第79話 無限ダンジョンイベント攻略 その⑧ 本番開始編
15時の少し前、『気まぐれ』のメンバーは早々に全員揃っていた。
「みんな考えることは一緒だね」
ログアウトしたマホだったが、両親は今日は夕飯までゲームの中なので、居間のソファーで少し休んですぐにセンブレに戻ってきた。
話し相手が誰もいなかったというのもあるが、やはりいざ本番というところでの中断でじっとしていられなかったようだ。
「ははっ、まぁねー。あーしもログアウトしたんだけど、飲み物飲んですぐ来ちゃった」
買い物組のヘヴンリーも時間を持て余したらしい。
「じゃあ、光対策はバッチリ?」
「モチ! 見て見て!」
そう言いながらヘヴンリーがメニューを操作すると、幅の大きなサングラスが表示される。
金髪ロングにビキニアーマーのヘヴンリーにはよく似合っている。
「おー!」
「コレ装備してわかったんだけどさ、好きな場所に動かせんの。使わない時はこうやって頭に上げとけるんだよー」
サングラスは視界がやや悪くなるが、必要なければわざわざ装備を解除せずとも別の場所に身につけておくことが可能だった。
これは装飾系の装備に共通することで、髪飾りの位置を変えたり等ができるようになっている。
「あたしのはコレ」
ティエラも続いて買ってきた装備を披露する。
こちらはVRスコープのようなものでサングラスと呼ぶのは語弊があるかもしれない。
「これって見えてるの?」
マホからはほとんどグラス部分が見えていないので、前が見えないように映った。
「もちろん見えてるわよ。集中型で視界が狭まるから移動中はこうやって外して首に掛けておくけど」
ティエラもヘヴンリーのようにそれを一旦外して首から下げる。
これは遠くから狙撃するのに向いたものらしい。
「それよりマホっち、スマぷーの見てよ」
「なぁ、ホンマにおかしくないんか? そう言われると不安なんやけど」
どうやらスマイルは自分で買ったサングラスの外観を知らないらしい。
「大丈夫よ。着けてみて」
ティエラも楽しむように促すと、スマイルはブツブツと何か呟きながら装備をする。
「可愛い! スマぷー、可愛いよ!」
そんなスマイルの不安を一蹴するマホの大絶賛。
「そ、そうかー? よかったわぁ」
スマイルが着けたサングラスは、ピンク色でハート型のフレームだった。
赤いリボンとツインテールには似合って見える。
安堵しながら手に取って確認したスマイルはプルプルと震えている。
「ね、言ったっしょ?」
「マホには気に入ってもらえるって」
スマイルが外観を見ずにいたのは二人に唆されたかららしい。
「ええで。マホっちさえ喜んでくれたんならな!」
当てつけのようにそう言うスマイルだが、実際にマホから絶賛されたのはそれはそれで嬉しいようだ。
「では、素敵な光対策が揃ったところで本番と行きますか」
「ぐぬぬ、せやった。他誰にも見られへんと思っとったけど、ハーちゃんに撮られるんやったな……」
ハートがいじらしく纏めようとしたことでスマイルはそのことに気付いた。
「え? 可愛いからいいじゃん!」
「マホっち……マホっちだけがウチの味方や」
「あの、スマぷー可愛いですよ」
「そうか、レーちゃんも味方や! ありがとな!」
スマイルはマホとレイの間に立って二人の肩に手を置いた。
「それじゃあ、そろそろ本当に行こうか」
もう待ちきれないとばかりにリョウヤが口を出す。
「うん! みんな準備はいい?」
マホの言葉に全員が首肯し、それを確認したマホは水晶玉に手を触れる。
続いてハートも触れ、
「では地下11階から、行きましょう!」
そう言って指揮官とナンバー組が消え、スマイルとレイも続く。
「広いねー」
これまでとの違いにマホが思わず声を上げる。
