第15章 アイドル仲間、遅めの昼ごはん3
最後の客を見送り、洗った皿を棚へ戻した。
紬が登録した配信ページが、スマホに残っている。開いてみると、ミルキーラビットのライブが始まるところだった。
画面には、白を基調にした衣装の紬と莉音が、他のメンバーの前で映っていた。
二人がダブルセンターの曲らしい。
紬の衣装には淡い水色のリボンと銀色の飾りがついている。短いスカートに白いブーツ。
店でオムライスを食べていたときとは、まるで別人だ。
紬が観客へ大きく手を振る。銀髪が照明を受けて輝き、笑顔が画面いっぱいに映った。
すぐに、紬が可愛いというコメントがいくつも流れてくる。
曲が始まると、紬は軽やかに前へ出た。くるりと回るたびにスカートと銀髪が広がる。
大きく腕を振っても体はぶれず、莉音が隣に並ぶと、二人の動きがぴたりと揃った。
紬が歌い出す。普段の話し声とは違う、明るくてよく通る声だ。
あれだけ踊っているのに息は乱れず、長く伸ばした声もかすれない。
莉音の高い声が重なると、二人の歌声がきれいに合った。
莉音がカメラへ顔を寄せると、紬も隣から顔を出す。
二人で頬を寄せ、同時に片目をつぶった。コメントが一気に速くなる。
舞台の両側から銀色のテープが飛んだ。
紬は降ってくるテープの中で回り、そのまま歌い続ける。
着地もきれいに決まり、莉音と背中合わせになった。
二人が同時に振り向くと、観客から大きな歓声が上がる。
「よくあれだけ動いて歌えるな」
最後まで二人の動きは、メンバーの中でも際立って揃っていた。
曲が終わり、紬と莉音が並んで頭を下げる。
顔を上げた紬は、もう一度カメラへ向かって笑った。
プロにしても、あれだけ元気に動けるのは大したものだ。
二人とも普段から歌と踊りを仕事にしているだけある。
配信が終わったので、俺は明日の米を研いだ。
米を炊飯器に入れ、使った道具を洗っていると、スマホが震える。紬からのメッセージだった。
『晃一さん、やっぱりバフ飯の効果です。集中力と連携感覚が大幅に上がっていた気がします。莉音ちゃんと最後までぴったり合わせられたし、あれだけ踊っても息が続いて、歌の音程もぶれませんでした』
始めて見たので比較は出来ないが、あれは二人の努力の結果だろう。バフ飯なんて、おおげさな話だ。
俺はスマホを伏せ、炊飯器の蓋を閉めた。
オムライスの力ではない。二人は、うちの昼飯を食った後で、自分たちの仕事をやり切っただけだ。




