表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
38/156

第38話 クラン結成!

 ティエラからもう一人来ると言われたそのすぐ後にマホの後ろにリョウヤが現れた。


「おっ、リョウヤちんナイスタイミングー♪」


「えっ?」


「やぁ、久しぶり。マホちゃん」


 ヘヴンリーの声に反応して振り向くと、リョウヤが手を挙げて微笑んでいた。


「リョウヤさん! お久しぶりです! でもどうして……?」


「話したいことがあってね。ここじゃなんだし、歩きながら話そうか」


 噴水前にはマホのように待ち合わせするプレイヤーやログインしてくるプレイヤーもいる。

 さすがにMVPとして名前が出たばかりのマホやリョウヤは特に注目を集めていた。



「ってことでハート君も来るー?」


「はは、バレましたか」


 そんなプレイヤーに紛れて様子を窺っていたハートにヘヴンリーが気付いて声を掛ける。

 ハートは相変わらずやる気の見られない装備をしている。


「多分用件は一緒だと思うよ」


「えっ? 皆さんは『躍進』の……」


 ティエラの言葉にハートは耳を疑う。


「それも含めて、な」


「わかりました。ご一緒させてください!」


 ハートを加えて5人、ツインのクランハウスが立ち並ぶエリアへ歩き始める。

 そちらの方はほとんどのプレイヤーがハウス内におり、人通りも少ない。それに、今回集まったメンバーの目的にも合う。


「それで、君は? 他の3人とは面識があるみたいだけど」


「はい。ええと……リョウヤさん、初めまして。僕はプレイ動画を投稿しているハートといいます。今回のイベントはここに参加していました」


「なるほど。よろしくな」


 初対面になるリョウヤとハートが歩きながら挨拶を交わす。

 ハートは下手には出ているが、トッププレイヤーのリョウヤに対して特に緊張する素振りはない。

 動画のことで紅蓮に申し込んで来たときもそうだった。


「ハート君、あの動画ありがとねー! あーしの必殺ワザめっちゃカッコよかったよー」


「あたしのもキマってた。嬉しい」


「あ、あの……私はよくわからなくて……ごめんなさい、見てないです……」


 二人が……というよりリョウヤがハートを知ったところで、ヘヴンリーとティエラは初日の動画の礼を言うが、マホはその動画がどこに投稿されているのかすらわかっていなかった。


「いえいえ、お気になさらず。それにお二人だけでも喜んで頂けて既に満足してますから」


「あれ? もしかしてマホっちって機械オンチ?」


「うん……実はよくわかんない……」


「じゃー、今度編集済みの動画見せてあげてよ。マホっちもすっごいカッコよかったしさ」


 あの動画を見れないのはもったいないとヘヴンリーが気を利かせる。


「それはもちろん。ですがまだ……」


「おっと、そうだった。人もいなくなってきたし、本題に入ろっか」


「そうだな」


 既にクラン結成が決まったかのような話をしてしまっていて、ハートが戸惑ったことでヘヴンリーがそのことを思い出す。

 そして、周囲を見てもう大丈夫だろうと切り出した。


「マホっち、ハート君。あーし達は『躍進』を抜けてきたんだー」


「ええっ!? なんで!?」


「なるほど。そういうことでしたか」


 ヘヴンリーの告白に対照的な反応をする二人。


「あまり驚かないんだな」


「ええ。僕も()()()()ですので」


「えっ? えっ? どういうことですか?」


 リョウヤ達が言うまでは言うべきではないと、中身を省いた言い回しをするハートにマホの混乱はより強くなる。

 歩いていた足も止まってしまった。


「マホ、あたし達はね、マホと一緒にクランを立ち上げたいと思ってるの」


「マホちゃんと一緒にこのゲームを楽しみたいと思ってね。だから『躍進』を抜けてきた」


「嘘……」


 信じられない言葉が次々と聞こえてくる現実を、あまりに突然すぎて受け入れきれないマホ。


「嘘じゃないよー。一緒に朱雀と戦っててさ、また同じようなイベントがあったら、次はホントの仲間としてやりたいなーって思ったんだ」


 そんなマホの肩を抱きながらヘヴンリーが素直な気持ちを伝える。


「僕も似たようなものです。あの時も言いましたが、お三方のプレイに惚れました! そしてもっと近くで動画を撮りたい、と。ですが、ティエラさん、ヘヴンリーさんは『躍進』のメンバー。ですのでマホさんに、と声を掛けるつもりだったんですが……」


