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酒場の噂②

読んでいただいてありがとうございます。

「どうもよく分かりませんねぇ」

「そうですね。神子と巫女の関係がちょっと……」


 元々、閉鎖的で王侯貴族の情報なら調べれば分かるが、神子と巫女だと、民の間でも噂がごちゃ混ぜになってしまって、実態が掴めないのが現状だ。

 ただ、神子たちが結婚をしていないのは確からしく、先ほどとは別の人間に聞いても同じことを言っていた。

 情報命の商人やその周囲の人間の大半が知っている情報だったので、それは確かなことなのだろう。


「巫女は、良い言い方をすれば現世利益をもたらす者、という定義ですか。欲望の塊みたいなものですね。なるほど、高位貴族の娘が多いはずです」

「一度でも神様にお仕えした、ということに価値が付くのでしょう」

「そのようですね。帝国の神殿とはまた違うのでしょう。それは別に構いませんが、神子の婚約者を誘惑するのはいただけません。今までのやり方が通ると思われるのも癪です」

「どうされますか?」

「まずは好きにやらせましょうか。その上で、フィーだけが大切なのだと言葉と態度で示しましょう」

「旦那様、フィー様の方が遠慮なさったらどうされますか?」

「あの子が、このことを知らないとは思えないですね。そういえば、婚約する時、少し戸惑っていたように思いましたが、ひょっとすると最終的に私がフィーの傍から離れていくとでも思ったのでしょうか?」


 婚約者が出来てもそれは巫女と結婚するためだ、という思想を叩き込まれていたのなら、シルフィーリは最初から諦めていたのかもしれない。

 諦めていたけれど、それでも今だけは、と思っていたのだとしたら、それは勘違いでしかない。

 何故ならシリウスは、諦める気など全くないのだから。

 ヒューゴもシルフィーリがシリウスの傍からいなくなったら、シリウスがどう暴走するのか分からないので、シルフィーリを守ることに重点を置いている。だからこそ、公爵家に養女に入ることを許可したのだ。


「ふふふふふ、まったく、フィーは可愛くて愚かですねぇ」


 お嬢様、逃げて。あ、やっぱ逃げないで。旦那様をこんな状態にした責任はきっちり取って!

 それがシリウスの笑顔を見た従者の素直な感想だった。

 逃げた方がシルフィーリの幸せに繋がるかもしれないが、逃げるともれなくシリウスによる容赦のない追撃が待っていて、捕まったら本当に終わりだ。

 溺愛からの監禁はダメです。

 そんな思いが顔に出ていたのか、従者はシリウスに冷たい目で見られたのだった。 

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