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姫様!魔王様!  作者: 煌黒星
アリア王位奪纂
19/68

第十五話=到着、カリスクール街へ

アリア帝国―公暦18年3月20日


 ここへ来る途中に、車夫から馬車を奪って、そして盗賊に襲われて、いろいろあったが、やっとこの街に着いた。ラルフの話によるとここはカリスクールという街らしい。

 あんなことが起きたんだ、二人の仲が悪化してもおかしくない。

「あっ、あれは!」

「こら、うろうろするな、ラルフ!」

 の、はずだったが。なぜか二人の絆が深まったようだ。

 さすがに夜中だし、街にはほとんど人が出歩いていない。街中に歩いているのは、私たち以外変な人しかいない。さっき、ラルフが興味を示したのは、割と珍しかったような商品を展示している店。なんともドラゴンズヘッドらしいもの。

 まぁ、今私たちがやるべきことは、そうではない。

「ラルフ、このあたりに良さそうな宿ってねぇの?」

「うーん、ボクにはなんとも……」

「王宮住まいだったからね、それはしょうがない。」

「チッ、やはりお前は使えないな。」

「うぅ……ごめんなさい、お姉さん……」

 そんなのを見て、私は心の中で小さなため息をついた。

 (どうして、私にはあいつのように、姫様に親しく接せないのだろうか。)

 姫様は私には、今まで通りに高圧的で、変わりにラルフには親切になった。一体、なにがダメだったんだろう……

「あっ、この宿ならどうですか?」

「ケッ、ボロボロじゃねぇか、こんな宿っていえねぇんだろ。」

「で、でも……」

 よく考えたら、こういうところのほうが好都合なのでは?ラルフは今、指名手配になっているし。相手もさすがに魔王がこのようなボロボロな宿に住むと思わないだろう。

「こちらにしていただけませんか、姫様。」

「アンタに意見聞いてねぇんだが。クリアはどう?」

「うん、ここでも大丈夫だよ。」

 少し眠たそうに師匠は答えた。そして、やはり私には高圧的である姫様。ちょっと悲しくなってきました。

「二対一か、しゃーねぇ、ここにするか。」

「えっ」

「やった!やっと眠れる!」

「良かったね、ラルフ君。」

「はぁ、まぁいっか。」

 不満を抱えているけれど、従うしかない。


 中へ入って、外見と同じくボロボロで、明らかに安っぽい雰囲気を出している。

「……」

 宿の主人は、カウンターの内に座って、新聞を読んでいる。こちらには気づいてないのだろうか。扉を開く時に音が響いたと思うけど。

「すみません……」

「あぁ?なんだてめぇら。」

「は?」

 新聞をちょっとずらし、こちらに気づいた様子。だが、態度がすごく悪い。客人に対する態度ではない。

「部屋は空いておりますか、おじさん?」

 機嫌悪くされた姫様を抑えて、ラルフが前へ行った。

「部屋なら空いているが、二人部屋の二室しかねぇぞ。どうする?」

「そ、そうですか……ちょっと相談させてください。」

 カウンターから戻ってきて、話を伝えに来た。

「どうします、お姉さん、クリアさん、ゆうしゃお兄さん。」

「仕方ねぇ、借りるか。」

「で、では、部屋の分配はどうしますか?」

「そうだな、簡単に……」

 男女で分けようと、師匠は言うつもりだったのではないのだろうか。

「おい、アンタ。」

「はい、どうしましたか、姫様。」

 それを姫様が妨げた。私を呼びつけて、姫様は言い続けた。

「俺は寛大なんで、アンタ一人で寝させてやるよ。」

「「「えっ」」」

 私、ラルフそして師匠が三人同時に声を発した。

「そ、それてつまり、私以外のお三方が一つの部屋に?」

「それ以外ありえねぇだろうが。」

「で、でも。プリスちゃんとだけ、一緒に眠りたかったなぁ……」

「お前と二人っきりになってしまったらどんなことされるか分かったもんじゃねぇ。監視役として一人くらい欲しい。」

「しょぼん……」

「で、でも何故、ラルフですか?」

「……」

 少しだけ姫様が口を閉じて、ラルフに目を配った。

「お前は知らなくていい。さてと、もう決まったことだ、決済してくる。」

「えっ、ちょ、姫様!」

 止めようとしたが、それも無駄に終わってしまった。

 その夜、私は一人で眠りにつけて、隣部屋から伝わってくる姫様達三人のはしゃぎ声を聞きながら。

………………

…………

……

 その日の夜、深夜のエリハイア王宮にて。

「おい、アイリス。どうだ、奴の動向は。」

「えぇ、大丈夫ですわ。姫様たちには気づいていないようですわ。」

「そうか、それは良かった。」

 夜、王宮魔道師アイリスの祈祷室の外で、ハイム王は一人で月を見上げる。

 (この世にもし、神が本当にあれば。)

 静かに、ただ静かに跪くだけ。

 (どうか、どうか……)

 姫たちを、お守りください……と、ハイム王は祈らなかった。

 (偽りの神を、殺してやってくださいませ。)

 静かに、月に祈りを捧げるハイム王であった。

 心なしか、ハイム王は声を聞こえたようだ。その声は彼の祈りに答えて「あぁ、必ず殺して参りましょう。」と。


(つづく)

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