第二十四話=朽ちた玉座
若き魔王はまだ夢を見る。その夢は長くて彼にこれが現実だと思わせてしまった。彼はこの幻のような何かを、いつしか本当の現実だと思うようになった。
(これは果たして本当の事なのか。それとも本当にただの『夢』?)と、夢を見る彼は、困惑した。
しかし、残酷ながらも彼の「夢」は止まらずに、動き続いた。
「私の名前は、アマドリ=スーだ。覚えて置いてくださいね、ラルフ様。」
そのとき、ラルフの頭の中を一つの電流が流れた。
(この男は、危険だ!)
その瞬間、本能が彼にそう伝えた。しかし、心が優しいラルフは逃げ出すことなんて出来なかった。それだけでなく、彼の話に耳を傾けてくれるものを、彼は求めた。
それは将軍であるグランバールにも伝えられないこと、それは家族にも決して伝えられないこと。
「アマドリ、さん……どうしてここに居るの?」
「うん?そりゃあ……」
男はそっと耳打ちをした。
「次なる魔王の誕生を、この目で確かめるためですよ。」
その言葉を聴いたラルフは、さらに怖がった。彼は次の魔王の王位継承を見たがっている。そして、その次なる魔王とは、自分のことを思い出した。
「……」
「どうしたのですか、ラルフ様?」
「ボク、どうしたらいいのかがわかりません。」
「そりゃあ、何のことですか?何をどうしたいのですか?」
そう、男は知らない。次の魔王は目の前に居る男の子、ラルフであることを。そうラルフは思った。
「家族は……ボッ」
ふっと止まった。彼は思ったのです、このまま自分が次期魔王だと告白してもいいか、と。
「ボッ?」
「ボクの兄と姉たちは、王位継承者に不満を持っているみたいで、ボク、怖いよ……」
「へー怖い?何でだ?」
王位継承のことを、彼は打ち明けなかった。
「さっきね、姉が、王位継承について父上に……父上を、殺そうとしたの。」
「……」
それを聞いたアマドリは、静かに目を閉じた。彼はなにを思ったのかは、誰も知らないし、誰も知る術がない。
だけど、心優しいラルフは、こう思った。「家族の間に起きる紛争を、彼は考えたくも、見たくもないのでしょうか。」
ラルフは引き続き言う、さっき起きたことを、少しだけ隠してアマドリに打ち明けた。
「で、ラルフ様は?どうですか?誰が継承するのかは私とは関係ないけど、ラルフ様も王位継承者の一人でしょ?」
「うん。そう、だけど……」
俯くラルフ、そして言い続けた。
「ボク、王位なんてどうでもいいと思っています。王位継承のせいで家族の間に淵が出来たら、それこそ最大の災厄になります。」
「ほう。」
アマドリは静かに腕を組み、ラルフを見る。その目は、不信や不満、不快など一切なく。
「もしボクのせいで、家族がばらばらになってしまったら……そう思うだけでぞっとします。きっと、王位継承者のあの子も、そう思うでしょう。」
「そうだね、私も同じ意見だ。」
優しく、アマドリはラルフの頭に手を乗せた。
「だからさ、もっと……」
「もっと?」
くしゃくしゃに、アマドリはラルフの頭を撫でた。
「もっと、バラバラにしちゃいなよ。」
「――!!」
その瞬間、ラルフは恐怖に支配された。目の前に居る存在の言うことに恐怖を感じたのか?いいえ、決してそうではない。
彼が恐怖するのは、その存在自体だ。
「私はね、これでも『絶対なる力』の所有者なんでね、ことが上手くいかないと困るんだよ。」
「なっ、何を……??」
ラルフの目は泳いでいる。恐怖のあまりに、泣きそうになった。目の前に居るのは、さっきとまったく姿の変わらない者。けれど、何故だか急に恐ろしく感じた。ラルフは自然に後ずさったが、後ろにあるのは……
ドン!
