提案
「メールありがとうございます。清宮さんの忠告と動画を拝見いたしました。自分でも驚いたのですが、高校時代の同級生と再会しました。少し話すことができました。清宮さんのおかげです、ありがとうございました。ご相談なのですが、もう少し詳しくお話を伺えたらと思うのです。いかがでしょうか。」
あれからショッピングモールへは行かず、飛んで帰ってきた。あのメールに早く返信がしたいし、すっかり霊媒師に対する疑問など消え去っていた。すぐ返事が来るわけもないので、この汗を流すためにシャワーを浴びようと着替えを準備していた。
すると、ブログのメール欄に赤い点が付いたのが見えた。それをまじまじと見たことが無かったので
「こうやって付くんだ。」
と感心してしまっていた。手に持った下着をベッドの上に置き、返信を確認する。
「ご返信ありがとう。そろそろ帰ってくる頃と思っておりましたよ。霊視の件については、ご心配なさらなくて結構!あなたはうまく悪い気を避けられた。あなたは大丈夫よ!話を伺いたいとのことだけれど、ごめんなさいね。見たいときに見たい未来が見えるわけではなくて、神様から未来を預かる時が来ないとお役に立てそうにないのよ。」
その言葉に疑問を抱く時間はすでに通り過ぎ、信心さえ浮かばせている。昔読んだ井筒俊彦の本に書いてあったことを思い出す。イスラム教における預言というものは啓示として授けられる。その啓示というのはある日突然受け取り、ムハンマドがその啓示を受け取った最後の預言者である。イスラム教においては、ムハンマドこそが最後の預言者であるわけだが、この清宮という妙齢の女性はその意味で預言者ではないはずだ。
しかし、頼りにしようとしている相手を否定して手放すことは、中々難しい決断であった。
「お返事ありがとうございます。急なお願いで申し訳ないのですが、世間を賑わせている死体遺棄事件について一緒に活動できないですか。メディアを倒したいのです。」
気がつくと窓から差し込む光は失われ、濃い紺のような世界が外にある。干されていた洗濯物が風で揺れることはなく、一層不気味な印象を与えている。うなじを虫が足を立てて行進している気がして、手で触れると熱でもあるかのように燃えていた。もしかすれば、ここが分かれ道なのかもしれない。
時間が経てど清宮から返信が届くことはなく、焦る気持ちと募る後悔のカクテルを少しずつ口に運んでいるのだった。




