第十二話=指名手配!?
エリハイア王国―ハイム暦36年魔月空日―
(アリア帝国―公暦18年3月19日)
私達は、王都へ向かう前に、迂回をすることを決めた。何をしようとしても情報が足りなさ過ぎた。
議論をする時は、ラルフ君が今すぐにカルカッサに聞きに行きたいと言ったが、それは姫様と師匠に無慈悲に否定された。
「この状態で入ったらどうなるか知ってて言ったの?それ。」
「それは、死、だよ、ラルフ君。」
何も分からずに、さらに自分達に付いている人も居ないとなると、それはそれだけ危険が大きい。だから、先ずは王都で何があったのかを知ると、こちらの兵力を高めるべきだ。
それがため、私達は迂回して、とある村へと足を進んだ。
の、はずだったが。
「おるぁ!止まれやこのクソ野郎!」
正面から馬車を迎えようと、姫様は何かをひらめいたかのように飛び出した。その馬車を止めて、車夫を止めた。
「あぶねぇじゃねぇか!人族の嬢ちゃん!」
「知るか!」
剣を引き抜いて、車夫に指した。
「この馬車を寄越せ、これは命令だ。」
「お、お……?な、何の真似だ、嬢ちゃん。」
「これより、この馬車は我らが王、ラルフ=ハーモスが徴収した!」
「ひ、ひぃ!なんだなんだ!この訳の分からん嬢ちゃんは!」
と、そのセリフを置いて車夫は逃げていった。側でその奇行を見た私達はただ、呆然としていただけだった。
「お、お姉さん!それじゃあまるで強盗じゃないですか!しかも、ボクの名前を出さないでくださいよ!」
「心配するな。」
剣を納めて、姫様は鞍に乗って、完全に馬車をのっとった。
「まぁ、上がれ。説明してやるから。」
「だ、ダメだろ!?お姉さんは姫様なのだよ?そんなことしては……!!」
「大丈夫だっつってんだろうが、まったく。早く上がれ。」
「で、でも!」
ポンッと、師匠がラルフ君の肩を叩いた。
「諦めて。この子は人の話し聞かないから。」
「そ、それはそうだけど……」
なんかすごく失礼じゃないか、これ。でもまぁ、それは私も認めるしかないけどね。
「で、では……よいっしょっと。」
鞍に足を伸ばして、ラルフ君も馬に乗った。もう馬はないから、私と師匠は後ろにある荷物車に入るしかなかった。
その中で、私達はラルフ君と姫様の対話を聞いた。
進行方向を予定した村に向けて進み、姫様はラルフ君と話し始めた。
「まず、アンタの名前を使ったのは他ではない。彼が王として認めている者を確認するためだ。」
そこで姫様は説明した。
もしさっきの車夫さんは姫様に「は?ラルフ?」って返したら、答は明白だ。彼にとっての王はすでにラルフ君ではなくなっている。つまり、かなり前からカルカッサは根回しをしていたことになる……いや、なるのか?ならないだろう。
そして、馬車を奪った理由は……
「疲れた。」
の一ごとだけだった。おいおい嘘だろ、これじゃあまるで強盗じゃないですか!……と、師匠とラルフ君も一緒に突っ込んでくれた。
まぁ、姫様がラルフ君の名前を出して馬車をのっとったのはただ単にラルフ君に擦り付けようとしただけだろう。
だが、もしカルカッサはかなり前から王位簒奪をしようとしていたのなら、彼にとって今回のエリハイア騒動は絶好のチャンスだったんだろう。
それのお陰でアリア王城の配備は手薄になって、攻めやすくなった。それを気に攻め入れば、簡単に落とせるはずだ。
……と、なると。今回のアリア王位簒奪の背後には、アマドリも一枚噛んでいると思ってもおかしくないはずだ。
彼にとって、アリアの王が替わってしまうことは、一体何の意味があるのだろうか……考えたくないが、もしかしたらカルカッサはすでにアマドリに下ったから、彼が王になったらアマドリはアリアを意のままに操られることになる。
「うん?」
そう思いながら、手は荷物車の中にある紙に触れた。その紙を取って見て、全身の鳥肌が立ってしまった。
「お、おい。う、うそだろ!」
「なになに、どうしたのゆうしゃ君。」
思わず叫んで、師匠が寄ってきた。そこで、師匠も私と同じく大声を上げた。
「うるせぇぞ、何の騒ぎだ。」
そして姫様は荷物車に首を突っ込んできた。
「ううん、なんでもない、なんでもないよ、姫様。」
「うんうん!何もないよ、あはは、あははは。」
「ならいいが。」
そしてまた引っ込めた。
その紙は、まさかのラルフ君の指名手配の紙だった。そしてここで荷物車を見渡した。
この中にあるのは、全部、指名手配だった。
(つづく)




