たいしたことのない
(これまで)
加藤一行は遺跡の話を聞くために、愛媛大学の考古学研究所を訪れることにした。
(登場人物)
山田香織
書くネタも無く、行く当ても無く、フォレストガンプの枯れ葉のように着地点を探している。昨日とは全く違う世界が広がっているのは、あのニュースを境に空を支配しようとする獣が増えたからだ。轟音を撒き散らしながら地上を撮影し、人だかりのできている場所を映していることだろう。
「お堀にあんなに人が。」
いつもは人の出入りはほどほどだが、自転車に乗っていくつもの中学生、高校生たちのグループが列を成している。路面電車の駅と横断歩道が交差して、赤信号で待つ礼儀正しい集団が、これから野次馬としてカメラを回しに行くというのを考えると、反抗期の子供を見守る親の気分というものが理解できる。
「あれみんな学生ですよ。」
隣にいた二人組の中年サラリーマンが、いかにも軽蔑した眼差しでひそひそと会話している。車道から3mほど離れた日差しの中で、艶やかなサインを待っている。
その二人には申し訳ないが、ここにいる小娘もその一人になろうとしているのです。日差しを憎むわけではないが、帽子を持ってくればよかった。そそくさと足早に、中央にある広場へ向かって行くと無造作に駐車された自転車の山があった。どう考えても駐輪所ではないだろうと思いつつ、そこに笑顔のままで次から次へと足されていく。
どこに目的の場所があるのかは、大抵走っている奴についていけば辿り着く。100人ぐらいの人だかりがごにょごにょと蠢いており、タコが色彩を変化させて擬態する時のようであった。2分ほどかかって着いたころには、息を吹きかけた様に散り散りになって
「たいしたことないね。」
と愚痴をこぼしながら帰る女子達に代表されるような、ジェットコースター的がっかり感がある。それもそのはずで、現場を視認することは不可能であり、例えば裏山のような高いところから見下ろしても、中枢までは確認できない。来たついでに遊ぶ連中と、一応写真と動画を撮っている連中とに分かれている。
「たしかに、つまらない。」
これでは、ブログのネタにはなりそうにない。しかし、レポのように情報を伝えていくという意味では価値がある。その分しっかりとフィールドワークをしていく必要があり、その面倒くささに頭が重くなる。
「現場ではこのように、規制線が張られております。あの奥にお二人の遺体が発見されたということです。」
中継を必死にやっている女性記者がいて、カメラマンもスタッフも本気である。それが、真実の追求のためではないことはよくわかる。
「(あれは、私だな・・・。)」
そう思うと、目頭と側頭部を強く引っ張られる違和感に襲われ、その場に立っているだけの自分を殺したくなった。これを啓示というのなら預かり申し、この先行利益だけで飯を食っている餓鬼から、手と耳と目を取り上げなければならない。
踵を返し、背を向けたままで大きく咳き込んで去る。顔に砂をかけるようにして、大きな一発を目論みつつ帰路に着いた。
「あいつらに一矢報いてやる。」
香織の目的が当初よりも大きく逸れて、そのまま地球にぶつかる隕石のように後先考え無くなっている。そして、そのまま両者ともが砕け散って、幸せの残らない結果になろうとは。




