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姫様!魔王様!  作者: 煌黒星
アリア王位奪纂
38/68

第三十四話=始まりの叛逆

 戦場にて、魔将軍のヴィスコンティが信じられない場面に当たってしまった。

「貴女は誰ですか?我らの邪魔をするのは魔王『カルカッサ=ハーモス』様が、許しませんよ。」

「へっ、知ったことか。」

 シーンと、剣を抜き出し、ヴィスコンティに指した。

「アタイも、元とはいえハーモス家の者なんでねぇ……」

 (元ハーモス王家の者?)

 ヴィスコンティが思うのは、はるか昔に放逐されたハーモス王家の者なのでは?と。それも、一代二代ではなく、それよりも昔に放逐されてしまった者ではないかと。

「おいてめぇら!アタイらギャングの力を見せたれ!」

 大声で叫ぶチェレス。

「皆の者、かかれ!我らの恐ろしさを思い知らせろ!」

 それ同等な大きな声で叫ぶヴィスコンティ。しかし、彼の心の中でひとつの疑問が生じてしまった。

 目の前の女性は、なぜ自分らに反旗を翻す。彼女は知っているはず、自分の軍では勝てそうにもないことを。それでも彼女は立ち向かう、そして彼女の兵……ギャングたちも同じく。

 彼女は、何のために戦う?そして、元ハーモスとは一体……?


………………

…………

……

 目が、冴えきっている。走るスピードも、いつも以上に速い。

「ま、待ってくださいよ、ゆうしゃお兄さん!」

「早くしないとチュバルが大変でしょ!」

 永劫なる(エターナル)レベルのラルフにも簡単に追い抜かれずに居る。これは一体どういうこと?

 この力……私の体の中に秘めている(ストレングス)は、一体どのレベルに属している?

「見えた!」

 遠いところに、煙が見える。そして音も大きくなっている。間違いなく、敵はすぐそこに居る。

「――!」

 敵がこちらに反応をした。声に出して見えた!を叫ぶせいでしょう。

「何者だ、貴様ら!」

「私は……!」

 剣に手を取り、引き抜き。

「勇者だ!」

 カルカッサ軍に、一閃を見舞った。

 ……と、思っていた。

 (な、なんでだ!)

 握りに手を強く握りしめている。引き抜こうとしてはいるものの、なぜか力が入らない。引き抜くことに、抵抗をしている……?

「な、何の真似だ、貴様!」

 異変に気付き、急いで足を止めた。敵の前で、私は足を止めていた。これはどういうことか、私は知っている。

「ち、違うんです!ち、力が、入り、ません!」

 強く、強く抜こうとしているけれど、抜けれない。握りしめることは可能だが、剣を引き抜けない。

「あのさ……ここは子供の遊び場じゃないんだぞ。こっちは戦争ごっこでやっているわけじゃねぇんだぞ!」

 そして飛び出すのは、カルカッサ軍の怒りの罵声。

 彼もまた、剣を握っている。しかし、私は剣を抜け出せないでいる……このままだと、おそらく私は死んでしまう。ラルフのやつは……私の後ろで丸まっている。ひどい怯えているようだ。

「ラルフ、頼む!私にお前の力を分けてくれ!」

「ふ、ふえ!?ぼ、ボクの力、ですか?」

「あ?ラルフ?どこにいやがるってんだ、あぁ!?」

 カルカッサ軍の人は、さらに怒り出した。どうやらラルフの名前は彼を刺激してしまったようだ。

「頼む、早く!」

 手が、拒絶している。剣を抜くことを、それとも戦うことを?一体、どっち?

