6話 燃える想い
買い物をした日の夜。
緋奈子がアパートの鍵を開け、リビングの明かりをつけたその瞬間——
ガチャ……。
ドアがゆっくりと開いた。
緋奈子「……また来たの?」
そこに立っていたのは、予想通り、あの最低な男だった。
緋奈子「もう別れたんだから、鍵返してって何度も言ってるじゃん!
しかも今日、友達といたところ、後をつけてたでしょ?」
DV野郎「うるせぇ!」
男は乱暴にドアを閉めずかずかと部屋に入ってきた。
DV野郎「お前、今日、普段身につけないような赤い靴を買ってただろ?他に男ができたのか?」
緋奈子「知らないわよ」
DV野郎「何だと?」
次の瞬間、男の平手が緋奈子の頰を打った。
緋奈子「うぅ……痛い……」
DV野郎「赤って俺が嫌いな色なんだよな! 派手で気持ち悪い!」
緋奈子「うぅぅ……」
頰が熱く腫れ上がる。痛みと屈辱で目が潤んだが、緋奈子は歯を食いしばった。
緋奈子「自分の身につけたい色を身につけたっていいじゃん!そんなことまで指図するの?」
緋奈子「それに、あんたからそんなこと言われる筋合いはない!」
DV野郎「黙って聞いてりゃ、調子に乗ってきやがって……コノヤロウ!」
男が再び手を振り上げた瞬間——
緋奈子「えーい!」
彼女は咄嗟に体を低くし、赤い靴を履いたままの右足で男の脛を強く蹴った。
DV野郎「くっ……!」
男が一瞬よろめく。
DV野郎「てめぇぇぇぇぇ!! 女のくせにっ!!」
しかし、緋奈子はまだ本気で抵抗できなかった。
男の拳が腹にめり込み、彼女は苦しそうにうずくまった。
緋奈子「くるしぃぃぃ……」
DV野郎「懲りたか?」
緋奈子「……懲りないよ!」
痛みに耐えながら、緋奈子は顔を上げ、はっきりと言った。
緋奈子「あんたのやってること……絶対に許さないんだから!」
DV野郎「女の分際で俺に楯突くとは、大御苦労だな。
今日はこのくらいにしてやる。また、金用意しておけよ!」
男は吐き捨てるように言い、乱暴にドアを閉めて出て行った。
緋奈子「女の分際って何よ……!
絶対許さないから、覚悟しておきなさい……!」
ドアが閉まる音が響いた後、緋奈子は床に座り込んだ。
頰と腹の痛みがまだ残っている。
でも、今日は少し違った。
新しく買ったばかりの赤い靴が、足元で静かに輝いていた。
緋奈子「……もう、逃げない」
彼女はゆっくりと立ち上がり、赤い靴を履いたまま軽くステップを踏んだ。
緋奈子「クリスマスまであと少し……
絶対に、あいつを私の手でボッコボッコにしてやる」
痛みの中で、緋奈子の瞳にはこれまでより強い炎が灯っていた。
朱莉さんと一緒に頑張ってきた特訓の日々。
赤い靴に込めた決意。
長かった一日が終わり、静かな夜が更けていく。
緋奈子の心は、もう完全に戦うモードに切り替わっていた。




