第24章 ダンジョンにチェーン店進出2
外に出て様子を見ると、久世の店の前にはもう列ができていた。
赤い開店旗が通路の両側へ並び、揃いの制服を着た店員が客を二列に分けている。注文を先に聞き、番号札を渡し、空いた席へ順番に案内していた。列は長いが、入口で止まらない。
「速いですね」
里沙が扉のそばから様子を見る。
「注文が一つなら、迷う時間もありませんね。テイクアウトの人は右の列みたいです」
「二百九十円で大盛り無料か。あたし、二つ食っても五百八十円だぞ」
眞子が指を折る。そこは暗算でいいだろう。
「二つ食べる前提なの?」
「大盛り一つで足りなかった時の話だ」
「足りない前提じゃない」
天音がチラシと列を交互に見た。
「動画で紹介しなくても、今日は勝手に広がりそう。入口の写真だけでも、もう何枚も上がってるよ」
「今日は撮るなよ」
「撮らないよ。私達、これから探索だもん」
そう言いながら、天音はカメラを身体の後ろへ回した。疑って悪かった。
神崎屋へ向かってきた三人組が、途中で久世の店の旗を見つけた。先頭の男が値段を読み上げ、三人ともそのまま列の最後へ進んでいく。
「今、こっちへ来るところだったわよね」
紬が言った。
「安い方を試したくなる日もあるさ」
「晃一さん、平気なの?」
「何がだ」
「お客さん、あっちに並んでるけど」
見れば分かる。昼前なのに、神崎屋の客席は半分以上空いていた。
「並んでる間に腹を減らして、明日こっちへ来るかもしれないだろ」
「前向きすぎない?」
「腹を減らした客に飯を出すのが店だからな」
天音は納得したような、していないような顔で頷いた。
久世の店から、蓋の付いた容器を持った客が次々に出てくる。受け取ってから出てくるまでが早い。工場で下ごしらえを揃え、店では温めと盛り付けに絞っているのだろう。あの値段で数を出すなら、よく考えてある。
「感心してる場合じゃないわ」
紬に言われた。
「まずいものを出してるわけじゃないんだ。いいところはいいで構わないだろ」
「晃一さんは、もう少し張り合った方がいいと思う」
「値下げならしないぞ」
「そういうことじゃないの」
難しいな。




