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第33話 GWイベント その⑤ 切り札編

 GWイベント2日目、前日と同じ時間にマホはログインした。

 噴水前に出ると、目の前に情報ウィンドウが現れる。

 それはイベントの中間発表だった。


「ツインは二位! MVPは……あ、これはないのか……ツインMVPはティエラ! 凄かったもんね」


 そこに載っていたのは各街の順位とそれぞれのMVP。ちなみにクワトロのMVPはリョウヤだったが、街の順位は四位と最下位だ。

 ただし、詳細なダメージ数等は載っておらず、どのくらい差があるのかはわからない。全体のMVPも非公開のようだ。

 なお、その他の街は一位がトライアングルでMVPはスマイル、三位がオリジンでMVPはレイとなっていたが、MVPの両者共に知り合いでもなかった為、マホはサラッと見てスルーしていた。


「あっ、マホっちいた!」


 噴水前は既にイベント参加プレイヤーでごった返していたが、ヘヴンリーはマホを見つけて寄ってくる。


「おはようヘヴンリー」


「おっすー! ティエラは……まだみたい。マホっちも見たっしょ? 早く煽ってやりたいよねー」


 ヘヴンリーはフレンドリストからティエラがまだログインしていないことを確認すると、嬉しそうにそう言う。

 ティエラがこの街のMVPということをヘヴンリーも見たようだ。


「ええっ? 「おめでとう」じゃないの?」


 表情と言葉が合わないことに困惑するマホ。


「いやいやー、まだ始まったばかりよ? 暫定MVP様を煽らないでどうすんの!」


 ヘヴンリーは更にイキイキと目を輝かせる。


「そ、そういうもの?」


「だってマホっちもMVP狙ってるっしょ? 宣戦布告してもいーんよ?」


「いやー……私はイベント初めてだから楽しめればそれでいいかな」


「ノンノン、このゲームで楽しむって言ったらダメージを与えることだよ。なら、たくさんダメージを与えた証でもあるMVPを狙ってかなきゃ!」


「なるほど……頑張る!」


 ヘヴンリーに説かれて納得したマホは拳を握る。


「そんじゃ、紅蓮ちゃんはいるみたいだからギルド行ってみよっか」


 ヘヴンリーと二人ギルドへ向かい、中に入ると昨日と同じ席に紅蓮が座っていた。

 挨拶を済ませて並んで紅蓮の前の席に着く。そのまま雑談していると、ティエラもやってきた。


「お、来たなMVP」


 ヘヴンリーよりも先に紅蓮が煽る。


「ふふふ、おはようみんな」


 ティエラもそれは予想していたようで、むしろドヤ顔を返す。


「あっ、開き直ってる! ちぇー。次はあーしが載るもんね!」


「受けて立つわよ」


 効果が薄いとわかりヘヴンリーは煽るのをやめたようだ。


「ま、とりあえずそれは置いといて、今日の作戦なんだが……」


「ん? どしたん?」


「歯切れ悪いね」


 言い淀む紅蓮にヘヴンリーとティエラの二人が首を傾げる。


「マホちゃんが出るのは俺たちの時だけにしてほしいってな、第一陣と第三陣のクランから言われた。もちろん強制じゃないけどな。基本はマホちゃんの自由ってことは納得してもらってる」


