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サイレント・キラー  作者: 喜楽 一膳


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13/21

蛇ヶ池

(前回まで)

遺棄事件の様子をブログに書いた後、蛇ヶ池にて女性の遺体が発見されたというニュースを見る。


(登場人物)

山田香織

 世界で何が起きているのかを知るのに、常に目を開けている必要はない。臭い物に蓋をするようで悪いが、気にしていない振りをして数が上がるのを期待している。その心持ちと言えば、浅瀬に小舟を浮かべて風を感じる帆のように、帆として生まれて帆の存在を実感するゆったりとした時間の流れ。期待を乗せてどこかへ向かっていると、しだいに膨れ上がって重量を増した。そして沈むとも恐れた時に、目の蓋が開く。


「蛇・・・って危険じゃないのか。」


 約一年前ほどに豪雨を経験し、その後城山で土砂災害があったことを思い出す。テレビとインターネットに齧りついて離れられなかった時、地名に関する雑学のようなものを見た覚えがあった水害が多い場所は、先人がその記録を残すために地名にさんずいや水を付け加えた。その中でも”蛇”の付く地名は、大きな災害が引き起こる可能性があると。


「蛇ヶ池は、本物だったりするのかな。」


その場所で過去に災害があったような記録はなく、地元でもただ通り過ぎるだけの場所であるし、名前を知らない人も多いだろう。心霊スポットと聞けば、まるでツチノコを見たと聞いた時と同じ疑心に駆られ、そんな非科学的なものを信じて確かめに行くのは馬鹿馬鹿しいと思う。それが本当の霊であったとしても、私には何もできないし説教することもできない。


「行ってみるだけ行くか、暇だし。」


そう言って実行に移すのは、ほとんど無いのは知っている。しかし、時間が残されていないことは、確実に首を掴もうと迫る鬼のようであり、待つという概念を持ち合わせていないようだ。

 いつものように支度をし、シャワーを浴びている。不思議に感じるのは、ブログを連載し始めてからニキビが増えた。数字を求めて悪魔に魂を売った末路であろうか、それとも単純な寝不足と不摂生であろうか。


「今日は、やめるか。」


軽く持ち上がる洗顔を置いて、お湯だけで肌を洗う。顔の皮脂を洗い流しすぎると、逆に皮脂の量が増えると聞いたことがある。洗浄力の強くない泡を使うのが良いが、医師によってはお湯だけで良いとか。

 そのままブログのことも忘れて、蛇ヶ池まで自転車で出掛ける。もう4年ほど乗っていない中で、安全に踏み込めるか心配であった。しかし調子よく回るペダルを踏むごとに、昨日会った中高生共には負けないと燃えるのだった。


「運動不足も解消できた一石二鳥や。」


 お堀を横目に通り過ぎ、両足の膝から悲鳴が聞こえたぐらいに全寮制の男子校がある。その近くに蛇ヶ池があるのだが、予想される人だかりの多くは男子学生である。現時刻が昼過ぎなのを考えれば、まだ授業を終えていない間に探検することが必要である。その場合、私の足が使い物にならないほど早く漕がねばならない。


「急がば回れ、急がば回れ。」


都合よくものを考えても、理想的な結果が得られないことは多い。そうあるべきなのだが、今日の私はツキが周ってきたと言える。

 赤信号に引っかかることもなく、人通りをうまく回避して想定時間通りに到着する。昔よく行ったゲームセンターに自転車を止めて、軽く一礼してから去る。そのテンポの良さは、まるでゴキブリホイホイに誘い込まれたようで、このまま身動きが取れぬまま、巨大な何かに貪られるのだろうか。

 

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