再会
小さな一両の電車がやってくる。ガタンゴトンと特徴的ではっきりとしたオノマトペを奏でながら、ゆったりと余裕を持って到着する。三段の段差を登れば、平べったい皿の断面図のように頭から尾にかけて席が並んでいる。他の席よりも少し高く設置された一席からは、運転手がいつも見ているような景色を見ることができる。私が乗車するような時間では、子供や電車好きではなくおじいさんがいつも座っている。じっと目線を動かさずに、めくるめく住宅街の景色を眺めているのだ。その横顔を見たことはないが、きっと様々な時を重ねていることだろう。
3駅ほど過ごせば、アスファルトの壁二枚で作ったような簡易的な駅があり、そこで降車すれば目の前に目的地がある。ランドマークは変わらず偉大だが、内装と店舗はだいぶ変わってしまった。小さい時にはとてつもなく巨大で、夢が詰まった幻想のような所だと思えた。今でもその影をかすかに感じては、通り過ぎた過去の後ろ姿を撫でるしかないのだ。
「あれは。」
その脳裏に浮かんだのは、必ずしも幸せな物語ではない。だが、恐れるほどの過去でもなかった。顔も名前も癖も見知っているけれど、高校卒業ぶりに会うとなると距離を作りたくなってしまう。その彼女が見知らぬ男と一緒に歩いていて、数少ない思い出の中から探しても、どこにも存在しない顔。彼女の人となりや顔とうまく釣り合うような、まるで鏡を連れ添って歩いているかのようである。それを笑う者もいなければ、目に焼き付ける者もいない。しかしながら
「くっ・・・。」
言葉にするつもりはなかったが、唇を開いた拍子につい出てしまった。まずいと思った時にはすでに遅く、彼らの目がこちらに向いている。ちょうど日差しが私の顔に降り注いで、まぶしいと手で覆って振り返ったことで誤魔化せたはずだ。
目的地とは真逆の方向をすたすたと歩き、目的もなく通る必要もない道をまるであるように進む。そうして距離ができるにつれて、かれらのしゃべり声が小さくなっていく。ああ、彼らに悪意を向けてしまった。彼らもそれに応えるように、悪口を言っていてほしい。
「あれって・・。」
足を止めるわけにはいかなかった。それでも、続きが気になってしまう。
「あれだよ、ネットで話題になってた。」
「え?あぁ、あのクレープね。」
頭に大きな疑問符を浮かべて、しっかりと前を向いた時に理解できた。ちょうど目線の先にクレープの店が新しくできていて、列を成している。
それまで抱えていた何かを大量に捨てたような解放感によって、その場から動けずにいた。しかし彼らがこちらに来る可能性を考えて、大回りするようにしてショッピングモールに戻ろうと思った。私が思っているより、誰も私に興味が無いのだ。それは言葉よりも、現実の経験として味わった時の方がリアルに響く。
かくつもりのなかった汗を流し、風によって静けさを取り戻せた時に、ブログのメールを思い出した。
「(昔の同級生に会う。)」
そのことが波のように何度も頭を打って、忘れられない強い結びつきを得てしまったようだ。




