第四十話=いざ、戦の時
段々と日が暮れている。周りが徐々に暗くなっている。そんな中で、私達は姫様を探している。
姫様が通った道は決まってどこもがボロボロになっている。とはいえ、今のこの町はほとんどの建物が崩れていて、生存者は……いることを願っている。
「……」
「どうした、ラルフ。」
ラルフが俯いている。やはり、不安なのだろうか。
「ううん、ただ……」
「ただ?」
「ボクが言うのもなんですが、でも、ボクが言い出したし……」
「??」
頭の中ははてなマークでいっぱいだ。だが、なんとなく、なんとなくだけど察しがついた。
「ボクたちで、本当に、お姉さんを助けられるのでしょうか……」
「やはりか。」
思ったことが見事に的中だった。彼はやはり、それの心配をしていた。
「大丈夫だよ、貴方は一人じゃないから。」
しゃがんで、彼に微笑んだ。
「周りに居るチェレスさんの兵士たちや、私も居る。大丈夫だ、心配するな。」
「で、でも……」
「チェレスさんも言ったよね、一回の失敗でくじけるなって。」
静かに、彼は黙り込んだ。
「何回も、何回もチャンスを作るから。大丈夫、成功するまで試せ。思う存分に試せ。」
「ゆうしゃ、お兄さん……」
やがて、彼の目が少し光を取り戻した。
「さぁ。」
手を出した。少しだけきょとんとしたけど、やがては私の手に自分の手を覆った。
「今度は、ボクがゆうしゃお兄さんを守ります!」
「……ふふ。」
小さな声で、小さく笑った。それは彼に向けた嘲笑ではなく、寧ろ安心して任せられるように感じたおかげで、自分の中に居る軟弱ものを嘲笑う笑い声だった。
「あああ……ぐらああああああ!!!!」
遠いところから叫び声が聞こえた。あれはきっと、姫様だ。
「行こう。」
「うん。」
ただ、ただ私を握る。握りながら彼の目はまっすぐに雄たけびを聞こえた方角を見つめる。今の彼なら、きっと……負けることはないだろう。
「くっ!な、なんなんだ、こいつ!」
カン!キン!と、金属たちがぶつけられ合う音が響いてくる。しかし、チェレス軍を襲った者は……
「ぐう……ふう……」
剣を、使っていない。彼女は、姫様は爪で応戦をしている。体中は傷だらけのように見える。服のあちこちに破れた痕がある。が、血を流している様子はない。
「姫様、そろそろやめてください!」
剣を抜き、姫様に向かって走った。足はガタガタに震えている。手もぶるぶる震えている。心の中は恐怖でいっぱい。正直に言うと今すぐにでも逃げ出したい。こんな化け物に、私は絶対に勝てないとも思っている。
「ぐるぁあああ!」
それでも、私は……!
「姫様!」
戦う。姫様を、救う!
ギシシシシシ……剣と爪がぶつかり合い、火花が周りを飛び散った。今の私ならできる、この力を持っている私なら絶対に、絶対にできる!
絶対に、姫様を止めて見せる!
(つづく)
戦いの幕は、開けられた。それを見る者は、ひそかに、自分一つだけの存在で、笑っている。
戦いの幕はまたすぐに閉じるだろう。私はそう、信じている。