 ハートも改めてあの時感じたことを伝えてくる。


「ええっと……」


 マホは嬉しく思いつつも受け入れていいものかと判断に迷っていた。

 ハートは別としても、リョウヤ達3人は攻略組クランのメンバーだったのだ。それを初心者の自分に付き合わせるということに気が引けた。


「マホっち」


「マホ」


「マホちゃん」


「マホさん」


 それぞれがマホの名を呼び、見つめて視線を合わせては頷いていく。


「ありがとう……私がこんな……嬉しい。みんな……いいの?」


 もう疑いようがなかったが、それでももう一度確認をする。


「モチ♪」


「あたしがそうしたいの」


「俺もだ」


「またカッコいい姿を撮らせてください。クランメンバーとして!」


 それぞれの答えにマホは決心した。


「わかった! みんなよろしくお願いします!」


 しっかりと答え、頭を下げる。


「やったね! ほら、頭上げて! 仲間なんだから気楽にいこー」


「ヘヴンリーもいいこと言う。ほら、リョウヤ達にも普通に話してみて」


 ヘヴンリーとティエラが両サイドからマホを起こして、男性二人に向かせる。


「ええっ!? いきなり!?」


「俺は構わないよ。ヘヴンリーじゃないが気楽に行こう」


「わ、わかった……これでいい?」


 答えつつヘヴンリーをチラリと見て確認する。


「オッケーオッケー。次はハート君ね」


「僕も構いませんよ。逆に僕はこれが普通なのでよろしくお願いしますね」


「えっ、ずるい……」


「ふふっ、マホも「普通」にすればいいのよ」


 敬語がデフォルトだと言うハートに一瞬焦るが、ティエラのフォローで落ち着く。


「わかった。よろしく、ハートさん」


「ハート君はどう呼ぼうかなー。ティエりん、何がいいと思う?」


「えっ? その呼び方──」


「そうね、紅蓮がいないから“ちゃん“はどう?」


「あれっ?」


 以前聞いたときは嫌そうにしていた「ティエりん」を普通に受け入れているティエラを見て、マホの頭に疑問符が浮かぶ。


「いいね! じゃあ……ハーちゃんだ!」


「ハーちゃん……くくっ……そんな風に呼ばれたのは初めてですよ」


 不意を突かれたハートは腹を抱えて笑い出しつつも、意外と気に入ったらしい。


「ねぇマホ。マホにもティエりんって呼んで欲しいわ」


「いいの?」


「マホが可愛いって言ってくれたの、嬉しかったのよ? こんな歳でもね」


「わかった! ティエりん!」


「ありがと」


 マホからそう呼ばれたことで今までになくティエラの顔が緩む。


「ティエりん、可っ愛いー!」


「ちょ、見ないで!」


 ヘヴンリーにからかわれて慌てて顔を隠す。



「ふぅ……やれやれ。ハート、君が来てくれて良かったよ」


「ええ、同感です。リョウヤさんがいてくれて助かりました」


 はしゃぐ女性陣を少し離れて見ていたリョウヤとハートはガッチリと握手を交わすのだった。



「それじゃ、さすがにいきなり人数は増えないだろうから5人のハウスでいいな?」


 女性陣の熱が収まったのを見計らってリョウヤが提案する。

 既に女性陣がはしゃぐ間に5人用のハウスは見つけていた。


「どーせすぐトライアングルに行くっしょ。引っ越しも追加料金だけで済むし、あーしはそれでいいよー」


 クランを立ち上げてしまえば、規模拡大には次のクランハウスとの差額だけ払えばいい。

 各街最大のハウス以外は一人当たり10000Gで固定なので、人数ちょうどのハウスを買うのが一番揉めにくい。

 もちろん、リーダーが全額払って広いハウスを買い、その後に加入者から料金を取る場合もある。


「まずは名前を決めないとね」


「名前?」


