見城雄一郎
以下、見城雄一郎の手帳からの抜粋である
神隠しが存在する理由は1つ。自分が経験したから。湊君の行方を調べていると、(読めない)に繋がった。1100年代に人身御供が行われており、様々な年代から対象者が選ばれた。そこに関連性は見つけられなかった。その後、平清盛の命によって廃止された。
敷地内に入った瞬間に眩暈がして、気づいたら人気のない場所にいた。ゆっくりと時間が流れていて、雨が降っている。その雨が皮膚に当たると、蕁麻疹のように赤く腫れて、酸性雨なのかもしれない。雨宿りをしていると、鱗のような雲が細かく動き出して雨が止んだ。微かな光がある場所だけをスポットライトのように照らし、そこにいくと人が倒れていた。
背の低い草むらに、小さな体が横たわっている。行方不明だった湊君の写真と瓜二つだった。首元には縄の跡があり、見つかった安堵と助けられなかった後悔が募る。
世界が動き始めた気がして、ぞろぞろと来館者がやってくるのがわかった。事情を説明し、やってきた同僚たちに遺体を引き渡した。
「・・今日の運勢ランキング1位は、子年のあなた!小さなキッカケで憧れの人に会えるかも。」
子供の時には、テレビにかじりついて1位を願っていた。リビングに座り片膝を立ててコーンフレークを食べる。行儀の悪い食べ方であるが、人さまの前ではしっかりできる自信だけはあって、だから大丈夫と高をくくっている。
「お行儀悪い。」
「はい。」
食べ終わった皿を片付けて、ブログの投稿の続きを始めるのだが、記事の顔となる画像をどうしようか悩んでいる。
最近はやりのAIアシスタントに、撮影した写真を編集してもらおう。
「この画像をホラー要素をいっぱいに編集してください。」
40秒ほど経過して、いかにもAIによって編集された画像が生成された。それをアップロードして記事の最終確認もままならぬ状態で、投稿してしまった。
「(激震!愛媛県松山市が恐怖に陥るか連続怪奇事件の発生。地元メディアの報道姿勢を問う。)」
まるで有酸素運動終わりのすがすがしい気分で、この汗をシャワーで流したい。
その時、手の甲に生々しい感触と生物の冷たさを感じ、瞬きよりも早く手を振った。小さなハエトリグモが汚い床を這っていて、それを目で追うと長い髪の毛がちらほら散らかっているのを直視せざるをえず、息を吹いてクモを壁端に追いやった。改めて生成された画像を見ると、ブラクラをくらった時のように心臓がキュッとなる。その異常性には、クモに触れる現実を味わうまでは気づかなかった。撮影した遺跡の写真の真ん中に、煌びやかな衣装を着た顔のない女の姿があった。しかし読者であるならば、このようなあからさまな編集を見抜けるはずだろう。




