第78話 無限ダンジョンイベント攻略 その⑦ ボスの挙動編
地下10階、いざボス戦というところでリョウヤが足を止める。
「どうしたの? リョウヤ」
「あれ、脇道じゃないか? 行くだろ?」
入り口側、ボス部屋を向いて斜め後ろに脇道があることに気付いたようだ。
「当然っしょ!」
リョウヤの確認に、誰よりも早くヘヴンリーが返事をする。
「うん、行ってみよー!」
マホも異論はなく、全員一旦引き返すような形で進んでいく。
「銀……じゃなさそうね。鉄というところかしら」
その奥にあったのは、シルバーよりも燻んだ色の宝箱。
「カケラとか入ってそーやん?」
「ふむ……。少し試したいことがあるので開けるのはちょっと待ってもらえますか?」
スマイルの予想を聞いて、ハートがある提案をする。
「どうしたの?」
「いえ、ある程度離れても入手できるのか試しておこうかと」
宝箱は基本的にパーティの全員が中身を入手できる。
ただ今回のイベントはクランがそのままパーティとなっているので普通とは違うかもしれない。
ハートが確認したかったのはそこだった。
「じゃーみんな並んでー」
言い出しっぺのハートが自発的にボス部屋前まで戻って、そこから間隔を空けてメンバーが立つ。
「マホっちいいよー」
ヘヴンリーからの合図があってマホは宝箱を開ける。
「やっぱりカケラだー!」
マホは氷のカケラを入手する。そしてそれは各メンバーも同じだ。
「なるほど、ここまで離れて手に入ってしまうのは……少々申し訳ないですねぇ」
「そう思うなら戦闘に参加しなやぁ」
撮影だけで入手してしまうことに引け目を感じていたらしいハートにスマイルがからかうように言う。
「そんなこと思ってないくせにー」
そんなスマイルをヘヴンリーがイジる。
「いいんでしょうか?」
ハートは改めて確認を入れる。
「あんな凝った動画作ってくれるの、どんだけ手間暇かかってるか考えたらあーしは文句ないよー」
「うん。むしろちゃんと持っていってねって思うわ」
ヘヴンリーもティエラもハートは力を入れるところが違うだけで真剣に楽しんでいるのはわかっていた。
もちろん他のメンバーも同様だ。
「どうせ土日以外は別行動するんやから、そん時くらい戦うやろ? なら全然かまへん」
深夜組は多くて四人。それでハートだけ撮影というわけにはいかないだろう。
スマイルはそのこともちゃんと考えに入っていた。
「そうですね、わかりました。有り難く頂戴します」
そう言ったハートは今までにない嬉しそうな顔をしていた。
「さー、今度こそボス戦だよー!」
気合いを入れてマホからボス部屋へと入っていく。
カウントダウンの後、扉は閉じるが、やはりボス自体は動かない。
「またあーしがやっていい?」
「様子見だからな?」
「わかってるって!」
そう言って大剣を構え、横薙ぎに斬る。これまではそれで終わっていた。
「おっ、残った!」
初めて300というダメージが表示されるが、1/3程度HPを削っただけで、ボスの氷のエレメントは健在だ。
そしてヘヴンリーの反応と同時にエレメントが青白く光ると、ボスのクリスタルから部屋全体に向けて無数の氷弾が吹き出してくる。
「えっ、ちょっ! 広っ!」
氷のエレメントを中心に360°死角なし。回避不能、武器ガード不能の氷弾が部屋の端まで届く。
たださすがにまだこちらへのダメージはほとんどないようだ。
「これ……カウンター? 攻撃するたびにこんなことされてたら堪んないんだけど……」
ティエラも思わず弱音が溢れる。
「微妙に時間差だったな。総攻撃で一気に仕留めろということか?」
「リョ、リョウヤさん、合わせてみましょうか?」
リョウヤの予想にレイが手を挙げる。
「そうだな。今のヘヴンリーくらいの攻撃、いけるか? 少し残したい」
「は、はい。大丈夫です」
