第13章 眞子はいつも大食い1
その日の行列が一巡したころ、店の扉が勢いよく開いた。
入ってきたのは、赤い髪を短く切った背の高い女の子だった。がっちりしていて、肩で風を切って歩いてくる。
「晃一さん、またうちのパーティーメンバー連れてきたよ。面白い子だから、今日も撮らせて」
「まあ、いいけどな」
天音が、後ろから現れて、そう言った。紬と里沙もいる。
眞子は、ハートフルレイズの戦士だそうだ。出渕眞子。よく食べ、よく笑い、細かいことは苦手な子らしい。
「晃一さん、回鍋肉定食、十人前!」
挨拶より先に注文が飛んできた。
「……十人前?」
聞き返した俺の前で、眞子は胸を張った。
「あたし、今日めちゃくちゃ腹減ってるんだよね」
「めちゃくちゃにしても多すぎるだろ」
「昨日の夜から何も食べてないし」
「そういう問題か?」
眞子は悪びれもせず、カウンター席にどっかり腰を下ろした。続いて、紬と天音が店に入ってくる。
「眞子ちゃん、本当に十人前?」
天音がカメラを手に聞いた。
「本当に十人前。お前らには分けない。あたしが全部食べる」
「この後も、ダンジョン探索なのよ。大丈夫なの?」
紬が眉を寄せる。
「大丈夫だって。おいしいものは、多いほうがいいじゃん」
「多すぎます」
「でも、ここの飯は絶品なんだろ?大丈夫だって」
さらっと言うな。そう言われたら、こっちも頑張って作るしかない。
天音はもう録画の準備を始めていた。
「今日は大食いチャレンジ回だ。これ、見たい人、多いと思いますよ。食べる前からもう面白いです。眞子ちゃん、十人前って言っても全然ひるんでない」
「本当に食えるんだろうな」
眞子は笑いながら、まだ何も出していないのに箸を手に取った。もう止めても聞かない顔だ。
俺はエプロンを締め直して、冷蔵庫から材料を取り出した。
背中のほうで、紬が「食べすぎたら動けませんよ」と小声で注意している。眞子は「このくらい、いつも食べてくるから平気」と返していた。
いつもから、この量なのか?




