第24章 ダンジョンにチェーン店進出4
普段は混雑する時間になっても神崎屋の空席は埋まらなかった。注文を待つ間に、茶碗蒸しの器を洗い、残った卵液を冷蔵庫へ戻す。米もいつもの減り方ではない。
久世の店からは、番号を呼ぶ声が途切れず聞こえていた。
四人が戻ってきたのは、それからしばらく後だった。
紬は白い鎧の腹をさすり、天音は空になったテイクアウト容器を入れた袋を持っている。里沙はレシートを見ており、眞子だけはまだ久世の店の方を振り返っていた。
「どうだった?」
「普通においしかったよ」
天音が答えた。
「出てくるのも速かったです。列に並んでから食べ終わるまで、思ったほど掛かりませんでした」
里沙がレシートを畳む。
「ご飯の量も選べました。二百九十円なら、話題になるのは当然だと思います」
「あたしは大盛りを二つでもよかった」
「眞子。それでも大盛り無料になるの?」
「無料なのは一つ目の大盛りだけだったぞ」
「確認したのね」
眞子は残念そうに頷いた。何を期待していたんだ。
「紬は?」
聞くと、紬は少し考えた。
「値段を考えたら、悪くないわ」
「ずいぶん頑張って褒めたな」
「褒めてない。事実を言っただけ」
久世の店の食事は、味も量も問題なかったらしい。あれだけ数を出しながら、四人が揃って悪くないと言うなら、きちんと作っている。
「じゃあ、行ってくるね」
四人は装備を確かめ、通路の先にある探索口へ向かう。
紬はまた扉の前で振り返った。
「晃一さん。帰ったら、今度こそ茶碗蒸しを食べるから」
「夜まで残ってたらな」
「残しておいて」
「今日の調子なら大丈夫だろう」
紬は満足したように頷き、三人を追った。白い鎧、皮鎧、青い服、銀の鎧が通路の角へ順に消える。全員、いつもと違う店で昼を食ったくらいで、探索の調子が変わることもないだろう。
俺は空いた客席の湯飲みを下げた。
久世の店の列は、まだ通路の先まで続いている。今日は向こうを選ぶ客が多い。だが、うちは、うちの料理を出すだけだ。
蒸し器へ水を足し、紬の予約分を一つだけ冷蔵庫に入れた。




