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第21話 初めてのパーティを組んでみる

「それじゃあリョウヤさん、よろしくお願いします」


 GWイベントを翌週に控えた水曜日、マホは夕食を早めに済ませてセンブレにログインしていた。

 この日にしたのはいつも水曜日は宿題が少なく、先週も少し長めにプレイする時間を確保できていたからだった。

 月曜にリョウヤにそのことを伝え、実際に問題なかったので次の街への同行をお願いした。


「ああ。じゃあまずは噴水の指示男(シジオ)……っと、最初にシナリオイベントを起こした人に話しかけておいで」


 うっかり普段の呼び名を使ってしまうが、すぐに気付いて訂正する。


「ん? はい。何かあるんですか?」


 すぐに外に向かうと思っていたマホはその真意を聞いてみる。


「そのまま行っても問題ないんだけどね、話しておくとシナリオイベントがまた起きるんだ。その報酬がホームポイント移動無料券だから貰っておいて損はないよ」


「ホームポイント移動?」


 なんとなく語感からイメージはできていたが、念の為確認する。


「登録したホームポイント間は有料──10000Gでワープできるんだよ。報酬はその無料券10枚だから割とデカい」


「10万G分ですもんね!」


「うん。今回みたいなイベントの時に重宝するから取っておく人も多い。自分の相性のいい敵の出る街に行ったりするからね」


 過去のイベントでは単純に期間中の総ダメージを競う、なんてものもあった。そういう時、自分がダメージを与えやすい相手のところへ行くのは当然だが、その移動もホームポイント移動なら一瞬だ。


「わかりました。行ってきます!」


 二人で噴水までやってきて、マホは指示男に向かう。



「おお、お前さんか。西の森を通れるようにしてくれたらしいじゃないか。感謝するぞ。……なんだ、隣街に行くのか? なら向こうの噴水には必ず立ち寄れ。ここに戻りたいなら触れるだけでいい」


 次の街、ツインにも噴水があり、そこがホームポイントになるようだ。


「わかった!」


 そしてシナリオイベントの内容が表示される。

 今回は「新たなホームポイントに触れよう」という一項目だけのようだ。


「だが、隣街ツインの由来は「二人分」だ。一人では何かと苦労するモンスターがいるようだ。気をつけろよ?」


 ここで指示男が何やら助言をくれる。


「もしかして……だからリョウヤさんは一緒にって言ってくれたのかな?」


 助言の意味はわからなかったが、二人であることに意味がありそうだと予想してリョウヤの方を向く。

 そして指示男からはこれ以上何もなさそうだったので、そのままリョウヤの方へと戻った。



「脅されたかい?」


 戻ってきたマホにリョウヤは少し嬉しそうにそう言う。


「なんか一人だと苦労するとか……?」


 並んで歩き出しながら、指示男から言われたことを聞いてみた。


「ま、背中が弱点だとかそういうモンスターがいるってだけ。西の森をソロでクリアしたマホちゃんならたぶん関係ないと思うよ」


 指示男が言いたかったのは、本来なら一人が気を引いてその隙に背後から攻撃する等の、要はパーティ戦のチュートリアル的な位置付けで、リョウヤも多少教えるつもりではあるが、その必要性は感じていなかった。

 そもそも西の森のモンスターハウスがパーティ推奨難易度な時点で今更ではあるが、一応あれさえ回避すれば十分ソロでも狩り場として成立するので、運営的にはここからパーティを組むという選択肢を入れさせようという目論見だった。

 初期のツイン実装時点ではほとんどのプレイヤーがソロだったというのも理由の一つだ。


「そ、そうなんですね。私てっきり……」


「ん? まぁ、とにかくパーティを組んでみようか。フレンドから誘えるのは見てるだろうから、今回は野良パーティの組み方でやってみよう」


 メニューのフレンドの項目からはチャットの他にパーティ招待も行える。普段からチャットをしているマホならそちらは知っているだろうと別の方法を提案する。


「ノラパーティ?」


 しかし、まずマホはその用語で躓く。


「あー、ごめん。主に知らない人と組んだパーティのことを野良パーティって言うんだ。「一緒にこのクエストやろう」って誘ってくる人もいるよ(最近はあんまりいないけど)」


