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姫様!魔王様!  作者: 煌黒星
アリア王位奪纂
31/68

第二十七話=それは、少年の思念

 暗闇の中で、少年が一人。頭を抱えて、眠ろうとしている。

 彼は先ほど、大事な、大事な家族が自分を元に、争っているところに直面した。彼は嘆き悲しんでいる。自分の無力さを恨み、家族への不信感に憎みを持つ。

「……」

 やがて、一つの存在は、彼に手を差し伸べた。

「……貴方は?」

 少年はその存在を見て、質問を投げ飛ばした。

「……」

 その存在……いや、影というべきだろうか。それは首を横に振り、少年に手を差し出した。

「イヤ……」

 しかし、少年は拒否した。出された手を受け入れることを拒否した。

「……」

 影は相変わらず何も発せないでいる。しかし相変わらず、手を差し出す。

「だからイヤだって!」

 少年は珍しく大声を出した。パン!と、影の手を叩いた。

「……」

 顔こそ見えないものの、影は少し、悲しんでいるように見えた。

「ほっといてよ!ボクのことなんか!」

「……!」

 影は驚いた。少年の心にこんな傷があることに。それとも、彼を受け入れない少年に?

「……」

 影は悲しんでいる。そして、静かに後に回った。

「え?どこへ、行くのですか。」

 影は歩き出した。暗闇の中へ戻ろうと、再び歩き出した。

「待って、そこは!」

 しかし、なぜか少年はその暗闇の中を知っているようだ。その中にはどんな苦難があるのか、どんな悲しみがあるのか、憎しみがあるのか……彼は知っている。誰よりも分かっている。

「待って!待ってったら!」

 少年はようやく立った。その影を追って走った。しかし、何故かが影には全然届きそうにない。そして、何故か影がより一層遠く感じた。

「そこへは、行かないで下さい!」

 そして少年は叫んだ。

「ラルフ!!!」

 その影の名前を、彼は叫んだ。


………………

…………

……

「イヤだ……イヤだ……!」

 しばらくすると、やっと少年が目を覚ました。彼を見守るのは二人の姉。

 一人は、王族の地位を放棄した元王族「チェレス=ティーア」。もう一人は、王族の地位を保ちながら、兵士に下った元王位継承者「レイチェル=ハーモス」。

 二人はさっきまで、殺しあっていたのに、どうして今は自分を見守っているの?と、ラルフは疑問を抱いた。

「目を、覚ましたな。」

「まったく、手間の掛かる弟だってこと。」

 現場にはもう殺気はなく、殺しあっていた二人はまるで嘘だったようだ。しかし、現場の乱雑さは物語っている。さっきまで二人は殺しあっていることを表している

「どうして……ですか。」

 ラルフは姉、レイチェルに問いかけた。

「何が?」

「どうして、チェレス姉さんの命を狙っているのですか。」

「……」

 少しだけの沈黙。そして、彼女は答えた。

「すべては、ハーモス王家のため。」

「違う!それが聞きたいのではありません!教えて、レイチェル姉!」

「……」

 自分が出した答えに不満を感じたラルフに、彼女はちょっとイラ立った。しかし、別の答えを出すのが自分の役目だと、彼女は思った。

「王である、カルカッサ様の命によるもの。ラルフには関係ない。」

「レイチェル姉……いつから兄上の話を聞くようになったの?」

「はっ1それはアタイが答えるか。」

「……」

 レイチェルを退かして、チェレスが前へ出た。

「全部、アタイたちの計画ってことだ。」

「けい……かく?」

「そっ!アタイらはね、アンタの中にある、あの子を呼び覚まそうとしている。」

「ボクの、中に……?」

 ふっと、彼は自分の体を見つめた。自分の中に、誰かが居る?それはありえない。ボクの体はボクの体だ。と、彼は思った。

 彼は覚えていない。さっきの「夢」のことを。

 そしてそれも覚えていない。昔、狂神(くるいがみ)である、「アマドリ=スー」に何をされたのかを。

「……しかし、残念だ。」

「あぁ、どうやら覚ましてくれなかったようだな。」

「ま、待って!その子を呼び覚まして、お姉ちゃん達は何をしたいのですか!」

「さっきも言ったが。」

 お互いに目を通し、そして同時に声を発した。

「「すべては、ハーモス王家のために。」」

 ラルフは驚いた。ハーモス王家のために姉達は殺しあっていた。

「ラルフ、アンタにも分かるんだろ。」

「な、何がですか?」

「カルカッサの野郎には、王になる素質はないってこと。」

「そ、そんなこと……!」

 しかし、そこで話を遮ったのは、レイチェルだった。

「そんなこと、ある。」

「え?」

 カルカッサに下ったレイチェルが言う。カルカッサには王になる素質はないことを。

 彼女は語り始めた。カルカッサに下っているときのことを。


………………

…………

……

「おい、ちょっと待ってよ、レイチェル。」

「いかがなさいましたか、カルカッサ様。」

「これ、何の意味?」

 そこに書かれているのは、アホ、でした。

「……お前は大変賢いだって意味だ。」

「そうか、ははっ!なら安心した!」

「……」

 レイチェルは呆れた目で彼を見つめている。

「な、なんですか、その目は。」

「カルカッサ様、お言葉ですが、いい加減に勉強なさったほうがよろしいのではないでしょうか。」

「なぁに、俺にはお前が居る。それだけで十分だろ!はっはっは!」

 そして、レイチェルの目は、更に冷たくなった。

 (こんな奴だったか、カルカッサは。)と、彼女は思った。

 昔のカルカッサもそこまで賢くはないが、ここまでおろかではなかった。その故に、彼女は呆れている。

「では、ワタクシはこれにて。」

「あぁ、下がってよいぞ。」

 カルカッサ、器は小さいし、知力も低い。戦いになってもまともに剣を持てない、魔法もそこまで強くない。ハーモス王家の唯一のクズだった。

 彼の弟であるリクリームは、それはそれは、大変賢い人間でした。だからこそ、レイチェルはリクリームに国を渡したくなかった。

 この国には、もっと良い王が統べるべきだから。

 その王になるべきは、ラルフ。ラルフ=ハーモスだって、彼女は思った。

 偶然にも、彼女はその時に直撃した。ラルフが狂神と対峙(たいじ)している時を。

 あれは、皆が王位継承で争っている日の夜だった。いくら争っても結果は変わらないと悟った彼女は現場から離れた。そして、ラルフの後についた。

 狂神はラルフに力を使って、操ろうとしていた。が、ラルフはそれに屈しなかった。

「ボクの家族に手を出さないで!!」

 倒れたと思ったら、彼は突然立ち上がった。

 さっきまで怯えていて、声も発せないラルフとは違う。今目の前に居るラルフは、そのラルフではないと、彼女は悟った。

 狂神をも退く彼なら、かのアリアを任せるはずだと、確信を持った。

 だからこそ、カルカッサに仮の王になってもらい、リクリームの王位簒奪を阻止する。そして、その間にラルフを「呼び覚ます」。

 それが、彼女達の計画だと、レイチェルは暴露した。


(つづく)

 皆様、ご無沙汰しております。

 さて、本日も黒き星の導くままに。久しぶりの更新だけれど、いかがだったのでしょうか。私としては、最高の出来とは行かないけれど、まぁ、大丈夫でしょうという感じでした。

 最近はいろいろあって、なかなか時間が作れないで居たけど、まだ続きそうだ。

 では、皆様もどうか、お体に気を使いながら、自粛していただきますように!

 以上です、煌黒星でした!

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