地下10階までは細めの一本道だったが、ここは倍以上の広さの通路になっていた。
「モンスターも1匹ずつじゃないのかも」
「なるほど、あり得るな。雑魚に関しては人数の多いクランが有利なのかもな」
ティエラとリョウヤがここでも率先して予想する。
ボスとは戦った感じ、あまり大人数のクランが有利とは言えなかったが、道中は違うかもしれない。
そしてそれはすぐに肯定された。
「うっわ、いきなり3匹も!」
「ここは岩フロアみたいね」
少し進んだ場所にはブロックドッグ二体にブロックマンが徘徊していて、すぐにマホ達に反応する。
「ここは物理組にお任せっス!」
ブロックドッグの突撃をリョウヤが受け止めて、アークが後方のブロックマンを、レイとヘヴンリーが止まったブロックマンを仕留める。
「弦を引く間もなかったわ。まぁ、最初のフロアってことろかしら」
物理組で出遅れたティエラは悔しそうにそう言う。
「ま、こんなもんやろ。ガンガン行くでー!」
「おー!」
参謀スマイルの掛け声で、更に進んでいく『気まぐれ』。
脇道がないフロアだったが、モンスターはそこそこ数がいて、それを全て倒しながら進んだ一行はボス部屋前で予定通りマホとスマイルの攻撃でガーゴイルを倒し、ボス部屋の扉が開く。
「岩ってどうなるんだろ。石礫飛んでくるのかな?」
「うわっ、氷より痛そー……リョウヤちんの後ろに隠れてていい?」
マホの予想にヘヴンリーは前の階で見た氷弾より硬い弾を想像してしまい、震える。
「痛覚はないんだ、平気だろ? まぁ、盾で抑えられるか試してみるか?」
「ちょっと待った! 最初くらいノーダメで突破せぇへん?」
リョウヤは試しながら攻略することを提案するが、そこにスマイルが待ったをかけた。
「それわかるー! あーしはスマぷーに一票!」
「わたしもです!」
「うん、あたしも、かな」
「ふっ、これで過半数だな」
「もちろん自分もオッケーっス!」
そんなスマイルの案は全員から支持されることになった。
「じゃあ、せーのでみんなで攻撃しない? ハーちゃんも! ね?」
リーダーのマホはハートも含めた全員一斉攻撃を提案する。
「そうですね。せっかくですしやらせていただきましょうか」
その提案にはハートも乗った。
そして全員で岩のエレメントを取り囲む。
「それじゃ、いい? イベント攻略に向けてみんなで頑張ろーってことで! いくよー、せーのっ!」
マホの掛け声に合わせてそれぞれの武器で同時に攻撃を決める。
今回だけは全員物理だ。マホやスマイルも杖で殴る。
それは所謂鏡開きという儀式。
マホはそれを知らなかったが、なんとなく雰囲気はわかった。
そのことは掛け声前の一言に表れている。
そしてその攻撃で岩のエレメントは倒れ、カケラを入手する。
「なんかいーね、こーゆーの」
「『躍進』じゃこういうことはあまりやらなかったしね」
「あいつらのことだ、今頃20層くらいまで進んでるんじゃないか?」
「負けられないね! 確認することやったらどんどん行こう!」
リョウヤの予想に触発されたマホが気合いを入れて拳を突き上げる。
「「おおー!」」
そんなマホにみんな応えて拳を上げた。
そしてその日は夕飯の休憩を挟んで、リョウヤの言った地下20階まで進んだところでマホが離脱。その後マホ以外のメンバーで23階まで攻略し、24階の途中で終了時間となった。
お読みいただきありがとうございます。
一気に書くタイプなので少ない時間で書き分けると話がブレてしまいます。。。
そしてなにより・・・
雷 入 れ 忘 れ た !
はい、盛大にやらかしました。
属性を考えた時に何故かポッカリと抜け落ちてました。
※10/24 修正完了しました。今話の内容も一部変更しています。




