第14章 テイクアウトの試作1
「しかし、これが毎日は、さすがに疲れるな」
俺は、首と肩を回しながら、こぼした。
カウンターの皿を下げながら俺が一息つくと、天音がカメラを片手に身を乗り出してきた。
「晃一さん、これ、持ち帰りにできません?」
天音は、配信の画面を見せるみたいな顔をして、指先で空の皿を示した。
「持ち帰り?」
「だって、並びにくい人もいるじゃないですか。早く出発する探索者とか、朝番のギルドの人と他の店で働いてる人」
「まあ、たしかにいるな」
そういう客は、うちにも少しずつ増えてきた。
横では里沙が、落ち着いた顔でうなずいている。
「ここの料理を美味しいまま持っていけるなら、需要はあります」
「需要って言い方、急に商売っぽいな。確かに、弁当で客をさばければ、飯時の混雑もましになるかもしれない。揚げ物なら一度に沢山こなせるだろう」
「配信者も需要は大事ですから」
里沙が眼鏡をくいっとやって言った。
そこへ紬が、腕を組んで割って入る。
「でも、揚げ物を持ち帰ると、しけませんか」
「そこが問題だな」
「じゃあ、しけない持ち帰りを考えればいいんじゃね?」
眞子まで、デザートに頼んだプリンアラモードを、もぐもぐしながら言う。さっき回鍋肉定食を十人前食べたばかりなのに、もう四皿目だ。
「言うのは簡単だが……まぁ、やってみるか」
俺はそう言いながら、頭の中で料理と弁当の容器を並べた。
弁当をテイクアウトするなら、熱と湿気の逃がし方が大事になる。揚げたてを詰めるだけじゃだめだ。衣が自分の蒸気でふやける前に、少しだけ息をさせる。
「とりあえず、今日は試してみるか」
「やるんですか」
「うまくいけば、みんな喜ぶ」
紬が少しだけ顔を上げる。
「晃一さん、実験ですね」
「料理は、わりといつも実験だ」
天音がそのやり取りを聞いて、もう撮る気になっていた。
「よし、今日は『神崎屋の特製弁当』の試作回だ。神回間違いなし!」
「神回かどうかは知らんがな」
「でも、大事」
こいつの言うことは、たまに妙に的を得ている。
俺はエプロンを締め直して、厨房へ向かった。




