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サイレント・キラー  作者: 喜楽 一膳


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柴犬ミサイル




 そして返信が来た。待ちに待った霊媒師からの連絡を熱心に読む姿は、さながら狂信者のようで


「あなたのブログを読みましたけれど、素晴らしい。メディアを恨んで打倒しようとする気持ちは大変伝わりました。私も協力させていただこうと思いますわよ。一緒に世界を変えていきましょう!」


自分を理解してくれる人間を見つけた時は、一気に雲の切れ間から太陽の姿が見えて、温かい光を浴びることができたような気分であった。けれど、メディアに不信や反感を持っているのはその通りなのだが、その反面にブログの読者数を増やしてより表示されるようにし、広告収入を稼ぎたいという思惑もある。本意気の思想と行動というよりも、働きたくないがために少し暴挙に出ている自分がそこにいて、どうにも足を引っ張っているのだ。

 一緒に活動をしてくれるようになったが、どうやって会えばよいのだろうか。人に会うということが、人よりもハードルが高い私にとって、容易に超えられる気がしない。相手がお年をめした女性であるから、同性だからというよりかなり年齢が上であったことの方が安心した。


「現在どこにお住まいなのでしょうか。」

「それよりも、二人だけのLINEグループを作りましょうか。そこでやりとりしましょう。」

「はい!私の登録名は―――。」


 そうやってやり取りをしていると、どたどたと騒ぐような音が聞こえてきた。辺りには中国人と日本人の家族がいたり、奥さんがオーストラリアの家族だったりがあって、それなりの音のコミュニケーションを取っている。自分も静かな方ではないと承知の上で、吐き気のように上がってきた熱を口から出すこともしばしばある。それをため息のように受け取られて母に


「またはぁって言ってる。ため息つきたいのはこっちよ。」


と言われるが、こうしたほうが気分が良いのだ。

 聞けば清宮さんは、最近生配信をしたと言う。そこまで情報を追えていなかった私は、さっそく”清宮の完全無敵チャンネル”を見てみる。ご親切に、画面の右上に現在の同時接続数が表示されており、白い背景に赤い数字で"52"と書かれてある。それが配信での最高同時接続数で、高評価と低評価は見られるよう設定されていなかった。これでも現代人の自覚があるからか、それらの数字を見て少し心に靄がかかるようになった。そして、少しの笑みと謎の勝利感が興奮を呼び起こす。

 それから30分ほど経って、清宮から連絡が来る。


「実は、愛媛県に在住しておりますのよ。」

「え!?本当ですか!私もです!」

「でしたら、どこかで会いましょうか。あなたのことを直接見たほうがよさそうですし。」

「はい!では、喫茶店ルルというところはどうでしょうか。」


知ってはいるが行ったことのない場所を、人に会うのだからこの際に経験しておくべきだろう。そうして互いの用事のために時間を調節して待ち合わせることにした。

 久しぶりに晴れやかな気持ちで外に出て、何かと感情的に衝動的に生きていた日々を消去してしまいたいほどだ。家の戸を閉めて、そのまま道の真ん中まで出たところで、なにかがこちらに猛スピードで迫ってくるのを察知した。それは、一匹と一人である。


「キャンキャンキャン。」

「あれ、タロちゃん?」


そこに私しかいないのだから、もちろん私めがけてミサイルは飛んできている。タロちゃんの顔を見ると、半ば強制的に受け止めざるを得ない。


「(ドンッ)うふ・・う・・。あんた、元気だね。」

「タロ!ちょっと待ちな!」


聞き覚えが微かにあって、息切れ状態なことはわかる。たぶん、突然飼い犬が外にでたものだから、よそ様に迷惑をかけまいと”そのまま”で飛び出してきたのだろう。多くの人には異質であったが、私にとっては突然の再会であった。


「佐藤さん・・・それ・・・。」

「あれ、この前の見つけてくれた方。すいません怪我ありませんか。」


ちょっと息を吸うために開いた口が、一向に閉まらない。タロちゃんの軽い頭突きに体全体が大きく振り子のように揺れている。


「こんな格好でごめんなさいねぇ。あれからうちの子まぁ元気で。」

「・・・香織です。」

「え?」

「清宮さん。私、山田香織です。」

「・・・あらそう。近かったのね。息切れした霊媒師は初めて見るかしら。」

「すいません、驚いて体が動かなくって。」

「いいのよ。一端タロを家に・・いや、このまま私の家に来ますか?」

「・・・はい、そうさせていただきます。」


手を取って体を起こすのを手伝ってもらい、やけに尻尾を振って愛嬌を振りまくタロを撫でる。落ち着かない午後の憂鬱であっても、触り心地の良い毛並みは変わらない。

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