第6話 「刀の力」
ふと、何かの声を遠くに聞き、目が覚める。
辺りを見回すと、自分が木にもたれてかかっていることがわかる。
どうやら、洞窟を出てすぐ眠ってしまったようだ。
思えば、異世界にきて数日ろくな睡眠もとっていない。
疲れて眠ってしまうのも無理ないだろう。
立ち上がると遠くからゴブリンの声が聞こえてきた。
さっき聞いた声はゴブリンのものだったようだ。
木の陰に隠れて様子を伺う。
すると、森の一角からホブゴブリンが姿を現す。
続いて他のゴブリンも次々と現れる。
だが、よく見ると行きよりも数が少ない。
どのゴブリンも怪我をしている。
何かと戦ってきたのだろうか。
ゴブリン達は次々に洞窟へと入っていく。
すべてのゴブリンが洞窟に入ったのを見計らい、木の陰から出る。
すると、ガサガサと自分の背後から音が聞こえた。
「ゴブっ!?ゴブゴブ、ゴブブ!」
1匹のゴブリンが姿を現す。
背中には少女を背負っていた。
俺を見つけ、警戒するような声を上げると背負っていた少女を放り出し、俺へと飛び掛かってきた。
俺はとっさのことで反応が遅れ、引き倒され、馬乗りになられてしまう。
汚い唾が顔にかかる。
鋭い爪で俺を引き裂こうとするゴブリン。
俺は腕を掴み、必死に抵抗する。
だが、ゴブリンの力は予想以上に強く、押されていく。
「くっそ!この野郎!」
ゴトリ
俺が体をくねらせ暴れると、ゴブリンの首が落ちた。
「え......」
状況が飲み込めず、唖然としていると、自分の手に黒い刀握られていることに気付いた。
「これは...」
この刀は俺の手に入っていったはずだ。
俺の手から生えてきたとでもいうのだろうか。
ふと、思いつき、「戻れ」と強く念じる。
すると、刀は朽ちるように砂に変わり、風に流れ、消えてしまった。
今度、「来い」と強く念じる。
すると、手の中から黒い煙が吹き出し、煙の中から黒い刀が現れる。
「おぉーー!!!」
俺はゴブリンや少女のことなど忘れ、驚きの声を上げる。
俺は決して右手が疼くような人種ではない。
しかし、目の前の光景に、テンションが上がる。
俺はそのまま1人で刀を出したり、消したりを繰り返し、その度に1人で歓声を上げる。
......ん?何か忘れているような...。
「ん...ここは...?」
目覚めた少女と目が合う。
こういう時はとりあえず笑顔だ。
「きゃああああ!!【ウォーターボール】!!」
叫び声をあげ、手を前に突き出した少女の手から水の球が俺の顔目掛けて飛んでくる。
「ぶへっ!?」
水の球をもろにくらった俺は後ろに尻餅をつく。
「痛てて...」
顔を上げると、立ち上がった少女が、周りに5つもの水の球を浮かべ、こちらを見ていた。
「ちょ、ちょっと待って!!誤解だ!」
俺は手を前に出し、必死に自分の無実をアピールする。
「よく見ろ!俺があのゴブリンを倒して、君を助けた!」
ゴブリンを指差すと、なんとか信頼してくれたようで、
浮かべていた水の球を消してくれた。
そこで、俺は彼女を助けるまでの経緯を話した。
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「本当にすいませんでしたぁぁぁ!!!」
彼女は話を聞いた後、土下座の姿勢をしたまま動かない。
「あの、さ。もうわかったから。顔を上げてくれない?」
正直、女の子を土下座させたままというのは、男として良くないと思う。
「君に何があったのか教えてくれないかな?」
「わかりました、私はアリス。エリーデルの町で冒険者をしています」
そう言うと彼女は自分の身に何があったのかを話し始めた。




