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第37話 クラン『躍進』の別れ方

ティエラとヘヴンリーがメインの話になります。

 これはティエラとヘヴンリーがマホと別れてから再び合流するまでの話。



「よーし、ティエラ行こっか」


「ええ。いい結果で良かったわ。これならみんな納得してくれるでしょうね」


「うんうん。あーしも3日目MVP獲れたしー。マホっちはクラン入ってないから『躍進』の分けっこー稼げたよね」


 そう言って二人はクワトロへ飛び、クランハウスに向かう。



「ん? なんだわざわざ自慢しに来たのか?」


「まさかマホちゃんがMVP獲るとはな」


 二人がクランハウスに入ると、何人かのメンバーが集まっていて、話をしていた武蔵とリョウヤに近付くと嫌味たらしくそう言われる。

 二人ともティエラ達が来るとは思っていなかったようだ。


「やっほー。ムサしゃん、リョウヤちん」


「ふふ、もちろん貴方達に勝った自慢()するわよ」


 二人の嫌味も意に介さずサラッと受け流し、いつものテンションで挨拶をするヘヴンリーと、ドヤ顔を見せるティエラ。


「ふっ、なるほど」


 その反応にリョウヤの方は思い当たることがあるようだ。


「なんだ? まさか二人も抜けるなんて言う気か?」


 別の要件を匂わせたことと、リョウヤの言葉に武蔵も察するが、確信はなかったようだ。


「へへ。ムサしゃん当ったりー」


「急でごめんね。でも一緒にイベントやって……リョウヤの気持ちがわかった」


「だからじゃないけど、あーし達が『躍進』のライバルになれるって見せつけたつもり!」


「うん。どう? あたし達は武蔵やリョウヤがいるクワトロに勝ったんだよ。燃えてこない?」


 二人は武蔵を挑発するように言葉を繋ぐ。

 ツインが二位とわかった時のティエラのガッツポーズはこのことがあったからのようだ。是が非でもクワトロより上に立ちたかったという思いがあの喜びように繋がっていた。


「ったく……。どんだけ俺の性格掴んでんだか」


 そう言いながら嬉しそうに頭を掻く武蔵。


「どちらにせようちは「去る者追わず」だろう?」


 後押しとばかりにリョウヤも口を出す。


「わーってるよ。みんなも聞いたか? 本格的に手強いライバルになりそうだぜ!」


 武蔵はティエラとヘヴンリーの脱退を認め、クランハウス中に声を響かせる。

 その声に呼応するように次々とクランメンバーがそれぞれの意見を言ってくるが、その中には二人やリョウヤを非難するようなものは一切なかった。

 むしろ好意的というか、挑発的なものが多い。


「早くクラン作れよ! 差を見せつけてやるぜ?」

「次のイベントはクラン戦だといいな」

「確かに。直接叩いてやりたいもんな」

「精々人数集めとけよ?」



 そんな“元仲間“となるメンバーが頼もしさから手強さ、厄介さに変わったのを感じる三人。

 だが、この場にいる全員が心躍り、血が沸き立つような感覚を覚え笑っていた。


「まぁ、すぐにどうこうないだろうし、そのうちここまで追いついてくるだろう」


「だな。ま、一度縁があった仲だ。情報交換くらいはしてやる。何かあったら声掛けてくれよ」


 武蔵はリョウヤの言葉にそう返しながら右手を差し出す。


「ああ。その時はよろしくな」


 リョウヤもその手を取り、改めて握手を交わした。


「そんじゃムサしゃん、まったねー」


 ヘヴンリーとは拳を出し合い、コツンと合わせる。


「久しぶりに武蔵と競争だね」


「お前が惚れた相手は俺とどっちが上かな?」


 ティエラと武蔵は言葉と視線を投げ合った。


 それぞれがこれまでの付き合い方がわかる別れを済ませると、ちょうどそのタイミングでマホからのメッセージがヘヴンリーに届く。


『ヘヴンリー、戻ったよ』