「そうだ。クラン名。リーダー、何か希望はあるかい?」


「へ? 私は……特に……って、リーダー!?」


 予想もしていなかった一言に反応が遅れるマホ。キョロキョロと他のメンバーを見るが、それは全員共通の認識だったらしい。


「もちろん、マホっちがリーダーだよー。マホっちの為のクランだもん」


「え? えええええーー!?」


 それはマホがゲームを始めてからの一番大きな声だった。



「落ち着いた?」


 激しく動揺したマホをティエラが支えて声を掛ける。


「う、うん。ありがとティエりん……」


「あたし達はマホに合わせてプレイすることになるからね。今後もしメンバーが増えても、それがリーダーの方針だっていう方がやりやすいでしょ?」


「そーそー。マホっちの気まぐれに合わせてプレイ。それがわかってたら嫌だって言う人はまず入らないだろーしね」


「まぁ、要はマホちゃんは今まで通りプレイすればいいってことだな。俺たちはそれについていきたいから来たんだ」


「そうですね。そうしたいと思う人が集まるクラン。ならリーダーはマホさんしかありえません」


 全員からここまで説得されてはマホも引けなかった。


「わ、わかった。でも、クラン名はみんなで考えよ……?」


 決めていいと言われたとしても思いつかないのだから仕方ない。


「うーん、何がいいかねー?」


「ヘヴンリーがさっき言ったじゃない。『マホの気まぐれ』って」


 頭を捻るヘヴンリーにティエラが思い付いた言葉を出してくる。


「なるほど、わかりやすい」


「いいんじゃないですか?」


「いやいや、私の名前が入るのはちょっと……恥ずかしいと言うか……」


 同意する男性二人を慌ててマホは止める。


「じゃー、マホの名前抜いて『気まぐれ』!」


「そ、それなら」


「うん、意義なし」


「俺たちは『気まぐれ』。いいんじゃないか?」


「ええ、のんびりした感じが良いクラン名だと思いますよ」


 そんなわけでクラン名は『気まぐれ』に決まった。



「じゃあ、まずマホちゃんが扉に触れて」


「は、はい!」


 マホが言われるまま扉に触れると、クラン結成ウインドウが現れる。

 50000Gという金額と支払い方法の選択肢が表示されている。


「『複数人入金』と人数は『5人』を選んで、まず自分の分を入金して」


「えっと……10000Gですね」


 自分の分の支払いが済むと、次の人へと画面が進む。

 それを5人分それぞれが入金したところでクラン名入力になる。


「『気まぐれ』、と」


 それも終わると「入金したプレイヤーをそのままクランメンバーに登録しますか?」と表示が出る。

 これはクラン結成費用を他プレイヤーから出してもらうことが可能な為存在する確認だが、そのシステムが利用されたことは一度もなかった。




「これでみんな『気まぐれ』のメンバー。改めてよろしく!」


 今度は頭は下げず、開いた右手を挙げる。


「よっろしくー!」


 先陣を切ってヘヴンリーがそのマホにパンッとハイタッチをしてハウスに入る。


「よろしくね」


 ティエラもすぐに続く。


「はは。よろしく」


 その行為に懐かしさを感じながらリョウヤも中へ。


「よろしくお願いしますね」


 最後にハートがポンと優しくハイタッチ。


「ふふっ。まさかこんなことになるなんて……みんなありがとう」


 そう呟いて、マホもハウスに入っていった。

お読みいただきありがとうございます。


普通に考えてソロでツインに来てるハート君は強いはず。

ということで、ハート君メインの回はそのうち書きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