第二十七話=それは、少年の思念
暗闇の中で、少年が一人。頭を抱えて、眠ろうとしている。
彼は先ほど、大事な、大事な家族が自分を元に、争っているところに直面した。彼は嘆き悲しんでいる。自分の無力さを恨み、家族への不信感に憎みを持つ。
「……」
やがて、一つの存在は、彼に手を差し伸べた。
「……貴方は?」
少年はその存在を見て、質問を投げ飛ばした。
「……」
その存在……いや、影というべきだろうか。それは首を横に振り、少年に手を差し出した。
「イヤ……」
しかし、少年は拒否した。出された手を受け入れることを拒否した。
「……」
影は相変わらず何も発せないでいる。しかし相変わらず、手を差し出す。
「だからイヤだって!」
少年は珍しく大声を出した。パン!と、影の手を叩いた。
「……」
顔こそ見えないものの、影は少し、悲しんでいるように見えた。
「ほっといてよ!ボクのことなんか!」
「……!」
影は驚いた。少年の心にこんな傷があることに。それとも、彼を受け入れない少年に?
「……」
影は悲しんでいる。そして、静かに後に回った。
「え?どこへ、行くのですか。」
影は歩き出した。暗闇の中へ戻ろうと、再び歩き出した。
「待って、そこは!」
しかし、なぜか少年はその暗闇の中を知っているようだ。その中にはどんな苦難があるのか、どんな悲しみがあるのか、憎しみがあるのか……彼は知っている。誰よりも分かっている。
「待って!待ってったら!」
少年はようやく立った。その影を追って走った。しかし、何故かが影には全然届きそうにない。そして、何故か影がより一層遠く感じた。
「そこへは、行かないで下さい!」
そして少年は叫んだ。
「ラルフ!!!」
その影の名前を、彼は叫んだ。
………………
…………
……
「イヤだ……イヤだ……!」
しばらくすると、やっと少年が目を覚ました。彼を見守るのは二人の姉。
一人は、王族の地位を放棄した元王族「チェレス=ティーア」。もう一人は、王族の地位を保ちながら、兵士に下った元王位継承者「レイチェル=ハーモス」。
二人はさっきまで、殺しあっていたのに、どうして今は自分を見守っているの?と、ラルフは疑問を抱いた。
「目を、覚ましたな。」
「まったく、手間の掛かる弟だってこと。」
現場にはもう殺気はなく、殺しあっていた二人はまるで嘘だったようだ。しかし、現場の乱雑さは物語っている。さっきまで二人は殺しあっていることを表している
「どうして……ですか。」
ラルフは姉、レイチェルに問いかけた。
「何が?」
「どうして、チェレス姉さんの命を狙っているのですか。」
「……」
少しだけの沈黙。そして、彼女は答えた。
「すべては、ハーモス王家のため。」
「違う!それが聞きたいのではありません!教えて、レイチェル姉!」
「……」
自分が出した答えに不満を感じたラルフに、彼女はちょっとイラ立った。しかし、別の答えを出すのが自分の役目だと、彼女は思った。
「王である、カルカッサ様の命によるもの。ラルフには関係ない。」
「レイチェル姉……いつから兄上の話を聞くようになったの?」
「はっ1それはアタイが答えるか。」
「……」
レイチェルを退かして、チェレスが前へ出た。
「全部、アタイたちの計画ってことだ。」
「けい……かく?」
「そっ!アタイらはね、アンタの中にある、あの子を呼び覚まそうとしている。」
「ボクの、中に……?」
ふっと、彼は自分の体を見つめた。自分の中に、誰かが居る?それはありえない。ボクの体はボクの体だ。と、彼は思った。
彼は覚えていない。さっきの「夢」のことを。
そしてそれも覚えていない。昔、狂神である、「アマドリ=スー」に何をされたのかを。
「……しかし、残念だ。」
「あぁ、どうやら覚ましてくれなかったようだな。」
「ま、待って!その子を呼び覚まして、お姉ちゃん達は何をしたいのですか!」
「さっきも言ったが。」
お互いに目を通し、そして同時に声を発した。
「「すべては、ハーモス王家のために。」」
ラルフは驚いた。ハーモス王家のために姉達は殺しあっていた。
「ラルフ、アンタにも分かるんだろ。」
「な、何がですか?」
「カルカッサの野郎には、王になる素質はないってこと。」
「そ、そんなこと……!」
しかし、そこで話を遮ったのは、レイチェルだった。
「そんなこと、ある。」
「え?」
カルカッサに下ったレイチェルが言う。カルカッサには王になる素質はないことを。
彼女は語り始めた。カルカッサに下っているときのことを。
………………
…………
……
「おい、ちょっと待ってよ、レイチェル。」
「いかがなさいましたか、カルカッサ様。」
「これ、何の意味?」
そこに書かれているのは、アホ、でした。
「……お前は大変賢いだって意味だ。」
「そうか、ははっ!なら安心した!」
「……」
レイチェルは呆れた目で彼を見つめている。
「な、なんですか、その目は。」
「カルカッサ様、お言葉ですが、いい加減に勉強なさったほうがよろしいのではないでしょうか。」
「なぁに、俺にはお前が居る。それだけで十分だろ!はっはっは!」
そして、レイチェルの目は、更に冷たくなった。
(こんな奴だったか、カルカッサは。)と、彼女は思った。
昔のカルカッサもそこまで賢くはないが、ここまでおろかではなかった。その故に、彼女は呆れている。
「では、ワタクシはこれにて。」
「あぁ、下がってよいぞ。」
カルカッサ、器は小さいし、知力も低い。戦いになってもまともに剣を持てない、魔法もそこまで強くない。ハーモス王家の唯一のクズだった。
彼の弟であるリクリームは、それはそれは、大変賢い人間でした。だからこそ、レイチェルはリクリームに国を渡したくなかった。
この国には、もっと良い王が統べるべきだから。
その王になるべきは、ラルフ。ラルフ=ハーモスだって、彼女は思った。
偶然にも、彼女はその時に直撃した。ラルフが狂神と対峙している時を。
あれは、皆が王位継承で争っている日の夜だった。いくら争っても結果は変わらないと悟った彼女は現場から離れた。そして、ラルフの後についた。
狂神はラルフに力を使って、操ろうとしていた。が、ラルフはそれに屈しなかった。
「ボクの家族に手を出さないで!!」
倒れたと思ったら、彼は突然立ち上がった。
さっきまで怯えていて、声も発せないラルフとは違う。今目の前に居るラルフは、そのラルフではないと、彼女は悟った。
狂神をも退く彼なら、かのアリアを任せるはずだと、確信を持った。
だからこそ、カルカッサに仮の王になってもらい、リクリームの王位簒奪を阻止する。そして、その間にラルフを「呼び覚ます」。
それが、彼女達の計画だと、レイチェルは暴露した。
(つづく)
皆様、ご無沙汰しております。
さて、本日も黒き星の導くままに。久しぶりの更新だけれど、いかがだったのでしょうか。私としては、最高の出来とは行かないけれど、まぁ、大丈夫でしょうという感じでした。
最近はいろいろあって、なかなか時間が作れないで居たけど、まだ続きそうだ。
では、皆様もどうか、お体に気を使いながら、自粛していただきますように!
以上です、煌黒星でした!




