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第2章 一食で回復するS級探索者1

 朝の「おふくろの味 神崎屋」は、まだ新しい木のテーブルや椅子の匂いが強かった。


 俺は新しく付けた扉の具合を見た後、カウンターの端を指でなぞった。ほこり一つ無い。洞窟の中の空きスペースが、やっと神崎屋らしい形になった。


 厨房も、最低限の道具は揃った。鍋、フライパン、まな板、包丁。どれも見慣れたものなのに、この場所に置くと少しだけ別の店みたいに見える。


「神崎さん、これで工事は一通り終わりです」


 工事を頼んだ職人が、額の汗をぬぐいながら言った。


「助かりました。扉までちゃんと付くと、急に店っぽくなりますね」

「そりゃそうですよ。扉がないと、ただの露店です。格が変りますよ」

「露店も悪くないですが、定食屋にしたかったんでね」

「それに、外は土っぽい匂いがしますからね。」


 言われてみれば、その通りだった。外から入ってきていた土っぽさは、まだ消えない。だが、配線も水回りも通っている。飯を出すには、充分だ。


 俺は厨房の火を入れて、湯を沸かした。鍋の底が温まっていく音を聞くと、少しだけ落ち着く。新しい店だろうが、やることは変わらない。火を入れて、飯を炊いて、客を待つ。それだけだ。


「神崎さん」

「はい」

「この場所、思ったより商売向きですよ」

「そうですか」

「ええ。探索者は腹が減りますし、地下一階なら人通りも多い。飯の匂いがしたら、寄る奴は寄ります」

「その寄る奴等に期待するしかないですね」


 職人は笑って工具を片づけた。扉の向こうでは、地下1階の通路を行き来する足音が小さく響いている。飯屋、乾物屋、道具屋、酒場。どこもまだ朝の支度をしている時間だ。


 俺はエプロンを結び直して、開店札を表に出した。

 よし。あとは客を待つだけだ。


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