第十一話=アリアへ
エリハイア王国―ハイム暦36年魔月空日―
(アリア帝国―公暦18年3月19日)
姫様、師匠とラルフ君三人で、アリアへ向かう途中。馬車は山賊に襲われて、壊されたため歩きでアリアへ行く羽目になった。幸い馬車だけ壊されて、車夫も、私たちも無事だ。車夫は国へ帰って、私たちだけでアリアへ行くことになった。
そんな私たちだが、ようやく国境にある関所に着いた。そこで、私達は……
「動くな!」
拘束された。
国境を渡って、アリアの領土へ入った瞬間。アリア兵に捕らわれた。向こうでエリハイア兵が叫んでいるが、領土へ入ることは出来ず、扉は固く閉められている。
「おい、お前ら。どういうつもりだ。」
「……」
姫様の問いに魔族の兵士は返答しなかった。しかし槍に首を突きつかれ、手をつかまれている状態だ。もし奴らに攻撃を仕掛けたら……
「え、ええ?ボクだよ?ラルフだよ!どうしたのですか、兵士の皆さん!」
魔王であるラルフ君に対しても、兵士達は返答しなかった。私と師匠にいたっては、驚きすぎていて声も発せない。
何故だ?何故私たちを拘束する?姫様とラルフ君が居るにも拘らず?
友好国?の姫様と自国の王を、どうして拘束する?
「おい!」
「ね、ねぇ!どうしたの、兵士さん!どうしてなの!?」
しかし相変わらず、兵士からの返答はない。沈黙を保っている。少し経過したら、一人の兵士が言い始めた。
「お、俺たちは、ただ……ただ……!!」
怯えていながらも、その兵士は喋り続く。
「ただカルカッサ様の命令で動いているだけで、お、俺たちは関係ない!」
「カルカッサ?誰だそれ。」
キョトンとした姫様と違って、ラルフ君は動揺し始めた。
「兄上が!?そんなことありえません!」
それを否定しようと、兵士達から割り込んで、一人の男性が現れた。
「ありえるんだよ、ラルフ。」
「兄上!」
どうやらその魔族はラルフ君が言った兄上らしい。カルカッサ=ハーモス、でしたはず。
「お前は罪を犯した。何かは、分かりますよね。」
「そ、そんな!ボクにはわかりません!」
「そう……」
失望したような顔をして、その男性は続いて言った。
「なら教えてやる。」
マントを広げて、彼は大声を上げてラルフ君の罪状を明白にした。
「お前は偉大なるアリアを裏切った!お前が犯した罪は……反乱罪だ!」
「――!!」
それを聞いてラルフ君は、しばらく声を出せなくなった。
「なんの話だ!こんな奴が反乱だと?馬鹿げてる!」
最初に反発をしたのは姫様だった。
「口を慎んでくれたまえ、エリハイアの姫よ。貴女に我が国の何かがわかるというのだ。」
「あぁそうさ、わかんねぇよ!だがそんな俺にでもわかるのは、こいつに反乱を起こす実力はねぇってこと!」
今にでも切りかかりそうな姫様を、兵士達が矛先を彼女に向けた。ラルフ君は変わらずに動揺していて、師匠と私は……まったく、なんて情けない人だ、私は!こんなときで怯えている?
「静まれ!ここはアリア領だぞ?ここで俺を逆らったら……分かるか?」
「分かるに決まってんだろうがああ!!!!」
しかし、姫様の怒りは静まらなかった。それどころか、姫様は力を使おうとしている。
「姫様!」
「お前は黙ってろ!」
彼女を抑えようと、冷静になってくれというつもりだったが、逆に姫様に止められた。
「ど、どうしますか、カルカッサ様!」
姫様の怒りが沸騰し、力が全身を巡り、体が赤くなっている。このまま放って置くのは危ないでしょう。と、そう思ったかのように、姫様は……
「くたばれ!永劫なる劫火!」
一気に力を放出した。
「えっ、ちょ!」
「ひ、プリスティンちゃん!」
「……!!」
ドカーンと、姫様から中心に爆発が起こった。姫様が起こさせた。爆発させまいと魔族の兵士が止めに入ったが、その槍は姫様から発する高熱で溶かされた。そしてその爆発に、私、師匠とラルフ君の三人が直撃を食らってしまった。兵士はカルカッサに転移魔法を掛けられて、一瞬で離れた。残念ながら私達はそこまで早く動けなかった。
直撃を食らったと思ったら、体に傷はほぼなく、ただ服がちょっと焼け焦げただけだった。どうやら誰かにバリアを張ってもらったようだ。まぁ、恐らくラルフ君でしょう。
「ちっ、逃げやがって。」
「げほっ!げほっ!姫様、次は早めにーー!」
「うっせぇな、いちいちうるせぇんだよアンタ。」
「ぷ、プリスティンちゃん、つ、次は、できれば一声を……」
「はいはい、クリアちゃんの頼みなら仕方ないか。」
なんだこの格差社会。
「と、まぁ。おいガキ、アンタはどうしたい?」
服に付いた塵を叩きながら、姫様はラルフ君に質問を投げた。彼にとって信じるべきものが、急に自分を裏切ったせいで心がひどく傷つけられたのでしょう……なんとも可哀相なこと。
「……ボクは。」
でも、彼は声を上げた。
「ボクは知りたいです。アリアで何が起きているのか。」
「ラルフ君……」
「うむ、さすが男の子だね!えらいえらい!」
「ふん。」
そんな彼を見て、姫様は鼻で笑った。
「なら、行こうか。」
でもそれは、彼を見下すように笑ったわけではなく、この現実を嘲笑うかのような笑いだった。
姫様は何を考えているのか、私には分からない。だけど、このときの姫様は、心底うれしく思っているのではないのだろうか。
再び前へ、再びアリアへ。私達は今、再び歩き始めた。それは、未知なる未来へ。
(つづく)