「わ、わかりました!」

 私から離れて、両手を重ねて私に向き、詠唱を始めた。

「あ、貴方は!元魔王の、ラルフ!?」

 ここで、兵士はラルフの姿を確認できた。そして、彼の目は真っ赤に染められた。怒りで血が眼を充満した。

「聖光の導きを!聖光の輝きを!永劫なる聖光(エターナルディバイン)!」

 兵士は棒立ちしている。目の前の現象に驚いているのでしょうか。

 ラルフの力が体の中を巡り巡って、私自身の力を中和した。どうやら、ここへ来る途中で立てた仮設が、当たったようだ。

 私は……勇者ではない。それどころか、この力は悪の類。だからこそ、(ライト)系統の力を借りて中和する必要があった。

「さぁ、戦おう。」

 手が、言うことを聞いてくれた。剣を、上手く抜けた。

「元魔王、そしてその連れ添い……アンタ、指名手配になっているぞ。」

「えぇ、知っております。だからこそ……」

 剣を彼に指し、続けて言う。

「反逆を、しないといけません。」

 カーン!と、兜を割る音がした。


………………

…………

……

「ねぇ、主様。こんなところで何をされているのですか。」

「え?あぁ、なんでもないよ。」

「うわー綺麗だね、そのお花!」

「あぁ、綺麗だろ?この子達にはそれぞれ花言葉があるよ。」

「ほうほう、具体的に?」

「この子は……忠節、そしてこの子は、清き。そして清廉、崇高……」

「ははは!おもしろーい!主様って、やっぱり博識ですね!」

「いや、そんなことはないぞ。」

「ふーん、まぁいっか。ところで、こんなところで、何をされているの?」

「なんでもないよ、ただ……」

「ただ?」

「この散ってしまった命たちに、謝りに来ただけだよ。」

「へぇーでも……許してくれるのかな。ほら、あの人かなり怒ってるよ。」

「あぁ、大丈夫だ。寧ろ、許してくれないほうがいい。」

「ほえ?」

「私のわがままのせいで、命を散ってしまった英霊たちよ。私を恨め、私を憎め。」

「主様……」

「私を、許さないでくれ。」


………………

…………

……

 (この力は、間違いなく神様の物だ。)

 草原にて、一人の少女が立っている。元々はプリスティンを探していたのだけれど、途中でここに懐かしい力を感じ、探ってきた。

 その力の残渣は、まぎれもなく光明魔王の力だった。ここで、アレは何かをやっていた。何をやっていたのかは、少女にはわからなかった。分かる術がなかった。

「……」

 遠い彼方を、彼女は見ている。見つめる視線の先にて、煙が立っている。チュバル侵攻作戦の印であると、彼女はわかっている。

「チェレスちゃん……」

 自分の胸に手を当てて、悔しがる涙がこぼれた。

 (お前は来るな。)

 その言葉に、彼女は酷く傷付いた。

 彼女の友たちである、チェレス=ティーアは、彼女の参戦に異を唱えた。彼女は、戦いたかった。

 己を助けたチェレスのために何かをしたい、しかし彼女は拒絶された。理由は言われなかった。しかし、勘の良い少女は知っている。

 自分がもし、参戦してしまったらいよいよ本当に、元に戻れなくなってしまう。

「アタシは……」

 ドーン!と、遠いところから爆発音がした。彼女は怯えた。そのせいで少し、泣き虫になりそうになった。

 彼女は呪われている。神に、呪われている。その身に付いている呪いのせいで、彼女は急に性格を変えられてしまう。


 ………………

 …………

……

あぁ、堪らない……

「はぁはぁ……」

 血の淵、亡骸の山。周りにあるものすべてが、恐怖をもたらしている。それなのに俺は、寧ろ喜んでいる。この悲惨な状況を、楽しんでいる。

「ああああ!!!」

 頭を狂ったように掻き毟る。血の匂いが俺を狂わせているのか?それとも、この状況から生じる恐怖が?あるいは……ただ単に、殺しに酔いしれているだけなのか?

「ひ、ひぃ!!ば、化け物!!」

 援軍らしい魔族が来た。しかし俺を見ると真っ先に飛び出すのはその暴言。俺は化け物じゃねぇ、俺は……人だ。人族だ。俺は化け物じゃねぇんだよ!

「おいアンタら。」

 目の前に怯える魔族たちが視線に入った。

 (俺を化け物呼ばわりとは何様だ!)

「俺をさっさと殺してくれ!」

 気のせいか、思ったことということが、逆のようだった。


………………

…………

……

 時間が経ち、兵力の差によって、チェレス軍は壊滅的だった。チェレス軍を率いるチェレスは、地面に膝をつけ、魔将軍ヴィスコンティに負けを食らった。

「貴女は……何のために反旗を翻すのですか。」

 敗戦の(チェレス)へ、ヴィスコンティは剣を突き指して質問を投げた。

「へっ、言うまでもねぇよ。」

 戦勝の(ヴィスコンティ)へ、チェレスは頭を上げて答えをした。

「国のためだ。」

「――!」

 彼は驚いた。国のために、反旗を翻したと彼女が発した言葉に。そして、彼女の正体にも。

「貴女は……チェレス、様……!」

 目の前の少女に驚愕しながら、彼女を支えた。

「あ?ひょっとして、ククさんか?」

「はい……私は、貴女様の……魔将軍である、ククレス=ヴィスコンティでございます……」

 彼女を強く抱きしめ、涙をこぼした。

 多少気難しそうだが、チェレスは軽くヴィスコンティの手に触れた。戦いに傷つけられて血が流れ、その同時に涙も流れ落ちてしまった。


(つづく)

ゆうしゃではなく、勇者。それとも勇者ではなくてゆうしゃ?

彼は戦う、誰のためか、何のためかを知らぬままに......

ククレス=ヴィスコンティもまた戦う。これからは、魔王(チェレス)のために戦う。

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