倒し切らず、同時攻撃をしたその後のボスの攻撃がどうなるのかを確認すべく、二人武器を取る。
「いくぞ! せーのっ!」
「はいっ」
リョウヤのタイミングに合わせてレイが槍を振るう。
どちらも300のダメージを与え、氷のエレメントのHPが僅かに残る。
そして反撃の氷弾が一度だけ放たれる。
「ちゃんと見たで! カウンターまでに当てれば反撃は一回だけや!」
「どれだけ攻撃してもネームは緑のままですね。向こうから攻撃してくることは無さそうです」
それを後方から観察していたスマイルとハートが報告する。
「なるほどな。これは前衛だらけのクランは大変だろうな」
「だね。前衛が完全に囲むと後ろも撃てないし……多ければ楽ってわけでもなさそう」
リョウヤとティエラが予想し合う。
「かといって、少ないクランだと倒し切れずに反撃を受けてしまいますね」
レイも考察モードに入り、口調が変わる。
「じゃーマホっち、最後の検証! 最後の一撃にFA来るかの確認よろしくぅ!」
「えっと、倒した時に反撃してくるか、ってこと?」
「そーそー。たまにいるんだよ。このゲームじゃ見たことないけど」
「わかった。いくよー! ファイアアロー!」
マホの放った炎の矢が氷のエレメントを貫くと、これまでと同じように砕けて終わる。
「さすがになかったな。ただ必中の全体攻撃か。思ったより厄介そうだ」
「リョウヤの盾でもダメそう?」
リョウヤの盾は普通の盾とは違うシリーズ装備で、前回イベントでも青龍のブレスを受け止めることができていた。
「どうだろうな。まともにダメージが出てみないと軽減してるのかもわからん」
リョウヤも盾での防御を試みてはいたものの、目に見えるダメージがほとんどなかったのでその違いはわからなかった。
「ほんなら本番やってみてからやな。別に何回失敗してもええんや。試しながらいこーや」
「スマぷーさん、参謀らしくなってきましたね」
ハートの言葉にドヤ顔で胸を張って返すスマイル。
そしてマホがドロップを確認して、続いて現れた水晶玉に触れる。
「お疲れ様ー! ここからが本番だよー! 今戻ったら地下11階からになるからねー! しっかり準備してから挑んでね!」
イベントチュートリアルは終わりだとダンジョンマスターが告げる。
どうやら運営は一度戻ることを推奨しているらしい。
「どうしよっか。サングラス先に買ってきた方がいいかな」
ヘヴンリーは光対策を提案する。
「そうだな。序盤の光なら苦戦はしないだろうが、準備するに越したことはない」
リョウヤも同調する。といっても、リョウヤは装備不可だが。
「じゃあ一旦休憩! 30分くらいでいい?」
シリーズ装備組はその間休もうとマホが宣言する。
「ええ。それなら買ってきて休む時間もあるわ」
「ほな、戻るでー」
そう言ってスマイルがまず水晶玉に触れてクランハウスに帰還する。
「戻るのは個別だよね」
「多分ね。マホやってみて」
マホも戻ることを選択すると、先に進む時とは違いマホだけが消える。
「色々試せてよかったねー」
「本番楽しみっス!」
ヘヴンリーにアークも戻っていく。
そしてクランハウスに全員揃う。
「それじゃ、今14時過ぎだから……15時再開ってことで」
10階層とはいえほぼ一本道だったのでそこまで時間は経っていなかった。
「おっけー! んじゃ、ティエりんにスマぷー行こっか」
再集合時間を決めて、買い物組三人は外に出ていき、リョウヤにレイとアークはそのままハウスに、そしてマホとハートは一旦ログアウトしていった。
お読みいただきありがとうございます。
仕事の都合で申し訳ありませんが、またしばらく毎日の更新は難しくなりそうです。
可能な限り書いていきますのでよろしくお願いします。
10/24 雷フロアの抜け修正に伴い階層内容を変更しました。




