第十四話=それもまた、魔王の性
「くっ!」
なんだよ、この魔族共は!!尋常じゃない強さだ!
「おらおら、どうした!」
私たちで、ちゃんと対処できているのは姫様と師匠だけ。私とラルフ君はずっと押されている。そのせいか、姫様と師匠のところには私とラルフ君よりも多くの魔族が居る。私とラルフ君は一人しか相手していないと違って、姫様は4人、師匠は3人と戦っている。
「く、クソ!なんだよこの尼!つえぇ!」
「あぁ?誰が尼だって?あぁん!?」
「ひ、ひぃ!!」
怒鳴りながら、姫様は切りかかった。
「ちっ、すばしこい!」
「へへーんだ、アンタたちにやられるなら、アタシの名が廃るってものよ!」
「お、おい!こっちに来るな!相手はそこだ!」
師匠は相手を翻弄しながら戦っている。なのに、私とラルフ君は……
「どうしたどうした!女より弱いじゃねぇか!男の癖によぉ!」
「くっ!だ、誰が男は必ず女より強いって言ったんだ!」
「それが世の理だろうが!」
カン!と、相手の重い一撃を受け止めて、手が痺れそうになった。相手が持つ武器はただの剣じゃなく、なんか、変な感じがする剣だ。姫様たちも気づいたでしょう。
「な、なんなんですか、君達は!ボクはラルフだよ?魔王ですよ?」
「しったことか!ていうか、ラルフ様だから切りかかっているだろうが!」
「ひぃ!!いやだ、いやだああああ!」
ラルフ君は、盗賊の攻撃を避けまくっていて、反撃をせずに居る。民を傷つけたくないのだろうか。それとも、単に力がなく、反撃ができないだけなのか?
少ししたら、やっと初めての敗戦者が出てきた。
「ぐはっ!」
「ちっ、口ほどにもない。」
倒れた盗賊に向けて、姫様は更なる追撃を与えようとする……が、ラルフ君に止められてしまった。
「だめぇ!」
盗賊の追撃をかわして、ラルフ君は姫様に抱きついた。
「お、おい!離れろクソガキが!」
ラルフ君に抱きつかれて、身動きが出来なくなった姫様に対して、盗賊共は……
「へっ、まさかの仲間割れか!」
「っ!!」
重い一撃が、姫様に直撃してしまった。
バシャッ!と、背後から切られてしまった。その傷口から大量の血が噴出し、それを見たラルフ君はやっと自分がしたことに罪悪感を覚えたみたい。
「お、お姉さん!」
「くっ……!とっとと離れろ、クソガキが!」
「は、はい!!」
力を凝縮して、剣の先に集中させた。
「おらおらぁ!!」
剣を振りかざし、劫火が吹きあられている。盗賊たちはそれを見て驚きを隠せなかった。
「な、なんだなんだ!?死ぬ間際なのに、なんで!?」
「に、逃げろ!早く!」
「ひぃ!こ、こいつは恐ろしい!」
「あっ、あっちち!あっちいいい!」
中にはすでに炭へとなってしまったものも居た。なのに、私達は特になんともなかった。
姫様が発した劫火は、周囲を焼き荒らし、瞬く間に炎の海へと化してしまった。
「うっ!こ、これで、終わりか?」
そう言って、姫様はパタン!と倒れてしまった。姫様の倒れにより、やっと私たちが焼かれなかった理由を分かった。
「ご、ごめん……お姉さん……!!い、今すぐ治療をしますから!どうか、どうか!」
ラルフ君だ。
さっきまで、ラルフ君は私たちにバリアを張っていたみたい。本当に、ラルフ君のバリアは便利です……だけど、姫様に劫火を解き放す理由を与えたのは、紛れもなくラルフ君だ。
ラルフ君は、姫様に傷を負わせてしまった。だけど、私たちを護った。
心の中がぐちゃぐちゃだ!
「おい、ラルフ!」
やっと、私は彼に対して、君をやめた。
「今は話しかけないで!お姉さんの治療をしていますから!」
「おまえ、よくもそんな事を……!!」
ラルフに近づこうとしたら、師匠に止めてしまった。
「今は、プリスティンの治療が最優先です。違いますか?」
「……」
少しだけ考える。
ラルフのせいで姫様は負傷してしまった。それなのにラルフが姫様の治療をしている。納得がいかない。
「分かった、ごめん……」
納得がいかないけれど、今はそれが一番だろう。私と師匠にも治療の魔法は使えるけど、ラルフほどではない。だから、今は……
少しして、ラルフは手を止めた。姫様の治療が終わったみたい。周りにあった炎も、少しずつだけど消え始めている。
「こちらへ。」
ラルフに手招きされて、ちょっとだけ姫様と離れたところへと移動した。もちろん師匠も一緒。姫様はまだ意識が戻ってきてはいないが、大丈夫だろうか。
「お前、さっきはよくも姫様に……!」
「ごめんなさい!」
怒鳴り始めようとしたら、ラルフの奴が急に謝り始めた。
「ボ、ボク……お姉さんのことを気にせずに、敵さんが死んでしまうかもしれないと思って……本当に、ごめんなさい!」
「お前なぁ!謝ればすむ話じゃないのは分かっているんだろうな!」
「ごめんなさい!分かっています!だから、お姉さんが起きる前に……」
剣を抜いて、自分の喉に向けて……!こ、こいつは……!
「おいバカ!やめろ!」
少しだけ遠いところから、姫様の声が響いてきた。
「お、お姉さん!」
治療が終えたばかりなのに、姫様は起き上がった。自害しようとしたラルフに向けて怒鳴りを飛ばした。
「アンタさ、そう簡単に自害しようとしてんじゃねぇよ!」
「で、でも!ボクは……!」
傷は治ったけど、体に溜まった痛みは完全に引いたわけではないだろう。にも拘らず、姫様はこちらへ近づいてきた。それを見た師匠はすぐに前へ行って、姫様を支えた。
「気にするな、アンタの性格は知っている。それに、避けられなかった俺にも非がある。だから……」
それを聞いて、ラルフは目をうるうるさせた。
「お、お姉さん……!」
そして、跪いて泣き始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「いいってことよ。」
師匠に支えながら歩いてきた姫様は、そっとラルフを抱いた。
そのとき、姫様はラルフの耳元で何か囁いたけど、距離がありすぎて聞こえなかった。
(つづく)




