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姫様!魔王様!  作者: 煌黒星
アリア王位奪纂
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第三十八話=その者は、化け物である

 郊外からカルカッサ軍の叫び声が届いてきた。その声はまるで獣のようで、少しだけ怯えていた。

 そこで、私は思い知らされました。いくら強い力を手に入れても、私は私のままだ。この弱い心を何とかしなければ私は……永遠の弱者だ。

 唇をかみしめて、目から悔し涙が一粒。そしてそんな私を見て、ラルフが近ついてきた。

    「大丈夫ですか、ゆうしゃお兄さん。」

    「……」

 彼の目を見つめる。さっきの姫様で動揺は隠せていない。だが、それだけではない。彼の目から姫様を救いたいという強い意志を見える。

 彼は私と違う。彼は戦う気こそないものの、強い意志を持っている。強い力を持っていなくても、その意思で何とか持ちこたえている。その代わりに私は……なんとも情けないことだ。

 元々は私が守る側だというのに、どうして逆に私が……

    「大丈夫だ。」

 頭を横に振り、気をしっかり持った。

    「そう、ですか……お姉さん、どうしちゃったんだろう。」

    「姫様をああいう姿に変えたものは、一体……」

 もしかして、これもアマドリの仕業でしょうか。彼は私に力を与えることができていた。ならば姫様に与えてもおかしくない。しかし、どうして彼はこんなことを?理由がないのでは?であれば……?


    「なぁ、ラルフ。お前はアマドリのことを、知っているか?」

    「あ、あまどり、さん、ですか?」

 さっきま冷静でいたラルフだが、私がアマドリの名前を出した途端怯え始めた。

    「か、彼が、どうかしました、のですか?」

    「いや、知っているかどうかが知りたいだけ。それに……」

 神様は、私に彼を殺めるよう命じた。そして、王様も……その理由はわからないけれど、アマドリはエリハイアを滅茶苦茶にした張本人だって王様がおっしゃいました。けれど、神様は理由を教えてくれなかった。

 神様……ふっと思い出した。神様は姫様のことを……姫よりも、魔王のほうがふさわしいって……つまり、神様は知っていた?姫様がこうなってしまうのを。もしくは……

    「あーもう!頭がくしゃくしゃする!」

 自分で自分の頭をくしゃくしゃするとか、よく考えると本当にバカっぽい。そしてそんな私を見て、ラルフが答えてくれた。

    「い、いいえ。存じて、おりません……」

    「私の目を見て答えて。」

 彼はわざと目を逸らした。そして、ひどく怯えている。

    「ぞ、存じて、おりません、です……」

 顔を強引に自分に向けても、彼は目を逸らす。彼は私の目を見て答えることができない。つまり……

    「何か、知っているの?」

    「い、いいえ!そんなわけないじゃないですか!その名前をしている魔王なんて、存じておりません。」

 いやいや、やっぱり知っているじゃないか。魔王だなんて一言も言ってないじゃないですか。

 しかし、知っているけどできれば口にしたくない、ということでしょうか。ならば聞かないでおこう、これ以上は。

    「そうか、知らないのか……じゃあ仕方ないね。」

    「う、うん!知らない、彼のことなんて、これぽっちも知りません。」

 しかし、目が泳いでいる、ひどく怯えている。彼は昔に、アマドリに何かされたに違いない……どんなことなのかはわからないが、これ以上詮索はしないでおきましょう。

 だけど、こう見ると、アマドリってやつは本当にクズに見える。エリハイアを滅茶苦茶にしたし、ラルフの過去でも悪さをしている。一体彼は何の目的があるのだろうか。


    「うああああああああ!!!」

 遠いところから獣の叫び声が聞こえる。さっきのカルカッサ軍の叫び声と違って、今度は本当の獣。いや、もしかして……

    「まさか、姫様か?」

    「え、お姉さん!?ど、どこにいるのですか!?」

 獣の叫びで少し怯えたけど、姫様を聞くとはっと我に返った。

    「いや、さっきの叫び声。まさかと思うけど……もしかして、姫様かもしれないと。」

    「ええ?そんなわけありませんでしょ?お姉さんは……」

    「さっき見た姫様の姿を思い出しても、それが言えるか?」

    「……」

 そして黙り込む。やはり、その可能性はあるということを、否定することはできないみたいだな。でも、本当なら、出来れば私も否定したい。

    「で、でもどうすればいいのですか?もし今、お姉さんと出くわしたら……」

    「今度こそ、命はないかもしれないな。」

    「で、でしたら……どうしたらいいのでしょうか……」

 しばらく考える。二人だけではどうしても倒されてしまう。でもカルカッサ軍と戦わせても無理。万が一姫様が殺されてしまったら……ならば、チェレス軍に頼めばどうでしょう。しかし、今頃チェレスさんがどこにいるかが……

    「チェレス姉さんに、事情を説明すれば助けてくれるかもしれない……よね?」

    「だが、肝心なチェレスさんたちの居場所がわからないのよ。」

    「探知(ティテクション)を使えばわかるのでは?」

    「それが、だな……」

 私の力だと範囲が狭いーーと言おうとしたら、思い出した。今の私の力は解放されていて、もしかすると?

    「……いや、なんでもない。使ってみるか。」

 両手を重ねて、力を集中させた。そして、一気に放出した。

    「郊外に居るみたいだ。」

    「な、ならば急いでいきましょう!場所が変わらないうちに……!」

    「でも、周りには魔族がたくさんいる。それも元々のチェレス軍に属している存在ではなく……もしかしたら……」

    「――!兄上の兵士に、捕まってしまったのですか!?」

    「いや、それはわからない。どうする?行ってみる?それとも……」

 しばらくの沈黙。考えに考えた結果が、ようやく出た。

    「チェレス姉さんを、助けに行きたいです。」

    「ならば、私についてきて。行きましょうか。」

 いい選択だ。今の私たちがもし、姫様の元へ向かったら間違いなく二人とも死んでいた。だから、今はチェレスさんのところへ行くべきだ。捕まっているのなら、救い出すべきだ。でも……変だ。周りの魔族たちはあえてチェレスさんから距離を取っている。そして隣には一つ、非常に強い力を持っている魔族がいる……どういうことだ?

 それと、さっきの範囲内では、師匠の力を探知できなかった。師匠は、ここへ来ていない?どういうこと?


………………

…………

……

 そして、私達の前で、おかしな現実が現れた。カルカッサ軍を使役するのは、チェレスさんだった。


(つづく)

 カルカッサ軍を使役するのは、チェレスでした。それはチェレスのおかげではなく、ヴィスコンティのおかげでした。

 しかし、彼らはついさっき、化け物の「討伐」を決めて、いざ進軍することになっていた。その化け物は周りあるものすべてに危害を加えていて、最悪の場合......

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