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8話 聖夜決戦前夜

12月24日。クリスマス・イブ。


朝のボクシングジムは、いつもより少し静かで、どこか緊張した空気が漂っていた。


朱莉「おはよう!」


緋奈子「おはようございます!」


緋奈子は今日も赤いシャツを着て、赤いスニーカーを履いていた。 


さらに今日はアウターも赤いコートを羽織り、全身に赤を取り入れている。


その姿は、以前の弱々しい彼女とは明らかに違っていた。


朱莉「おぉー! その服、とっても似合ってる!

アウターまで赤にしたんだね」


緋奈子「ふふ、ありがとうございます。

気持ちも前向きになるかなと思って……積極的にこの色を取り入れてみました」


朱莉「可愛いし、カッコいいよ! 本当に似合ってる」


緋奈子は少し照れくさそうに笑いながら、自分の赤いコートの袖を軽く握った。 


緋奈子「あんまり褒めないでくださいよ……。


ただ、この色を身につけていると、なんだか自信がついた気がするんです。


それに……あいつがこの色を嫌いだって知ってるから、わざとこの赤で勝負してやろうと思って」


朱莉「いいね。それでこそ緋奈子さんだよ。あいつの嫌いな色を武器にするなんて、最高じゃない」


緋奈子「はい。明日は、私の勇姿をしっかり見届けてくださいね!」


朱莉「もちろん。目に焼き付けておくよ」


緋奈子「それじゃあ、明日の本番に向けて、最後の練習に行きましょう!」


朱莉「そうだね。頑張ろう!」


二人はいつものジムへと向かった。


リングの上では、緋奈子の赤いシャツが汗で光っていた。


緋奈子「297……298……299……300!」


緋奈子「今日も300回、叩ききりました!」


彼女は大きく息を吐きながら、ガッツポーズを取った。


顔は汗だくだったが、瞳は輝いていた。

朱莉「もうバッチリだね! 本当に強くなったよ」


緋奈子「たくさん練習しました……。いつも付き合ってくれて、本当にありがとうございます」


朱莉「いやいや。私もDVで苦しんだ立場だから、緋奈子さんにも同じ思いをしてほしくないんだ。


それに、解決方法が『相手をコテンパンにやっつける』って共通点があるから、親近感も湧いちゃってね」


緋奈子はくすっと笑った。


緋奈子「明日は、コテンパンにしますよ!」


二人はリング脇に座り、明日の作戦を確認し始めた。


朱莉「明日の夜は、私が緋奈子さんの家に待機していればいいんだよね?」


緋奈子「はい。あいつは、絶対に来ると思います」


朱莉「わかった。ヤツに決闘状を渡して、会場まで連れてくるよ。そこで聖夜決戦の始まりだね」


緋奈子「そして……私があいつをぶっ飛ばします!」


朱莉「緋奈子さんの勇姿、しっかり目に焼き付けるよ。


審判は私が務めるし、撮影係も兼ねるからね!」


緋奈子「ふふ、楽しい楽しい復讐劇のはじまりですね!」


二人は顔を見合わせて笑った。 


笑い声の中にも、明日の緊張と高揚感が混じっていた。


朱莉「明日は一緒に頑張ろう。私はずっと、緋奈子さんの味方だよ」


緋奈子「はい……ありがとうございます。朱莉さんがいてくれて、本当に心強いです」


最後の練習を終え、二人はジムを出た。


外はすでに暗くなり始め、街はクリスマスのイルミネーションで華やかだった。


 二人は赤いコートと赤いシャツ、赤い靴という「赤」で統一された姿で、並んで歩いていた。


緋奈子「明日が来るのが、怖いような……楽しみなような……不思議な気持ちです」


朱莉「大丈夫。あなたはもう、十分に強くなってる。

あの赤いシャツと赤い靴が、ちゃんと守ってくれるよ」


緋奈子は自分の胸元に手を当て、静かに頷いた。


緋奈子「この赤は、あいつの嫌いな色。だからこそ、私はこの色で勝ちたいんです。


朱莉さんと一緒に選んだ、この赤で……」


二人は駅までの道を、ゆっくりと歩いた。


明日はクリスマス。


緋奈子にとって、それはただの祝日ではなく、長い間苦しめられてきた男に、決着をつける「聖夜決戦」の日だった。


赤いシャツを着た二人の背中は、街のイルミネーションの中で、静かで、けれど確かに燃えるように輝いていた。

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