第三十九話=目指すは、化け物(プリスティン)の沈黙
「え、こ、これは、ど、どういうことですか?」
周りにはカルカッサ軍、そしてその者たちが囲い、命令を聞く者は……
「あぁ、見ての通りだ、勇者様。こいつらは……」
パチン!と、指を鳴らした。そして隣に立っている魔将軍と思われる魔族が、いきなりドスン!と足を鳴らした。
「我々は、魔王、チェレス=ティーアの僕である!」
「その通りだ。だからそう畏まらなくていいぞ。」
「え!?て、あ、貴方は、ククレスさん!?」
後ろから頭をひょっこり出すラルフ。
「ええ、お久しぶりです、ラルフ様。」
その声を聞いて、怯えながら私の服を掴むラルフを見て、ククレスと言われる魔族は、続いて言いました。
「そう怖がらないでください。私はすでに、カルカッサ様……いいえ、カルカッサという、我が主であるチェレス=ティーアと争おうとする大愚か者の軍門より、こちらへ降りましたゆえ。どうか、ご安心ください。」
「そ、そうです、か……」
しかし、ずいぶんあっさりと降ったな……何か裏があったり?いや、でも……この態度から見ると、裏があるようにも見えないし。一体、どういうことだろう。
「で?それで何用だ?アタイらはこれから化け物退治に行くけど。」
「化け物、退治?それはもしかして……!」
「ほう、何か知っているのな。話せ、勇者『様』。」
「はい、わかりました。」
気のせいだろうか、さっきの勇者様の様が……さっきよりも強い力を込められて言っているような気がする。
「チェレスさんたちが倒そうとする化け物は、もしかすると……姫様、プリスティン様かもしれません。」
「なに?それは本当か?」
「はい……私たちは、運よくばけも……姫様の手から逃れましたが、あれは間違いなく化け物でございます。だから……」
「それはいかんな、アタイとしたことが……あの子を殺そうとしているのか。」
「で、ですので!どうか、彼女を沈黙させる方法を、討伐よりも他の方法を選びませんか?」
「ふん。」
そして、不敵に笑うチェレスさん。
「ならば、アンタがやれ。」
「――!」
「待ってください!」
そして話を割り込むラルフ。
「ゆうしゃお兄さん一人で行かせるのですか?方法もまだわかりませんのに!?」
「こら、ラルフ!」
やはりこの子は……姫様の話になると急に熱くなる。そんなに仲が良かったのか、姫様と、ラルフは……なんだか、妬けてしまいそう。
「まさか。アンタも付いて行ってもらうよ、ラルフ。」
「そ、それだけでは、とてもではございませんが、さすがにボクたち二人だけでは……!」
「あぁ、ならば、ここに居る兵士も、ククさんもーー」
「ククレスと、お呼びください。」
「ククレスも、そして……」
椅子から立て、剣を空に掲げた。
「アタイも行くぞ!だから、心配するな。」
「――!」
それを聞いた私も、ラルフも、心が希望の光に満たされた。これ以上ない、心強い援軍を、支援を受け取れた。
「では、どうすればもとに戻れるか、知ってるか?」
「そ、それが、ですが……」
「なんだ、もやもやするな。はっきり言え。」
「……」
隣に居るラルフを見つめる。私には、わからない。言葉では、口ではいくらでも言える。でも実際にどうすればいいのかは、わからない。思い浮かぶのはせいぜいラルフの力に頼って、姫様の中にある邪なものを取り除くくらいしかない。
だが、それで大丈夫なのか?果たして、ラルフの力だけでどうにかなることなのか?
「……ボクに、任せてください。」
「ほう。」「……」
やはり、彼はそうする。
私がまだ悩んでいるのにもかかわらず、彼は答えを出した。
「具体的にどうするんだ、ラルフ。」
「ボクの力を、お姉さんに注入して、中から変えていけば……」
「それが実現できるって、どこに確信を得る。」
「そ、それが……」
しかし、やはり怯える、やはり口を閉ざす。彼も私と同じく、もしかして効果がないあるいはそもそもできないのを疑っている。
「ないのな?」
チェレスさんの眼差しが痛い。突き刺さるようで、心が痛む。
「ならば……」
怖い。もしかすると、討伐するしかないかも。でも、それでも私はあきらめたくない。姫様を救いたい……!ならば、他に方法があるか?ほかに方法は……!!
「確信は、アタイらが作ってやろう!」
「「ッ!!」」
「アンタの力を使って、中からプリスティンのやつを取り戻そう!」
剣を振り下ろして、続けて言った。
「一回だけではだめだったら、二回をしろ!」
剣を横に振りかざす、さらに言った。
「二回失敗しても、三回挑戦しろ!」
そして、最後にラルフを剣で指した。
「何回も失敗したら、さらに何回も挑戦しろ!」
ここまで言われて、涙が出そうになった。
「成功するまで、誰もがみんな失敗するとしか言えないから……」
ラルフの目から、涙ぽつり。
「成功するまで試せ!プリスティンのやつは、アタイらが止めるから!」
「チェレス、姉さん……!」
そして、やがては大声で泣き始めた。果たして、これ以上に心強い援軍……いいえ、味方は、居るのだろうか。
私は断言できる。絶対に……
「ありがとうございます!!」
存在しない。
(つづく)
皆の心は一致している。それはプリスティンを救うこと。
しかし、救う方法は......




