第十四点五話=狂った神と孤児院
(時を同じく、その日の夜、アリアの王宮にて)
一つの存在が、椅子に座り、紅茶を啜った。
「うぉえ、やはりここの紅茶は不味いな。」
「あの子達に飼い慣らされてしまったせいなのでは?」
「ハハッ、そうかもしれんな。」
カランと、カップを置いて、その存在は立ち上がった。
「うーむ、やはり月は綺麗ですね。」
「は、はぁ……そうですか。ところで、本日はどういったご用件でこちらへいらっしゃったのでしょうか、スー様。」
「うん?まだ言ってなかったのか。」
視線を月から離れて、「アレ」は「彼」を見ている。
「ケンさんはただの監視役で、私はなぁ……」
静かに、カルカッサの隣に寄った。そして、言った。
「実はな……」
答を待つカルカッサは、静かに目を閉じた。
「アレ」がここにきた理由はすでに知っている。恐らくアレは自分がちゃんとしているかどうかを確認しにきたに違いない。
「特にないね。」
「えっ。」
予想と全然違った答が出たことを、驚いた。
「強いて言うなら、暇つぶしかな?」
驚くカルカッサを置いて、アレは再び椅子についた。
「わ、私の視察に来られたのではなかったのですか?」
「あぁ、そうだ。別にアンタらが何をやっても、何をやろうとも私はこれっぽちも気にしない。」
「ど、どういうことですか?」
「しつこいなぁ、君……」
少しだけの力を目に凝縮して、彼を強くにらみつけた。
「私は、貴様らのような下賎なもの共に興味を持つ訳ないだろうが。」
「ッ……!!」
その力で睨め付けられたカルカッサは、圧倒されて声も発せない。
「やめとけ、スー。」
「はいはーい、まったくケンさんは優しいな。」
「はぁ……それを言うのはやめろ。」
「わーたよ、まったく……じゃ、これからまだ用事があるんで。カル君は早めに寝ろよな。」
「……」
驚いて、未だに声を発せないで居る。
「ちっ、んだよこいつ、無視かよ。」
「お前な……」
やれやれと、ケンは首を横に振った。
「あっ、スー様だ!」
「スー様、スー様!」
スーとケンが辿りついた先は、とある孤児院だった。そして、アレとケンさんを迎えに来たのは、一組みの双子だった。
「おー!元気にしてたか、レア、リア?」
「うん、元気。」
物静かで、ぬいぐるみを抱えながら返事をしたのは、双子の妹のレアだった。
「元気だよ!スー様は?お元気ですか?」
「おうよ、元気だよ。」
元気一杯で返事をしたのは、双子の姉のリアだった。
二人の頭をわしゃわしゃして、アレは挨拶を返した。
「にへへ、スー様の手、大きいね。」
「うふ、スー様、好き……」
(ガハッー!これだから子供は好きでたまらねぇ!)
それを隠すことを上手くできずに、アレの顔にいっぱいの喜びが浮かび上がった。
「私も大好きよ、レア。」
「にゅふ……ふふふ……」
ぬいぐるみを抱えて、必死に笑顔を隠しているレアを見て、アレは更なる笑顔を見せた。
「はいはい、遊びはここで終わりね。良い子は寝る時間だぞ?」
「はーい……スー様明日も来る?」
「さぁな、どうだろう。」
「スー様……また、遊べるよね?」
「もちろんだ。」
少しだけ遊んで、アレは院長に会った。そこで、院長と大事な話をした。
「スー様……やはり、あの子達を……」
「あぁ、止めても無駄だと思え。大丈夫、うちは、この国と違うから、きっと彼女達を喜んで迎え入れてくれるだろう。」
「……貴方様は、一体何をお考えになっているのですか。」
「何のことだ?」
ボヤッとした。
アレは何を考えている?そんなの当たり前。すべては、自分のため、自分が楽しければなんでもいい、なんでもしてしまう。
「あの子達も、戦場に送り出すつもりですか?そうだったら……!」
「大丈夫だ。」
ナイフを片手に取った院長と違って、アレは冷静的だ。
「戦場に送り出すのは、ドールだけにしているから。」
「何を……!」
ナイフを構えて、アレに突き刺さろうとする院長は、それでも止められずにいる。
「戦場は……」
ナイフを前に、アレに向けて振るった。
ケンは止めない、アレも止めることをしようともしない。
「あ、貴方……!」
やがて、ナイフはアレの体に……突き刺さった。
「これで分かってくれるか?」
ナイフを通じて、アレは力を送る。
その力は、かつて世界の混乱を「破壊」した力。それと同時に、かつて世界の混迷を「創造」した力でもある。
その力で、アレは院長に分からせた。自分は悪いことをしようとしていない、と。
「……いいでしょう。」
ナイフを引き抜いて、鞘の中に入れた。そのナイフには、血は付いてなかった。そして突き刺されたはずの体も、傷など一つもなかった。
「手続きは省略させてもらうよ、院長さん。」
「好きにしろ。」
「では、私達はこれにて。」
「彼女達を連れ出す前に、一つ、約束をしてもらえませんか?」
「あぁ、いいよ?」
「世界を、護ってください。神様。」
「……任せてくれ。」
翌朝、孤児院から二人の子が国を去り、スカイランドへと連れて行かれた。
彼女達は、新たな名をいただき、正式的にアマドリ家へと加わった。
この双子を加えたアマドリ家は、これで「319人」になった。
永遠の命を手にした「アマドリ=アウレア」は、その手で新たな未来を書き開いた。
永久なる命を手に入れた「アマドリ=アウリア」は、その命で、たくさんの命を救おうと誓った。
(つづく)




