第8章 金欠の日でも大盛り2
豚の肉巻きおにぎりは、パンチがあってボリューム満点だ。
炊きたての米に、少しだけ塩を混ぜる。握る時は強くしすぎない。中までぎゅうぎゅうにすると、食べた時にほぐれない。そこへ、豚バラの薄切りを巻いていく。肉に小麦粉をまぶしておくと、焼いた時にほどけない。
フライパンに置いた瞬間、肉がじゅっと鳴った。
「いい音」
天音が、もう撮る気になってカメラを構えた。
「撮るのかよ」
「撮らないって。今は見てるだけ」
「もうカメラを構えてるだろ」
肉の脂が米に染みるように、ゆっくり表面を焼く。表面が色づいたら、みりんとしょうゆをからめていく。甘い匂いが立って、店の中に美味しい香りが流れる。
焼き上がったら、仕上げに白ごまをふる。
本来は一皿3つだが、サービスで5つ置く。見た目だけで豪華な感じが出ている。肉の焼き色が食欲をそそる。
「晃一さん、それ、絶対うまいやつ」
紬が、身を乗り出してくる。
「当たり前だ」
「言い切った」
「それくらいじゃないと、店はやっていけない」
彩希の目が、皿の上で止まった。
「私、これ……食べていいんですか」
「食べるために出したんだ。当たり前だろ」
「でも、こんなに大きいのを5個も」
「サービスだ。値段はいつも通りだから心配するな」
紬が、横から、はしで一つ持ち上げる。
「あ、だめ。これ、すぐ食べたくなる」
「食うな」
「一口だけ」
「駄目だ。お前たちにも、同じものを出してやるから」
俺は、すぐに紬と天音に同じものを作り始めた。
天音は、もう録画を始めていた。
「このボリューム感、映える。絶対映える。ほら、白ごまがいい感じ」
「だから勝手に撮るな」
「いいじゃん、いつも撮ってるんだから」
「もう、仕方ねえな」
彩希は、はしでひとつ取ってから、そっとかじった。
「肉の甘辛さが先に来て、そのあとで米がふっとほどける。すごくお腹にたまる。ボリュームがあるし、それに、凄く美味しい」
今度はさっきより、ずっとはっきりした声だった。
「そうだろ」
「これ、見た目どおり、お腹いっぱいになります」
「肉を巻いてるからな。ただの、おにぎりよりずっとたまる」
「それがいいのよ」
紬が、自分に出された分の一つを口に運ぶ。
「こういうの、豪快にかじると幸せになるよね」
「体を使う探索者には、ぴったりだろ」
「何だか体にパワーがみなぎってくるわ」
紬が、ガッツポーズをする。
「そうですね、パワーがわいてきます」
彩希も、うなずいた。