 リョウヤの最後の呟きは声が小さすぎて聞こえなかったようだ。


「なるほど……。野良猫とかの野良ってことですね」


「そうそう。で、そのやり方だけど、誘いたい相手の肩辺りに向かって右手の人差し指でチョンと押してみて」


「はいっ」


 言われた通りにリョウヤの左肩に向かって指を軽く突き出す。

 実はこの操作、顔だと失礼、胸から下はセクハラだと運営も苦心したらしい。このゲームらしく音声認識も試みたがただの会話との区別が難しかったようで結局近距離での今の動作に落ち着いた。


「ふふっ」


「ど、どうしました? 何か変でした?」


 急に吹き出したリョウヤにマホが焦る。


「ああいやごめん、何でもない。初期にこの距離がバグってて遠くの人に暴発してたのを思い出しただけ」


 過去には遠くを指差したつもりがパーティ申請していた、なんてバグがあったらしい。

 差した側はともかく、指された側は突然パーティ申請ウィンドウが現れて焦って操作をミスることもあり、軽い指差し祭が起こった。

 リョウヤは当時見たそれを思い出していた。


「そんなことあったんですね」


「今は近距離にしか反応しないから安心して。それじゃ承認っと。ちなみに本当に知らない人から突然申請来ても承認しないようにね」


「わかりました。前に言ってたやつですね」


「もうあいつらとも縁はないだろうけど」


「え? どうしてですか?」


「だってマホちゃん、そのまま先に進むつもりでしょ?」


「あっ、ははは。確かに!」


 マホはこの先イベント等以外では前の街に戻らず先を目指そうと考えていた。

 そしてそれはリョウヤにも見抜かれていたらしい。

 図星を突かれた照れを笑ってごまかした。


「じゃあ、次ね。自分のHPバーの左に俺の名前とHPバーが小さく出たでしょ?」


「はい! あります!」


「その俺の名前をタッチしてみて」


「えっと……リーダー交代?」


 リョウヤの名前に触れると、メンバー一覧というウィンドウにリョウヤの名前とその横に「リーダー交代」というボタンがある。


「このパーティメニューを出しているとメンバー同士でチャットもできる。それでリーダーだとその画面ね。メンバーとリーダーを交代することができる。それでリーダーじゃない時の画面も説明するから、一度交代してみて」


「わかりました」


 そのボタンを押すとウィンドウが閉じられ、リーダーが代わる。


「じゃあ、また俺の名前にタッチしてみて」


 同じように操作すると、今度はメンバー一覧にマホの名前。


「ドロップ拒否?」


 先程はリーダー交代だったボタンの位置に「ドロップ拒否」というボタンがあった。


「モンスターのドロップ品はメンバーで抽選するんだ。そのボタンを押してるとその抽選には参加しないってことだね。リーダーにはそれがないから全員が拒否したらドロップ品は全てリーダーのものになる」


「それって……独り占めってことですか?」


「そういう場合もあるね。例えば今の俺達なら俺はこの辺りのドロップはいらないから全部マホちゃんにあげる、っていうことができる」


「あ、なるほど。でも、抽選でお願いします!」


 先日のお金もそうだが、物のやり取りには注意するようにゲーム開始前に両親から教えてもらった。

 特に自分や相手が一方的に受け取るようなことはしないように、とも言われていた。

 マホはその言いつけをしっかり守っていたのだった。


「はは、わかった。それと、パーティによってはリーダーが管理するっていうところもある。全部終わってから均等に振り分けるとかね。結構信頼し合ってるパーティじゃないとなかなか難しいけど」


