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第80話 無限ダンジョンイベント攻略 番外編 『躍進』の大躍進

 時は遡ってマホ達『気まぐれ』がチュートリアルを終えようという頃、トップクラン『躍進』は地下20階にいた。


「人数多けりゃいいってわけじゃねーのは仕方ねぇな。俺らの下とは10人も違うんだからな」


 一気に駆け抜けてきた武蔵率いる『躍進』は一旦休憩と、ボス部屋の中で止まった。

 現時点で最大のクランハウスは躍進が所有するクワトロ最高の40人ハウス。それに次ぐのはトライアングル最高ハウスとクワトロの最高以外のハウスの最大値である30人だ。

 なので30人のクランですら多くないのだから大人数を優遇していないことには理解できた。

 とはいえ雑魚掃討をしながら進めるという点では、レアドロップのカケラの回収効率は良い。

 大多数を占める人数の少ないクランならある程度の雑魚をスルーしてボスを目指すか、ペースを落として掃討していくのかという選択を迫られるが、『躍進』にその心配はない。

 実際『躍進』は現状の到達階層は次ぐクランとの差のほとんどないトップであるが、それでいて雑魚の討伐数は圧倒的だ。既に二つのカケラドロップも報告されているし、地下11階からのドロップ金も100Gに増え、1日に入手できるGとしてはそれなりの額に到達しそうな勢いだった。


「ボスが硬くなってからが面倒だな。ティエラやアークって遠中距離が抜けたのが痛いぜ」


 ボス戦こそ大人数が活きない箇所。取り囲める人数は限られている。

 それを外から援護できる遠中距離の要であった二人の離脱は『躍進』には痛手だったと紅蓮は嘆く。

 クワトロでは近接型の方が求められることが多く、後衛はなかなか出てこない。


「言うな。ティエラはともかくアークの事情は聞いただろう?」


「まぁなー。妹の為っていうのがアイツらしいけど」


 リーダーである武蔵だけでなく紅蓮もアーク離脱の理由は聞いていたらしい。

 というか肩書きこそこのゲームにはないが、サブリーダー的存在だったリョウヤの立場に今いるのが紅蓮だ。


「それよりもだ。これからどう進めていくか、率直な意見を聞きたい」


 今はまだ最初の一斉攻撃でボスを倒せているからいいが、HPが残り始めると攻撃に参加していないメンバーまで無駄に被弾してしまう。

 ボスの攻撃は魔法タイプで武蔵の得意とするカウンターも対物理限定なので使えない。


「難しいな。探索組と別フロアに分かれるとそっちも結局はボスを倒さなきゃ進めねぇ、そっちに戦力を振るとこっちのペースが落ちる」


 紅蓮は腕を組んで悩むが武蔵の問いには答えらしい答えは出てこない。


「まさかボス部屋突入に時間制限があるとはな……。しかも一度閉じると残ったメンバーは待つしかない」


「待った上でガーゴイルからやり直しだったからな。一緒に進んでるうちは全員で入るのが効率はいいだろうな」


 攻略組がモンスターを倒し、その間に探索組が隅々を調べる。そしてボス部屋には全員で。そうやってここまで進んできた。

 それが武蔵の出した一つの答えだった。

 紅蓮も現状はそれが最善と判断していた。


「問題はログイン時間が合わなくなる平日か。探索を深夜組に任せることにしたが……単純な戦力でも俺達には劣る。俺達が進んだ階層まで追いつくのは難しいだろうな」


 『躍進』はまず武蔵や紅蓮の夕方組が一気に階層を進め、その進んだ階層を深夜組が調べ尽くし、最終的には宝箱か特定の属性の集中する最も効率の良い階層帯でカケラを集める周回組と、とにかく先を目指す攻略組とに分かれる予定だ。