壁だ。そこには壁なんてなかったはずなのに、急に出来てしまった。
「貴方は優しい、だからこそ……」
額をぶつけ合い、アマドリは言い続けた。
「貴方が魔王にならないと、困るんですよ。」
「ど、どうして、ですか?」
どうして知っているの?そして、どうして困るの?の二つの問題を同時に抱える彼だが、上手く言い出せなかった。
「そもそも貴方に王位を継がせろと、ダーリクに命じたのは私だからね。」
「――!!」
それを聞いたラルフは、さらに混乱をした。目の前に居るものが父に命令をした?彼は一体なにものなの?
「ど、どっ……?」
恐怖のあまりに、ラルフは声を上手く発することも出来なくなった。
「おやおや?何を言いたいのですか、ラルフ様……次期アリア王よ。」
「あっ、あああ……!」
目にあふれ出すのは、涙。
額を伝わって流れてくるのは、汗。心が壊れかけそうになっているラルフに、アマドリはさらに追い討ちをした。
「是非、貴方の手で……アリアという国を終わらせましょうよ。この世界に、もっと大きな混乱を、招きましょうよ。ね?ラルフ?」
「あ、あ、ああ。」
口を大きく開き、けれど声を発するも声にならない音だけでした。
「くっくっく……」
壊れかけているラルフをしばらく堪能したアマドリは、やっとラルフを離した。
「くぎゃぎゃぎゃ!!楽しいなぁ、楽しいなあああ!!」
真っ赤な月が空に掲げ、その下に、アマドリは狂い笑い。それを目撃したラルフは、逃げたくても足に力が入らず、強制的にそれを見せられている。突然出てきた壁はなくなり、彼はぐったりと倒れると、彼は夢から覚めた。
………………
…………
……
「はぁ……はぁ……」
パシャン!と、彼は布団を退かした。その目の中にはまだ恐怖が残っている。
「どうした、ラルフ。」
それを感じて、起きたのはプリスティンでした。
「お、お姉さん……ごめんなさい、うるさかったのですね。」
「んなことより、どうしたんだよおい。えらく怯えているんだが。」
「……なんでも、ありません。」
「チッ!」
舌打ちしたプリスティンは、視線を逸らすラルフの頬に手を当て、強引に自分の顔を見せた。
「んなこと告なら、もっとマシな顔にしてから出直せ。」
「……」
「何があったんだよ、はっきり言え。」
「やはり、見透かされたのですね。」
「たりめぇだろうが。」
「実は、ですね……」
ついにラルフは語った、さっきの夢のことを、そして……それは現実に起きていたことを。
「……そうか。」
怯えるラルフを、プリスティンは優しく抱きしめた。普段の言動から見るに、プリスティンは男勝りで、お世辞にも決して優しいとはいえない。だけど、そんな彼女に抱かれて、ラルフは心の底から安らぎを感じた。
翌日、ゆうしゃ一向が取った宿の周りに、ギャングにより包囲された。
彼らが出ようとしたら、いきなり囲まれて、怯えた。そして、一人の女性が前へ出た。彼女は、ラルフに会うことを要求してきた。すこしもじもじしたあと、ラルフはやっと前へ出た。
「よお、久しいじゃん、ラルフ。アタイの弟よ。」
「ちぇ、チェレス姉さん!?」
(つづく)
ご覧になっている皆様、本日も黒き星の導くままに。
さて、こんな遅く更新したのは初めてでしょう。ツイッターを見ていない方々には何があったのかは分からないと思います。
ここ三日、金曜日から旅行に連れて行かれた。父、母、私の三人だけの旅行です。校正はおろか、書くのも出来ませんでした。ノートパソコンは使わない派なので。
大変お待たせしてしまって、申し訳ございませんでした。では、また来週~来週の更新が終わったら、次は恐らく一ヵ月後になるかと思います。学校がそろそろ始まるので。
ではでは~煌黒星でした!