「どういうことなの?」


 昨日自分が役立ったという自負は多少なりともあるつもりだ。だから今日も張り切ってプレイするつもりで来ていた。

 それが要らないと言われたような気がして僅かに瞳に影が差す。


「まー、悔しいんじゃない?」


「悔しい?」


 そうじゃない、とヘヴンリーは言うがマホには伝わらなかったようだ。


「マホ頼りはよくないって言ったけど、向こうもわかってたってことだね」


「そういうことだ。特に第三陣はな。みんなマホちゃんに感謝してたぞ」


「そうだったんだ……」


 暗くなっていたマホの表情も和らぐ。


「とにかく今日は自力でなんとかしたいってさ。本当は被ダメのことも考えると多少マホちゃんに参加して欲しいとこではあるが」


「いえ、そういうことなら『躍進』のみんなと同じタイミングだけにします。ヘヴンリーやティエラと一緒に休憩すると思えばむしろ楽しみだし」


「お、嬉しいこと言ってくれるじゃーん」


「そうね、一緒に休憩しましょ」


 マホの一言にヘヴンリーもティエラもギュッと抱き付く。


「でだ、昨日の動画を見返して計算したんだが、朱雀のHPは1000万ちょうど。今朝クワトロにも集まって擦り合わせたんだが他も同じだったから間違いないだろう」


「え? 紅蓮さんもしかして徹夜?」


 どう考えても時間の計算が合わない。寝たとは到底思えなかった。


「ああ。だから今日も俺は戦力にはならん。まぁ、録画係の宿命だな。本格的な参加は明日からだ。とはいえ後ろから見させてもらうさ」


「大丈夫、今日は最初から全力でいくかんね! あーしがMVP抜き去るところしっかり見ててよ!」


「マホがいるなら火球の心配もいらない。ゆっくり見ていて」


 紅蓮の不参加宣言にも動じることなく力強く応える二人。

 そしてマホは。


「紅蓮さん、今日はアレやっていいんだよね?」


「おお、そうだったな。ただ継続ダメージが自分のダメージ判定になるかわかんないぞ?」


 それはマホがこのイベントの為に考えた魔法。昨日は継続ダメージが計算できないという理由から温存していたのだった。


「それはいいの。たくさんダメージが入ればいいんでしょ?」


 そう言ってヘヴンリーの方を見るマホ。


「だねー。自分のダメージになったらもうけもんってことで」


 マホが楽しもうとしていることを感じてヘヴンリーは嬉しそうにマホの頭にポンと手を乗せる。


「そんじゃ、俺は今日も連絡係をやろう。他の二人はもうパーティに入れてるから後はお前らだ」


「待って紅蓮。マホも入れちゃダメかな?」


「ティエラ名案! あーしは賛成だよ」


 紅蓮がティエラとヘヴンリーをパーティに招待しようとしたところでそんな提案をした。


「ちょっと待て、一応確認する」


 そう言って紅蓮は他のメンバーに確認を入れるが、すぐに快諾され、マホもこのパーティのメンバーとして参加することになった。


「よかった。今日はあたしもアレ使って前にいるからマホの詠唱聞き逃すところだった」


「おやおやー? パーティメニュー出しっぱでやるとかMVPの余裕ですかぁ?」


 ここぞとばかりにヘヴンリーが煽る。


「あら? じゃあヘヴンリーはメニュー閉じてていいわよ? 伝令役なら今日はあたしもできるし」


「うぐっ、ごめんって。あーしもマホの詠唱聞きたいー! 昨日は聞いてないんだからー!」


 ティエラの返しにたじたじになるヘヴンリーだった。


「あはは……そんな期待されると恥ずかしいよ……」


「大丈夫。マホちゃんの詠唱はカッコいい! 自信持ってけ! じゃあ、先行ってるぞ」


 照れるマホを勇気付けるようにそう言って、紅蓮は戦場に向かう。



「あのね、継続ダメージ中なんだけど……普通に攻撃できるか……試してみてくれる……?」


 紅蓮が出て行った後、マホは二人にお願いをした。

 そんなマホのもじもじした様子に二人の母性本能がくすぐられる。


「おっふ……。も、もちろん! どんな魔法なんだ?」


「紅蓮のいないところで言ったのは正解ね。あたしも当然手伝うわよ」


 二人はノーと言う気は毛頭ない。マホはその答えに表情を緩め、発動する魔法について伝えた。


「間違いなく朱雀に効くよねー、ソレ。攻撃できたら最高じゃん! 楽しみー」


「わかったわ。それじゃあ、あたし達が前に着いたらさっそく試してみましょ」


「うんっ! よろしくね!」



 それからしばらくはティエラが真上から見た朱雀の動きをパーティメンバーに伝えて、今日の動きを確認していた。

 そして──。


『そろそろ最後のループだ。ダンジョン前に来い』


 紅蓮の声を受けて第二陣が戦場へ向かう。


「やっぱ火球は止められなかった。ダメージを稼げるのはここだ。頼んだぞ!」


「おっけー! 素敵(ヘヴンリィ)を召しませ♪」


「任せて。広がれあたしの白い羽根(ホワイトフェザー)


 後方で待っていた紅蓮の激励にヘヴンリーとティエラが応えて移動手段の翼を出すと、前線へと向かっていく。



「よーし、じゃあマホっちやっちゃえー!」


 朱雀の下に着いたヘヴンリーが声を掛ける。


「いきなりやるのか?」


 紅蓮の問いかけにコクンと頷いてマホは杖を構える。


「我が魔法よ 暗闇の深海の圧をここに! ウォータープレス・ダークジャッジメント!!」


 マホが魔法を唱えると、朱雀を中心に大量の水が場を覆い、だんだんと集束していくと、中心が光の届かない闇となった──。

お読みいただきありがとうございます。


2日目が始まりました。

マホ無双をお楽しみいただければと思います。

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