第14章 テイクアウトの試作2
今回のメインはミックスフライだ。
まずはエビの背を開いて筋を取り、白身魚は身が崩れないように切る。水気をキッチンペーパーで丁寧にとる。メンチカツはひき肉を粗めにこねて、つなぎは少なめ。それぞれ、衣のパン粉は生を使う。
油に落とすと、じゅわっと音が立ち、鍋のまわりに細かい泡が上がった。
エビは軽く、魚はさっぱりとさせたい。メンチは中から肉汁たっぷりが理想。どれも同じ揚げ物に見えて、衣のつけ方も火の入れ方も違う。そこを分けて考えないと、上手く揚げられない。
「うわ……」
天音が厨房の前で目を輝かせる。
「この音が効いたら、お弁当の売り上げ増えそう」
「弁当だと、調理中の音は聞けないけどな」
「でも、食べたくなる音です」
里沙はいつも通り静かだが、目はもうフライパンから離れない。
揚がったら、すぐ網に上げる。
油を切っているあいだに、キャベツをメインと別の弁当容器に入れ、タルタルとソースはそれぞれ別添えにする。
持ち帰りなので、容器の中で蒸気がこもらないよう、キャベツと調味料は別添えにしておく。
「晃一さん、別添えは上手い考えですね」
紬がのぞき込みながら言う。
「食べる人が後で美味しく食べられるようにだ」
「それ、料理人として偉いです」
「普通だ」
俺はそう返しながら、揚げたてのエビフライを一本だけ味見した。
衣は軽く、噛むと、サクッと割れる。中の身はまだ熱く、甘みがある。
他のものも味見する。白身魚の淡さと、メンチの肉のコクを順番に味わえる。味のバリエーションが感じられた。
里沙が、試作品を覗き込んだ。
「見てるだけでお腹すきます。もう揚げ物の匂いが店いっぱいですもん」
眞子は、物欲しそうに笑っている。
「あたし、これも十人前いける」
「試作だ。今日は、もう食うな」
「じゃあ二人前だけ」
「駄目だ」
俺は苦笑した。詰め方は、ただ入れるんじゃ駄目だ。熱いものと冷たいもの、汁気のあるものとないものを分けて、食べる時に最高の状態になるようにする。
さらに見た目がきれいだと、客もよろこぶ。
「これなら、店の外でも食べやすいですね」
里沙が、小さくうなずく。
「そうだな。食べる場所が変わっても、気持ちはちゃんと届く」
そう言うと、紬が少しだけこちらを見る。
その目が、妙に真面目だった。




