表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
34/70

第14章 テイクアウトの試作1

「しかし、これが毎日は、さすがに疲れるな」


 俺は、首と肩を回しながら、こぼした。

 カウンターの皿を下げながら俺が一息つくと、天音がカメラを片手に身を乗り出してきた。


「晃一さん、これ、持ち帰りにできません?」


 天音は、配信の画面を見せるみたいな顔をして、指先で空の皿を示した。


「持ち帰り?」

「だって、並びにくい人もいるじゃないですか。早く出発する探索者とか、朝番のギルドの人と他の店で働いてる人」

「まあ、たしかにいるな」


 そういう客は、うちにも少しずつ増えてきた。

 横では里沙が、落ち着いた顔でうなずいている。


「ここの料理を美味しいまま持っていけるなら、需要はあります」

「需要って言い方、急に商売っぽいな。確かに、弁当で客をさばければ、飯時の混雑もましになるかもしれない。揚げ物なら一度に沢山こなせるだろう」

「配信者も需要は大事ですから」


 里沙が眼鏡をくいっとやって言った。

 そこへ紬が、腕を組んで割って入る。


「でも、揚げ物を持ち帰ると、しけませんか」

「そこが問題だな」

「じゃあ、しけない持ち帰りを考えればいいんじゃね?」


 眞子まで、デザートに頼んだプリンアラモードを、もぐもぐしながら言う。さっき回鍋肉定食を十人前食べたばかりなのに、もう四皿目だ。


「言うのは簡単だが……まぁ、やってみるか」


 俺はそう言いながら、頭の中で料理と弁当の容器を並べた。

 弁当をテイクアウトするなら、熱と湿気の逃がし方が大事になる。揚げたてを詰めるだけじゃだめだ。衣が自分の蒸気でふやける前に、少しだけ息をさせる。


「とりあえず、今日は試してみるか」

「やるんですか」

「うまくいけば、みんな喜ぶ」


 紬が少しだけ顔を上げる。


「晃一さん、実験ですね」

「料理は、わりといつも実験だ」


 天音がそのやり取りを聞いて、もう撮る気になっていた。


「よし、今日は『神崎屋の特製弁当』の試作回だ。神回間違いなし!」

「神回かどうかは知らんがな」

「でも、大事」


 こいつの言うことは、たまに妙に的を得ている。

 俺はエプロンを締め直して、厨房へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