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第77話 無限ダンジョンイベント攻略 その⑥ 動作確認編

 地下10階はまた氷のフロアだった。


「うわっ、氷かぁー」


「まぁ、(コレ)だけ足場が変化してるからな。今のうちに慣れておけということだろう」


 ヘヴンリーとは対照的にリョウヤは好意的に受け止める。

 実際全体の中でも氷のフロアがダントツに難易度が高く、運営もそれを考慮してこの階層の属性を選んでいた。


「やっぱり投げるのは無理っスね。スパイクが欲しいっス」


「それなー。野球のやなくても冬山用の登山靴とか実装してほしいわー」


 それさえあれば氷の上でも踏ん張りが利くようになるのに、と二人は存在しない装備の要望を口にする。


 そしてそれは多くのプレイヤーが同じことを考えたらしく、プレイ中に愚痴ったり、中には運営に直接懇願した者もいて、結果本当にラストスパート用アイテムとして最終週に実装されることになる。



「わっ、犬が動いてる!」


 結果的に一番遅かったスマイルのペースに合わせて進んでいると、これまでよりやや手前でアイスドッグに遭遇した。

 全身氷のアイスドッグは氷の上でも平気そうに歩いている。


「あー、戦闘の動きもやってみろってことねー」


 “攻撃の“動きと解釈したヘヴンリーが武器を構えるが、マホ達を認識したアイスドッグは中央のティエラ目掛けて一気に跳躍する。


「おっと、そうはいかん」


 それをリョウヤが前に出て盾で受け止める。

 それでも氷の上ではいつも通りとはいかずティエラの前まで滑って後退させられた。


「リョウヤ、ありがと。でも防御も大変なフロアね」


 ティエラは庇われた礼を言いつつこのフロアの面倒さを再認識する。


「俺の役目……と言いたいところだが、ここは避けた方が良さそうだな」


 リョウヤも同じ認識をしたようだ。


「あっ! 頭が!」


 話をしている間にアイスドッグは次の行動に移っていて、リョウヤに噛みつこうと頭を巨大化させていた。


「うっわ、キモっ!」


 そのアンバランスさにヘヴンリーは少し引く。


「させません!」


 そして氷の上でも問題なく動けるレイが噛みつきの前に青龍偃月刀で斬り伏せる。


「さすがにまだすぐ倒せるみたいだな。ダメージも受けた感じなかったからもう少しパターンを見たかったところだが……」


「あっ、すみません……つい……」


 リョウヤは今までの感覚でつい思ったことを口にしてしまったが、レイにはダメ出しのように聞こえてしまった。


「ああいや、そういうつもりじゃないんだ。むしろ俺が攻撃されそうだったから動いてくれたんだよな。ありがとうレイちゃん」


「まぁ、普通ああなったら咄嗟に動いちゃうもんねー。レーちゃんがやらなかったらあーしがやってたよ」


「ふふっ、あたしも」


 リョウヤが慌てて訂正して礼を言うと、ヘヴンリーとティエラもフォローする。

 ティエラは実際に弓を構えていて、それを下ろす。


「じゃー次はじっくり様子見っていうことで!」


 マホがそうまとめて次へと進む。

 ダンジョン自体はここまで同様一本道で戦闘が始まる為かやや広くなっていた。


 そして人型のアイスマンとの戦闘。

 こちらもそのままでの殴打から手を色々な武器のように間合い(リーチ)も変化させて攻撃を繰り出してくる。


「なるほど。きっと他の属性もこんな感じね」


 攻撃を受けるのを前衛三人に任せて観察していたティエラは一通りパターンを確認すると矢を放ってアイスマンを倒す。


 次はアイスバード。


「やっぱり飛んでるコイツが一番厄介だねー」


 アイスバードもそのまま突撃してきたり、足の爪を伸ばしてきたりするが、飛んでいる分回避が困難だった。

 しかも口から氷塊を飛ばしてくる攻撃や、伸ばした足の爪を射出してきたりと前の二体よりもパターンが多い。


「ペット・ショップかよ!」


「リョウヤちん、さすがにみんな知らないって」


 リョウヤが連想したものを言うが、そう返したヘヴンリー以外には伝わらなかったようだ。


「ハートくらいは知ってるかと思ったがな……。ヘヴンリーがわかった方が意外だった」


「あーしはけっこー少年マンガ好きだからねー」


 そんなやりとりをしていると、


「ねぇ、二人でイチャついてないで先行くわよ」


「あとでなんのネタなんか教えてなー」


 ティエラが二人の横を抜けてレイと進み始め、その後にやっと氷の移動に慣れてきたスマイルが続いた。


「あっ、もうティエりんてば。これくらいでイチャついてるんならみんなイチャついてるよねぇ?」


「ふっ、確かにな」


「何の話?」


「みんな仲良しだよねーって話」


 話が見えないマホにヘヴンリーはそう答える。


「このクラン楽しいっス! みんな頼もしいし……負けられないって思うっス!」


「そうそう! だから私も楽しいんだー!」


 アークは入りたての『気まぐれ』に早くも愛着を感じ始めている。


「ふふ。あーしも楽しいよー」


「僕も見ていて楽しませてもらってますよ」


 マホはもちろん、ヘヴンリーやハートも気持ちは同じだ。



 そしてボス部屋の手前、ガーゴイルの前にやってきた。


「やっぱりコイツも動くんやなー」


 スマイルの言う通り、これまで扉の両側に鎮座しているだけだったガーゴイルも立ち上がって向かってくる。


 素手に見えたが、動き始めると氷の剣を作り出して斬りかかり、目からはその色と同じやや青みがかった白いビームを放ってくる。

 翼は飛翔というより跳躍力を上げる為のようで、高く飛び上がって天井を蹴って加速するように迫ってくる。


「下が凍ってなければなんてことないが……厄介だな」


 その機動力にはリョウヤも手を焼く。


「でも上からは直線的っス! これなら!」


 前に投げるよりは踏ん張りが利くようで、ガーゴイルの一体をアークが仕留める。


「そうね。このパターンならあたしもっ!」


 もう一体も飛び上がったタイミングを狙ってティエラが射抜く。


「なるほどー。次は私も狙ってみる!」


 それを見たマホもいけそうだと張り切る。


「ほな次のガーゴイルはウチらでやっつけたろー!」


 マホと同じ杖を持つスマイルも名乗り出て、次の階の攻撃役が決まった。


「次から本番でしょうが……その前にボス部屋ですよ」


 逸る二人を後ろからハートが引き締める。


「ボ、ボスも動きますかね……?」


「どうだろうねー。ノンアクティブだから攻撃してみないとわかんないけど……」


 ボスがどんな行動をとるのか、どんな攻撃をしてくるのか、それぞれ期待を胸にボス部屋へ入ろうとした時、リョウヤがはたと足を止めた。

お読みいただきありがとうございます。


一応現代にフルダイブがあるイメージで書いてますが、リョウヤやヘヴンリーの年でペット・ショップは知らない気がします。。。


※10/24 雷フロアの抜け修正に伴い階層数の変更と展開の一部を修正。

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