第十三話=それは過ぎ去りし、遠い日の約束?
村へ行く途中で姫様は馬車を強奪した。その馬車に乗せて貰った私と師匠も同罪でしょう。
だが、それはあくまでも正義の悪事であるため、良心にはあまり責められなかった。
一刻も早く、真実を知らなければ。
そして、一刻も早く、国民達に真実を知らせなければならない。
「しかし、温厚な馬だ。」
外で姫様が突然口を開いた。
「主は逃げたのに、ちっとも驚かなかったとは。そして今はこうやって俺らにいいようにされている……どういうことだろ。」
「うん……まぁ、アリアの馬は元から暢気な子が多いので。」
「にしちゃあ暢気しすぎねぇか?」
「そこもほら、ご愛嬌っていうことで。」
「ちっ。」
姫様とラルフ君はそうやってしばらく談笑を交わった。荷物車に居る師匠は特に眠って、スースー寝息を立てながら夢を見ている。
まぁ、どうせ姫様は咎めてこないだろうし、私も寝るか。
目を閉じてすぐ、私は眠りに陥った。早すぎる睡眠に、ちょっとだけ困惑した。
………………
…………
……
「ねぇ、勇者様。」
目の前には白い髪をした小さな女の子がいる。私のことを知っている?でも私は彼女のことなんてこれぽっちも知らないのに?
「違うんだろ、ほら、こっち見るんだぞ、勇者様。」
「あ、あぁ……」
隣に居る緑髪の小さな女の子に視線を変えた。なぜか私の意思によって交わされたのではなく、自分で動いたようだった。
「勇者~さーま?」
またまた視線を変えた。今度目の前に現れたのは茶色の髪の女の子。同じく身長は低い。
「勇者殿……」
さらに視線を変えられた。今度視線を変えたのは赤い髪の少女による行動だった。
「勇者……」
少し遠いところに、青い髪をしたちっちゃな女の子が私を呼んでいる。
「勇者様。」
その子の隣には、金髪の女の子が。
ここはなんだ、ロリ天国か?だが私はそういう趣味ではないよ?
少ししたら、彼女達六人はいっぺんに口を開いた。
「「「「「「今日こそ、嫁にする子を決めてもらうからな。」」」」」」
「ッ!」
急に背筋が冷え込んだ。彼女達の目は、獲物を定めた蛇の目のようだ。そしてその獲物は……言うまでもない、私だ。
すぐさまに逃げ始めた。それも私の意思によって動かされたわけではなく、体が本能的に逃げ始めた。
少しだけ走っていたら、目の前には一人の少女が現れ、周りの風景が急に消えて、真っ黒に染まってしまった。
「ゆうしゃ。」
「貴女は……?」
前にもこの子に会ったことあるような……そうだ、時々夢に現れるあの子だ。最初は神様って自分で言っていたが、王宮の戦いの途中の夢で会ったときから、急に自分は誰なのかも分からなくなったみたい。
「またですか。」
「また?」
彼女は不思議そうに首を傾けた。
「また貴女ですか。私に一体なんの御用?」
「そうですね……では、これだけ言わせていただきますね。時間もないので。」
時間?
「今まだ生きている子はアオしか居なくなったけど、ちゃんと責任を取ってね。」
「アオ?責任?何のことだ?」
「ふふ。まだ思い出せないんですか。」
「何のことだ、教えてくれ。」
ちょっとイラっとして、言葉遣いがちょっと荒っぽくなった。
「『教えてくれ』、ねぇ……良くもまぁアリスにそんな態度取れるもんだな。」
ゴスンッ!!と。後頭部が何かに強く打たれたみたい。
「こらこら、スー?そんなことしてはだめだって言ったんだろ?」
「ちっ。いくらこいつはゆうしゃだからと言っても、礼儀ってもんがあんだろ。」
スー?
後へと顔を向けると、そこには金髪の少年が居る。外見から判断すると、恐らく嗜血魔でしょうか。そしてさっき、私の後頭部を叩いた張本人でもあるんだろう。その手には鉄で出来た棒があるし。
……それより、アリス?この少女の名前はアリスってこと?
「あらあら、どうやら時間のようだね。」
「ちっ。」
その時間とやらは、どうやら私がここに居られる時間のようだ。段々と意識朦朧になってきた。
「次に会う時に、ちゃんと答え出してね。」
「なんの……ことだ……?」
ぱたんっ!と、地面に体がぶつかって、やっと常世へ戻ることになる。
「おい、おきろ!寝てんじゃねぇ!」
「な、なんですか、なんですか姫様!」
おきたばかりで頭はまだすっきりしていない。だがその状態でも、私は分かる。
今私が居るところは荷物車の中ではなく、草原だということ。
「そいつが賞金首だっけ?」
「へっ、まだ子供じゃねぇか。……いや、よく見たら、こいつって……!!」
「大丈夫!いくらこいつは元王『ラルフ=ハーモス』だからって、大逆罪にはならねぇ!」
周りは……こいつら、賊か?いや、それよりやばいものなの?
「寧ろ、こいつらを殺せと命令したのは……」
頭をゆさゆさ振るって、剣を引き抜いて姫様と師匠とで輪を作り、ラルフを護ろうとした。
「カルカッサ=ハーモスさま、魔王様だからな!」
「来る!!」
剣を構えて、賊の迎撃をし始めた。
(つづく)




