第二章 序章
第二章 序章
全ての事の発端は1900年に落ちた隕石にあるそうだ。
大陸に落下した流星群はその地を一瞬にして吹き飛ばし、大量の粉塵を巻き上げさせた。
粉塵は成層圏にまで達し地球を覆い尽くすと、見る間に地上の気温を下げ極寒の世界へと変貌させてしまったのだった。
そうして訪れたのは深刻な食糧不足。陽光が届かないため農作物が育たず、植物を餌とする動物たちが数多く死に絶えた。
更に大量のエネルギー消費により資源の枯渇、大気汚染が進み、徐々に状況は悪化に悪化を重ね、破滅へのカウントダウンが順調に刻まれていった。
しかし人類は諦めなかった。 人工灯を使い食料を確保しつつ、次々に革新的な技術の開発を進めて、少しずつだが何とか生存時間を延ばしていった。
効率の良い発電技術。生産性の高い農業法。特殊な状況下における生存圏の確保。
あるいはこのままいけば、人類存亡を回避する光明が見えたのかもしれない。
だがある時期、予期せぬ災厄が発生することになる。
落下した隕石には未知の病原体が含まれていて、感染した者たちに謎の奇病を発症させたのである。
感染した者は直後に死亡し、肉体を変貌させて異形の化け物と化す。
変貌後の姿は生前の特徴に影響されるらしく、願望やコンプレックスによって様々な形状の異形が誕生した。
更に、生前の欲望が強く具現するという性質もあるらしく、人間という罪深い生物に感染することで急速に破壊の被害が広がってしまったのである。
そんな異形から逃れるため、人類は地下に生活圏を求めるようになった。
地上は氷河期の最中であり、更に排出されたガスなどによって大気汚染も酷いため、あるいは異形がいなくてもいずれは地下で暮らすようになったのかもしれない。
栄華を極めた人類の到達点は、狭く薄暗い穴蔵だったのである。
それから人類は異形の研究を死に物狂いで始めたが、現在になっても病原体の正体は解明できていなかった。
ただ、それでも次のような幾つかのことは判明した。
表層に出現する症状の傾向。
陸上の特定した霊長類にのみ感染するという性質。
感染経路は隕石の粉塵からが大部分で、伝染、つまり空気感染や飛沫感染、血液感染や虫などを媒介としたベクター感染などはほとんど確認されなかった。
しかしそれでも厄介である事実は変わりがなく、巻き上がった粉塵が雨によって地上に落ち、大量の感染者を出したという報告もあった。
各国の行政が機能しない中、人々は自衛する手段を模索する他になかった。
まず粉塵を体内に入れないために防塵マスクを着用する。
水は煮沸することで安全になるため、雨水や生水をそのまま飲まない。
魚、野菜など水に関するものはとにかく火を通す。
など、気を付ければ対処自体はそう難しくないものであった。
そうして現在、人類は異形の脅威から逃れつつ生存圏を守ってきた。
まだ明確な解決法はなく、日々感染者が増えていく状況ながらも、人類はまだ存続を諦めてはいなかった。
果たして希望はあるのか。その答えを持つ者は極端に少ない。




