第5話 「ゴブリンの巣穴」
何者かの痕跡を辿っていくと、洞窟を発見した。
足跡は洞窟の中まで続いている。
恐る恐る洞窟に近づこうとした時だった。
「ゴギャアァァァ!!!!」
獣の咆哮が聞こえ、地面が揺れる。
思わず尻餅をついた。
地震かと思ったが、違う。
理由は洞窟から現れた巨大な影だ。
洞窟から現れた巨大な影
それは────今まで見たものの何倍も大きなゴブリンだった。
俺はあまりにも突然のことでまったく動けずにいた。
大きなゴブリン──仮にホブゴブリンと呼ぼう──は両手におそらく鉄で出来た剣をもっていた。
ホブゴブリンに続いて、次々とゴブリン達が出てくる。
大抵が棍棒か古びた剣だが、
中には杖を持っているものや弓を持つ者もいる。
そんなゴブリン達がぞろぞろと出てきてたちまち、大群のようになった。
「ゴギィィィ!!!」
先頭のホブゴブリンが叫ぶとぞろぞろと森林の中へと入っていた。
俺はその様子をただ茫然と見ていた。
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ホブゴブリン達が去った後、しばらく動くことが出来なかった。
「なんだったんだ。あれは......」
頭で処理が追いつかない。
よくわからないが、あの洞窟からホブゴブリン達が去ったのは確かだ。
今ならあの中を探索できるんじゃないか?
もしかしたら、武器があるかもしれない。
俺は覚悟を決めて、洞窟に近づいていった。
洞窟の中に入ると、中は暗くじめじめしており、視界が悪かった。
「痛っ!もぅ、なんだよ....」
暗い中壁に手をついて進むと、何かにつまずいて転んでしまった。
立ち上がり、袴についた土を払って歩き出す。
進んでいくと、少し先が明るくなっていた。
どうやら、洞窟の一部が崩れ、吹き抜けのようになっているようだ。
洞窟の天井の間から白く輝く月が顔を覗かせている。
「ひいぃ.....!!」
明るい所に出ると、自分が歩いていた所が照らされ、どのような場所なのかわかった。
俺が歩いてきた道の端に────人の骨が大量にあったのだ。
人以外にも何かの動物の骨もある。
前に見たとき、ゴブリンは人を食べていた。
それが、1匹ではなく何百匹もいるのだ。
当然、食べる量も増える。
ゴブリンは人間を連れ去って、食料にしていたんだろう。
ふと、今度は何かを感じ、前を見る。
そこで、始めて前方に大きな岩がある事に気づく。
岩の真ん中あたりには何かが刺さっている。
俺は近づき、それを見つけた。
岩に刺さっていたのは──────黒い刀だった。
刀の柄は黒く、岩から突き出て少し見える刀身も黒い。
刀は普通、鞘に入っているが、辺りにそれらしき物は見当たらない。
ゴブリンの洞窟にある岩に刺さった、真っ黒な刀。
普通なら不気味で触ろうともしないだろうが、なぜか。
俺はその刀に強く惹かれていた。
刀に近づき、柄を強く握り締める。
引き抜くために強く踏ん張る。
そのまま引き抜こうとすると、刀はなんの抵抗もなく、するりと抜けた。
予想外のことに俺は引き抜いた勢いのまま、後ろに尻餅をつく。
「うぉ!?」
刀は手放さなかったが、かなり驚いた。
「うわぁぁ!?」
尻餅をついた時、刀を持った手に違和感を感じて見ると、
刀が手の中にずぶずぶと沈み込んでいった。
「はぁ!?えっ、ちょっ、なんだよこれ!?」
手をぶんぶんと振り回すが、刀は離れるず、むしろ更に手に入っていく。
そして、手の中に完全に入って見えなくなった。
「嘘だろ!?ちくしょう!この、出てこい!」
手の平を摘み、なんとか出そうとするが、何も出ず、刀は手に入ったままだ。
試行錯誤して、出そうと試みるが、うまくいかない。
俺は一旦諦め、ひとまず洞窟を出ることにした。
今まで洞窟の中で騒いでいたが、ホブゴブリン達が戻ってくる可能性もある。
ふと、体がなんだか軽いことに気づいた。
自分の体を確認すると、ある事に気づいた。
防具が......ないのだ。
何を言ってるのかって?逆に教えてくれ。
何だよこれ?
頭が混乱してきた。
刀は埋まるし、防具は無くなるし、俺は夢でも見てるのだろうか?そもそもこの異世界も夢なのだろか。
思いきり頬をつねってみる。
......痛い。
夢じゃなくて現実らしい。
混乱して、何が何だかよくわからないが、とりあえず洞窟から出た方が良いだろう。




