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姫様!魔王様!  作者: 煌黒星
アリア王位奪纂
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第四十一話=終わらぬ暴走

 周りが暗くなった。とうとう夜が来てしまった。それなのにこの暗闇の中には、暗さを知らずに光っているものがあった。

  「うらあああ!!」

 それは、姫様の目だった。真っ赤に、怪しくしかし美しく輝いている。原因はわからないが、推測はできる。姫様を暴走させたその力のせいだろう。あの力は何かはわからないけど、おそらく……アマドリの力であろう。この前、姫様は私の目を見てアマドリに操られていることを確信した。ならばもしかすると……?

  「チッ!さ、さすがに、手が、しびれる……!」

 何度も何度も姫様の爪を剣で防いできたせいで、手がしびれ始めた。それだけに姫様の力は強い。

 それなのに、私が攻撃を防いでチェレス軍に攻めさせているのにもかかわらず、一向に止まらない。攻撃をちっとも休もうとしない。激しくなっているなら焦っていることが分かるけど、それすらしない。

 まるで、こっちの攻撃が全く通じていなかったように感じる。

  「ぐるぅぅぅ……」

 急に距離を取り、後ろへ大ジャンプした。獣の唸り声を出しながら、こちらを威嚇している。どういうことだ?

 ふっと後ろへ向いた。私のすぐ後ろにラルフがいた。両足がぶるぶるふるい、いつ仕掛けるかすらままならない状態。

  「あわ、あわわわわ……」

  「恐れるな!貴方だけが頼りなんだぞ、ラルフ!」

  「で、でも……!」

 やはり怖いのだろうか、自分と仲がいい人の成れの果てを前にして。それでも、お前にはやってもらわないといけない。

  「あな……お前しかできないんだぞ!動きを止めるのは私たちに任せろ!だから……!!」

 剣を握りなおして、姫様に向かって走った。

  「いつでも救えるように、準備をしろ!」

  「ゆうしゃ、お兄さん……!」

 怖いのはお前だけじゃないぞ!私も怖いと思っている!しかし、頑張っているお前を見たら勇気が出た。なのに今、お前が弱気になってどうする!

  「はぁあああ!!」

 カン!と、私の攻撃を腕で受け止めて、そして私をぶっ飛ばした。

 う、うそでしょ!?う、腕で?腕でだぞ!?それなのに傷一つすら負わせられないなんて、おかしいでしょ!?

 一体、どこからどこまでが鋼のように硬くなっているの?もしかしてチェレス軍たちの攻撃が全部、全部全部通らなかったのもそれのせいなのか!?

  「う、うっぐっ!」

 ドッタン!と、宙を舞い、そしてまた地面に戻った……激突した。背中が痛い。いや、全身が痛い!さっきまでとは全然違う、さっきまでは全然痛みを感じなかったのに、どうして!?

  「ま、まさ、まさか!?」

 手を何とか持ち上げて、手を見つめた。それだけでなく、体中に巡る力を改めて確認した。驚きの結果が出た。

(す、(ストレングス)が、消え始めている!?)

 なんでだ、どうしてなんだ!どうして私の力が消え始めている!寄りにもよってこの時に!この一番大事なトキに!

  「うぐあ、い、痛い……!!痛い痛い痛い!」

 自然に悲鳴を上げた。今日の痛感が一気にあふれ出した。そして、それを聞いたチェレス軍たちも騒ぎ始めた。

  「ゆ、ゆうしゃさんが……?」

  「う、嘘だろ!?ゆうしゃさん!?」

 私が悲鳴を上げたことに影響されて、チェレス軍の士気が下がっている。それだけでなく、混乱まではじまりそうな気がする。

 だめだ、ここで終わらせたら!絶対に、ダメだ!だから……だから!!

(頼む、アンタは神でも、魔王でもいい!私はお前を信じるから!)

  「もう一度、私に力をくれ……!!」

 強引に手を前と出す。こうすれば誰かが……アマドリが私の手を掴むはず。頼む、お願い、お願いいたします!私に力を!私に姫様を助ける力を、私に皆を守る力を!

 (くれ!くれ!くれ!!くれええええ!!!)


………………

…………

……

目の前が真っ暗になってしまった。最後の最後までアマドリは来てくれなかった。私の手を引っ張てくれなかった。私を、助けてくれなかった。

 しかし、他の存在が、私に手を差し伸べた。

  「お前は……?」

 周りは、草原が広がっている。そして、目の前には一人の男性が座っている。なんとなく、なんとなくだけど、この人の名前が分かる。

  「……」

 遠方にある太陽に指をさした。そして私はそれにつられて太陽を目の当たりいっぱいに収めた。本来なら眩しすぎて目を閉じるや、目を逸らすはずなのに、私は太陽をただじっと見つめていた。

  「……」

  「え?わ、私に、ですか?」

 彼は何を言っていない。けれど、彼が何を伝えようとしているのはわかる。「これを、おまえに。」って。手に持っているものを私に押し付けた。それはただのガラスの玉だった。