「そうですよねー……」


 ちょろまかしや持ち逃げ等の行為を知らなくても予想できてしまった。

 リョウヤと紅蓮以外のプレイヤーと全く関わっていない現状、パーティを組むのは少し怖いと思ってしまう。

 ただ今後のほとんどをソロでプレイすることになるとは全く思ってもいなかった。


「だから基本は抽選なんだ。そのメニューで拒否していないとドロップ品が出るたびに抽選──このゲームだとロットって言うんだ──に参加するかを選べるし、うっかりそのまま放置しても他のメンバーが選択し終わるか、5分経過で自動的にロットインされる」


「なるほど」


 リョウヤはリーダーをマホに戻しつつ説明を続ける。マホはそれを真剣に聞いていた。

 いつかその知識を活かす時が来るかもしれない、そう思っていた。


「ちなみに、欲しい素材を予め伝えておくのも大事だ。お互いに欲しいものを譲り合うのは問題ないだろう?」


「そうですね。それなら……はい!」


 それならば両親の言う「一方的」ではない。

 マホは力強く賛同した。


「ま、欲しい物が出るかは運次第だけどね」


「はは、確かに」


「ちなみにお金の場合は全員同じ額が手に入るし、木箱や宝箱もそう。だからダンジョンは特にパーティの方が効率がいいんだ」


「みんなで同じものが貰えるのはいいですね」


「だろ? ま、これがヌルいって辞めるプレイヤーもいるけどな……。まぁ、そういうやつはこのゲームに向いてないんだろう」


「手に入るのになんでダメなんだろう……」


「要は自分だけが手に入れて自慢したいのさ。俺もそういうとこがないわけじゃないけど」


 リョウヤは常にシリーズ装備を表示させている。

 ほとんどのプレイヤーがその存在を知らないのだから大した自慢にはなっていないのだが、それでも持っている側としたら気分は違う。


「その鎧、カッコいいですもんね」


「だろ!? なかなか声を大にして言えないのが難点だけどな」


 マホに褒められて思わずテンションを上げてしまったリョウヤは落ち着かせて頭を掻く。


「ですね。私も早く表示させたいんですけど……」


「はは、そりゃそうだ。でももうちょっと我慢しようか。あとは……そうそう。宝箱でも同じものが手に入るって言ったけど、ワードって被らないんだ」


 大事なことを忘れていたと大きく手を叩いてワードの説明を入れる。


「えっと……持っていないワードが手に入るってことでいいんですか?」


「そういうこと。だけど、もし自分の欲しいワードをパーティの誰かが持ってたとしたら……?」


「あっ……! 手に入らない!?」


「そう。だからパーティを組む時は持ってるワードの確認は忘れないように。まぁ、相手も同じことを考えてるはずだから忘れようがないと思うけど」


「じゃあもしリョウヤさんとこのまま宝箱を見つけたとしたら……」


「手に入らないワードが結構出てくるってこと。俺はレジェンドレアを一つ持ってる。それがマホちゃんには絶対に手に入らない」


「すごい! レジェンドレア! あっ、もしかしてリョウヤさんがソロなのって……」


 未知のレアリティに感動しつつも、リョウヤがソロでいる理由にも気付いた。


「それもあるし、装備の秘密もある。けどソロが性に合ってるっていうのもあるんだ」


 リョウヤはそれを肯定しながらも別の理由があることを伝えた。マホに()()されたような気がしたからだ。


「そっかぁ……。私、パーティ組めるかなぁ」


 シリーズ装備を隠した方がいいのはマホも同じ。

 それにウルトラレアのワードを二つも所持している。これまでのリョウヤや紅蓮との会話からそれが多いんだという自覚も出てきた。

 とはいえリョウヤはこの時点ではあまり心配していなかった。


「大丈夫。これから行くツインやその次の街は他のプレイヤーも多いからね。それじゃ、そろそろ外に出るよ」


 一通り説明が終わる頃には西門に辿り着いていた。

お読みいただきありがとうございます。


ログインして動かない初心者の友人を/pokeでつんつんつついてたら周りの知らない人も一緒になってつついてたのを思い出しました。


※7.22修正

マホのウルトラレアワードは二つでした。

多分何かと勘違いしてたんだと思います。

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