ。」
休みたい、そして、ちゃんとした人の言葉。それを姫様の御口から聞けた。姫様は、やっと、元に戻った証明である。
「いいですよ、お姉さん。ゆっくり、休んでください。」
「あぁ……」
それだけを言い終えると、姫様の体がガクッ!と倒れようとした。それを支えたのは、非力なラルフでした。
「おっとっと……ちょっと、ボクには……!」
強がって姫様を支えようとしているのを目に見た私は、急いで前へ行った。
「ゆうしゃお兄さん!」
「お疲れ、ラルフ。」
姫様を変わりに受け取り、自分の背に乗せた。が……
「あ、あっつ!なんだこれは!」
姫様の体が異常なまでに熱かった。さっきまで力が暴走していたのはそこに影響を及ぼしたのか。戦っている最中は気にしていなかったけど、よくよく思い返すと本当に熱かった。特に姫様に近づこうとしたときに。
「大丈夫ですか?」
「なんの、これくらい……!」
しかし、異常な熱さに汗もあふれ出て、手も少しだけしびれている。これはさすがに私だけでは……
「ほら、任せろ。」
「あっ、ああ、ちょっと、チェレスさん!」
「……我が主の決定に、異議は?」
「あっ、ありま、せん……」
チェレスさんが変わりに姫様をおんぶした。それを抗議しようとした私をククレスさんが遮り、剣を喉にまで突かれてしまった。さすがな忠誠である。
「しっかし、あっちいなぁ、プリスティンのやつ。」
「ご命令であれば、いつでも替わらせていただきますよ。」
「いいっていいって、アタイにまかせな。」
「はっ、畏まりました。」
主従関係が、さすがの鮮明さ。しかし、周りにいる兵士たちは何をやっているんだ?見ているだけでいいのか?いいわけないだろ。
………………
…………
……
しばらく歩いたら、やっとキャンプに辿り着いた。途中で何度か姫様が背中からすべり落ちそうになっていたが、それを支えるため私とラルフが行った。
私はただ、純粋に、姫様のことが好きなだけで支えようとしたけど、ラルフは?どうしてそこまでして姫様の体の安否が気になるんだ?やはり、こいつも……?
「大丈夫かな、お姉さん……」
「まぁ、たぶん、大丈夫じゃないですか?もしかしたら逆にその力を手中に収めるかもしれませんよ。」
「そうだと、いいんですけど……心配です……」
心配するラルフ、そして安心する私。
キャンプにて、姫様をしばらく安置した。ここなら警備もものすごく厳重で、ここでならいつでも休めるでしょう。
「さて、と……話を聞かせてくれ、ククレス。」
姫様をほかのテントに置いた後、私たちはこのテントに集められた。ここに居るのは、チェレスさんはもちろんのこと、ククレスさん、私、そして一人の兵士……兵士?ラルフは姫様の看病で、ここに居ない。
指揮官の椅子に腰をかけ、ククレスさんに話を伺った。
「話というのは、どんな話ですか?」
「いうまでもねぇだろ。カルカッサの野郎の軍勢の規模、そして装備の詳細、さらには詳しい資料を。」
「ちょっとちょっと、チェレスさん!いくら彼が元カルカッサ軍の魔将軍とはいえ……」
「お待ちになってください、ゆうしゃさん。我が主よ、それらの要求に関しましては……」
さすがに飲めないでしょう。いくら元とはいえ、彼はカルカッサ軍の第二指揮者である。そんな地位に居座っていたものに主を裏切って、情報を横に流すなど、無理にもほどがある。
「喜んで知っているすべてを、お話させていただきます。」
――!?
「どうしてなんですか、ヴィスコンティ様!?あなたはそれでも元カルカッサ様の魔将軍ですか!?」
話を聞いていた兵士……いや、この方は一応参謀というかんじでしょうか。名前は聞いてなかったけど、見た目的には参謀的な装備をしている。
「口を慎め、ケリス。王の御前であるぞ。」
「王?あれはただの得体の知れない小娘だぞ!?」
「貴様、我が主を……!」
「控えろ、ククレス。ケリス、でしたな。」
「そうだ。何か?」
「アタイのことを得体の知れない小娘、と言うのか。」
「あぁ、偽りない。」
横からギシギシと、歯を噛み締める音がする。ククレスさんが、すごく怒っている。そして今すぐにでも怒り狂いそうになっている。
「そうか……つまり、アンタはアタイに下すことに反対している、ということだな。」
「それがどうした。」
これは、すごいことだ……はっきり言ったよ、このケリスって言う人。
「まぁ、それでいい。アタイのことを認めないのであれば、ここから去るか、もしくは屈辱を耐え忍んでアタイの命令を聞くか、ちゃんと選ぶんだな。」
……うん?なんだか、外が騒がしい。兵士が走っている音がする。
「ならば、これが答えです。」
ケリスがマントを大きく振った。そして、テントの外へ歩いていった。どうやらチェレスさんの命令を聞きたくないようだ。もしくは、カルカッサを裏切りたくなかったのかもしれない。
「お待ちください、ケリス!」
後を追ったのはククレスさんだった。
「必ず、考え直させます!どうか、お怒りにならずに!」
「あぁ、大丈夫だ、ククレス。」
それを後に、ククレスさんもテントの外へ向かった。しかし、外にはすでに……
「は、放せ!あなたたちは、カルカッサ様への忠誠はないのですか!?放せ!!」
ケリスが、捕まれた。だからさっきまでテントの外が騒がしかったのか。最初から、自分に反するものを捕らえようとしたのか、この魔族は……
「みなのもの、よくやった。閉じこんでやれ。」
ハッ!と、捕まった兵士が槍をドンと地面に叩いた後、ケリスを移送した。
「お、お待ちください、我が主!」
「まぁ、そう焦るな。アタイが直々に話を聞かす。大丈夫だ、うまくいく。」
「そう、だといいんですが……」
落胆した。しかし、今はチェレスさんに任せるしかないと悟った彼は、静かに元の位置に戻った。
「では、さっき言っていたこと、実行できるな。」
「……はい、ですが、どうか、彼のことを咎めないでください。彼はただ……」
「ほう、アタイに示談とな……立派になったもんだな、ククさん。」
「いえいえ、そんな、滅相もございません。」
そして、一瞥されたあと、私はテントの外に出た。
さっきのケリスさん、本当に大丈夫だろうか。
(つづく)
プリスティンは休みに入った、しばらくの間だけ、いい夢を見れるようにと祈るラルフ、そしてすぐにでも起きてくれると信じるゆうしゃ。
はたして、これからはどうなるんだろう。