  「これは、なんですか?」

 しかし、彼は何を言わなかった。それを受け取ってって急かしている。早く受け取れ、早くしろと。空耳ではあるが聞こえた。

  「わ、わかった、わかりました!受け取ればいいんだろ?」

 その手からガラスの玉を受け取った。そして、徐々に、徐々に彼の顔がはっきりするようになった。

 ぴかぴかな金色の髪の毛、炎のように赤く光っている瞳。そして、まっすぐに私を見つめている。その目を見た私は、やっと確信を持てた。

  「勇者、さん……?」

  「いいや、俺は勇者なんかじゃねぇ。」

 伝説に出てきていた勇者。その名前も……アマドリ=ユウシャ。私達後世の人たちからは彼のことを……始まりの勇者と呼び、慕っている。

  「俺なんかが、勇者になれるわけねぇだろ。な?勇者さん。」

  「え、わ、私が、勇者?」

 そして、彼は一面の鏡を取り出した。無から有を……伝説上では彼の力は絶対なる破壊(アブソリュートデストロイ)であったが……

  「今、俺の前に現れたお前こそが、本当の勇者だ。」

  「……」

 鏡越しで、自分の顔を見つめた。黒い髪と真っ黒の瞳。そして、さっきの戦いで負った傷……こんな俺が、勇者なわけないでしょう。

  「自分の仲間を守ろうとしたお前こそが、本当の勇者だ。」

  「だと、いいですけど……」

 彼の隣に座り、一緒に太陽を眺める。

  「私がここにいることの意味、分かりますよね?私はすでに、死んだってことですよ……」

  「そうだな。」

 隣に立つ勇者さん。

  「ゆうしゃは、死んだな。」

  「え?」

 私を見下し、強い力を込めて続けていった。

  「ならば、勇者として生まれ変わればいいんだろ。」

  「それは、どういう……?」

 ふっと気が付いた。手に持っていたはずのガラス玉が消えていった。いつの間に?そして、どこに?

  「え、ガラス玉が、え!?」

  「大丈夫、あれはもういらないから。」

 しゃがんで、私の額と勇者様の額をぶつけ合った。

  「さ、そろそろ目覚めの時間だぞ。勇者様。」

  「ちょ、ど、どういうことですか?勇者さん!?」

 視線がボヤ付く……そして強いめまいがしている。どういうことだ?私は、どうなっている?

  「うっ、あ、頭が……!!」

 頭を抱える。頭が痛い、割れそうに痛い。いつ爆発してもおかしくないようにすごく痛い。

  「栄えある、われら勇者一族を。」

  「勇者、さん……?」

 強引に目を開けた。勇者さんを見つめようとしている。が、徐々に、徐々に勇者さんの姿が見えなくなっている。薄くなっている。さっきのあのガラス玉は、もしかして……!?

  「俺の代わりに、世界を救ってこい。」

  「勇者さん……?う、うが、あああああ!!!」

 頭が、割れる!割れる、割れる、割れる!!

………………

…………

……

  「これで大丈夫か、『神』よ。」

  「ああ、ありがとうな、ユウシャよ。」

  「アンタなんかのやり方は正直言うと、気に入らないが……」

  「が?」

  「……ふん。すべてを知った今は、俺なんかに出る幕はないってわかるよ。」

  「ははっ、そりゃあどうも。ユウシャ。」

  「やめろ、アマドリ。アンタにそう呼ばれると腹立つんだ。」

  「そうか、ならばもっと呼ぼうかな?」

  「アンタなぁ……はぁ、言うたびにイラつくわ。やめだやめ。」

  「はいはーい。しかし、これであいつは大丈夫だね。」

  「だといいんだがな。」

  「ほう?私の推測が当たらないとでもいうのかい?」

  「アンタの推測は一度たりとも当たったことがないだろうが、いい加減にしろ。」

  「はっ、言うねぇ……推測が当たらないならば……」

  「その未来を『作れ』ばいいって?もううんざりだよ。」

  「ははっ、やはりお前は話が合うな!」

  「ふん。」

  「どころで、ユウシャよ。」

  「それはやめろだっつってんだろうが。」

  「はいはい、まったく怒りっぽいのは昔と今も変わらないね。ならば……」

  「オリジナルドール、お前はまた、常世で遊びたくないか。」

  「いやだね、ドールはドールらしく、闇に屠られるだけでしょ。じゃあな、俺はまたしばらく寝るぜ。」

  「ああ、そうか。またいつか、お前を起こすかもしれないから、その気でな。」

  「次に起こすときは、本気で殺すからな。」

  「ふっ、肝に銘じておくよ。」


(つづく)

 原初の勇者、その名は「アマドリ=ユウシャ」。そして彼の実態は、オリジナルドール......神は彼を作って、最初の伝説を自ら作った。それに何の意味があるのかは、まだ、誰もわからぬまま。

 そして、彼の実態を知る者は、たとえ原初の賢者である『アオ=グレイス』でさえも、知らなかったのでしょう。

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