 これは見つけた範囲の属性が欲しい属性なのかによって希望を募ることになっていて、カケラを集めるか攻略に参加するかをメンバー自身に選ばせるという武蔵の案だった。

 周回組もより良いレアリティのワードと交換できればクラン自体の底上げに繋がるからだ。

 そして偶然とはいえ、最初に分かれた夕方と深夜の組では前者にウルトラレアのワードを持つ戦力が偏ってしまっていた。


「追いつく必要はなんじゃねぇの? 大事なのは見逃しがないことだ」


「イベントの攻略という意味ならそうだがな。うちは『躍進』だ。皆最前に立ちたいだろう? やはりメンバーを見直して──」


「ちょっと待った!」


 紅蓮の意見に、実際にプレイした感覚から『躍進』のリーダーとして計画の見直しをしようとする武蔵の言葉を遮って、メンバーの一人が手を挙げる。


「ヤマトか。どうした?」


「自分はこのクランが一位を獲ることに専念すべきだと思います!」


 ヤマトというメンバーの予想外の行動にも冷静に対応して聞く姿勢を見せる武蔵にその彼はハッキリと自分の意見を出した。


「もとよりそのつもりだけどな。戦力を分けると一位を獲れないってか?」


 彼の言葉に紅蓮が真意を問いただす。

 紅蓮は武蔵の言おうとした変更をしたとしても一位を獲ることは可能だと思っている。


「いえ、そうじゃなく……。前回、自分は始まりの街の担当で、もちろん一位を目指していましたが、その上で武蔵さん達が一位を獲ってほしいとも思っていました」


「何が言いたい?」


「ですが、その結果は……。トライアングルで何があったのかは結局わかりませんでしたが、ツインにはガチでやって負けてます。『躍進』のリーダーである武蔵さんがいてこれはあってはならないことです!」


「俺が不甲斐ない、と?」


「違います! 前回は分散してましたが、今回のイベントはクラン対抗戦。なら、『躍進』はどこにも負けないのは当然として、完勝・圧勝すべきだ! ……と言いたいんです」


「……そうだぜリーダー!」

「俺達はトップクランだ!」

「圧倒的に勝ってやろうぜ!」

「探索は任せてください!」


 ヤマトの叫びに呼応するように他のメンバーからも声が上がってくる。


「探索組のことは気にしないでください。武蔵さんさえ先に進んでくれれば死んでも次の階層に進めますから」


 探索組の目的はボスを倒すことではないと笑ってそう言うヤマト。

 それにボスドロップが得られなくても武蔵達がスルーしていく宝箱を開けることはできる。

 そもそもまだ探索組でも余裕で戦って倒せる階層だ。



「……だ、そうだぜ? 確かにヘヴンリー達が派手にやらかして抜けた後、何回最大ハウス使用権を賭けた代表戦仕掛けられたよ? ナメられっ放しはよくねぇよなぁ?」


 普通のクランハウスとは違い、各街の最大クランハウスは一度入手すればずっと維持できるわけではない。

 当然一つしかないのだから所有クランは他のクランからのそれを賭けての挑戦を受けることになる。

 ここしばらく『躍進』にそんな挑戦をするクランもいなかったのだが、リョウヤ達主力が抜けたのが知れ渡ると、挑戦するクランが一気に増えた。


「ふっ……お前ら……そうだよな。よーし、俺も腹を括るぜ。やってやろうじゃねーか! 攻略組はとにかく攻めるぞ!」


「「おおーー!!」」


 吹っ切れた武蔵の鼓舞に『躍進』は最高潮に達した。

 ここから武蔵率いる攻略組は探索組を置いて一気に進み始める。

 初日の到達階層は地下38階。二位のクランに5階層の差をつけるダントツのトップに立った。

 しかも探索組ですら地下36階到達と、『躍進』の力を見せつけた一日となった。

お読みいただきありがとうございます。


圧倒的なマホ達との差、どう変わっていくでしょうか。


雷の件ですが、どうにか修正しようと考えていますが今は時間が取れません。

4話くらい修正が必要なので出来上がってからまとめて編集することになると思います。

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