「おかえりー。すぐ行くから噴水のトコで待っててー」


『わかったー』



「ってことで行くね! 今までありがとう」


 マホのと通話を終えて、真面目な顔でお礼を言うヘヴンリー。


「はっ、らしくねーよ。お前らしく言ったらどうだ?」


「もー! あーしだって社会人なんだからこーゆー時くらいちゃんとするよー?」


 茶化してくる武蔵に、少しだけ名残惜しそうにそう言った。


「貴方はそうやっていつも通りバカっぽくしてればいいの」


 ティエラはそんな武蔵の言うヘヴンリーの普段の姿を肯定する。


「ティエりんだっていつも通りじゃないじゃん」


 「貴方」なんて呼び方をされたのは出会った頃以来だった。そのことにティエラもこの別れに名残があったと気付いたヘヴンリーは敢えて一度拒否された「ティエりん」と呼んだ。


「その呼び方は……ううん、そうね。これからはそれでいいわ」


 自分でも無意識だったらしいティエラも、ヘヴンリーのおかげで気付けた。それを断ち切る意味でも愛称で呼ばれることを受け入れるのだった。


「へへへ。ティエりん♪」


「何よ。気持ち悪い」


 ティエラの言葉と表情がまるで一致していない。


「ふっ、こんな変わるもんかね。俺もその子に会えるのを楽しみにしておくぜ」


「なんなら会いに来ればいい。どうせ暇だろう?」


 リョウヤは武蔵が絶対にそうしないとわかって言っている。


「暇? 俺はお前と違ってレジェンドレアをまだ持ってねーんだよ!」


 それを手に入れるまでダンジョンに籠り続けると言わんばかりだ。


「なら最後に情報……というかまだ予想の域を出ないが、餞別だ。おそらくレジェンドレアは通常の宝箱の抽選テーブルには入っていない」


「どういうことだ?」


「そこから先は自分で、な」


 そう言ってリョウヤはクランハウスの入り口へ向かい、ティエラとヘヴンリーも続く。


「ちっ。またな」


「ああ」


 最後は振り返ることなくクランハウスを出た。

 そして、外側から入り口に操作をしてクラン脱退を完了する。


「これで終わり、と」


「ヘヴンリー、ありがとう。スッキリお別れできたよ」


 ティエラは先程のやりとりのことを素直にお礼を言った。


「いーって。あーしも心置きなくティエりんって呼べるし?」


「実はマホから可愛いって言われてアリかなって思ってたのよ」


「にしし。実際可愛いからねー」


「ありがと」


 二人はお互いに絆が深まったのを感じていた。そしてそれもマホのおかげだと……。


「ムサシじゃないが、ここまで変わるなんてな。やはりマホちゃんの影響か?」


「だねー」


「リョウヤも変わった気がするよ?」


 少なくともティエラの知るリョウヤは他人を理由に行動することはなかった。


「そうか? ……まぁ、そうかもしれないな」


 リョウヤも思い当たる節がないわけではなさそうだ。




「じゃ、あーし()はホームポイントが向こうだからログアウトしてすぐ戻るよ」


「わかった。俺は噴水から飛ぶ。また後でな」


「うん。あ、リョウヤ」


 ログアウトしようと操作をしかけて手を止めたティエラがリョウヤを呼び止める。


「ん? なんだ?」


「改めてよろしく」


「ああ、よろしく」


「よろしくねー」


 これからマホと一緒にクランを作ろうとする新たな仲間として──というかまずその提案をするところからなのだが──結束を確かめ合うのだった。


 そしてティエラとヘヴンリーがログアウトし、リョウヤは噴水へ向かって歩き出した。

お読みいただきありがとうございます。


クランは結成しますがマホは基本的にソロのままになります。

理由はやはりワード被りの件ですね。

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