15話 試合開始
リングの照明が、二人の影を長く床に落としていた。
朱莉はリングサイドで深く息を吐き、ゆっくりとアナウンスを始めた。
朱莉「さて……それでは、コーナーを決めましょうか?その前に、グローブを着けてください」
朱莉はリングサイドのテーブルから、二組のグローブを取り出した。
朱莉「ルールはノックアウト制だけど、安全のためね」
まず緋奈子に渡したのは、鮮やかな赤いグローブだった。
緋奈子はゆっくりとそれを両手に装着した。
指を一本一本丁寧に通し、しっかりと締めていく。
赤いシャツ、赤い靴、そして赤いグローブ——全身が赤で統一された姿は、リングの照明の下で圧倒的に輝いていた。
緋奈子はグローブをはめた手を軽く打ち合わせ、静かに微笑んだ。
緋奈子「この赤……今日のために用意したの。
あんたが一番嫌いな色で、勝負するよ」
一方、DV野郎に渡したのは、 黒いグローブだった。
DV野郎は乱暴にそれをはめながら、吐き捨てるように言った。
DV野郎「チッ……黒でよかったぜ。
お前のその派手な赤、気持ち悪いんだよ」
赤いグローブをはめた緋奈子と、黒いグローブをはめたDV野郎。
リングの上で、二人の色が鮮やかに対比していた。
朱莉は満足そうに頷き、アナウンスを続けた。
朱莉「それでは、コーナーを決めましょう。
赤コーナーと青コーナー、どっちがいい?」
緋奈子はリングの中央で小さく微笑み、DV野郎に向かって聞いた。
緋奈子「赤コーナーと青コーナー、どっちがいい?」
DV野郎は顔を歪めて即答した。
DV野郎「俺は、派手な色嫌いって言ってんだろ!
俺は赤が一番嫌いなんだよ!」
緋奈子は少し首を傾げ、悪戯っぽく笑った。
緋奈子「似合う?あんたが赤嫌いって言うから、真っ赤なコーデにしたんだよ!
あんたをやっつけるための戦闘服だけどね……笑」
DV野郎の顔が一瞬で真っ赤になった。怒りが爆発しそうだった。
DV野郎「くそが! 絶対にボコボコにしてやる!
俺が青コーナーだ!」
緋奈子「やったー! じゃあ、私は赤コーナーにするよ!」
朱莉はリングの外から、静かに微笑みながら言った。
朱莉「最後に聞くけど、後悔はない?」
緋奈子は迷いなく、力強く答えた。
緋奈子「ありません!」
DV野郎「あるわけないだろ!」
朱莉「二人の意志を確認できました。
それでは、試合を始めます」
ジムの中に、緊張した空気が一気に張りつめた。
朱莉は少し声を張り上げ、アナウンスを続けた。
朱莉「最初に、赤コーナー!
赤いコーデがカッコ可愛い! 正義のヒロイン!
緋奈子!」
緋奈子はリングの赤コーナーで右手を挙げ、はっきりと言った。
緋奈子「絶対に負けないから!」
朱莉「続きまして、青コーナー!
最低最悪、極悪で女の敵!DV野郎!」
DV野郎は顔を激しく歪め、怒鳴り返した。
DV野郎「はぁ! ふざけんな!
何アナウンスしやがる!」
朱莉「事実を言っただけじゃん……笑」
DV野郎「くっ……!」
朱莉は笑いを堪えながら、リングの中央を指した。
朱莉「それでは、向かい合って!試合開始!」
いよいよ、二人の決闘が始まった。
緋奈子は赤コーナーからゆっくりと前へ歩み出た。
赤いシャツ、赤い靴、赤いグローブ——全身が赤で統一された彼女の姿は、リングの照明の下で圧倒的に輝いていた。
DV野郎は青コーナーから荒々しく歩み寄り、緋奈子を睨みつけた。
DV野郎「よくもまあ、こんな派手な格好で俺の前に立てたな……今日は、たっぷり後悔させてやる!」
緋奈子は静かに構えを取り、はっきりと言った。
緋奈子「後悔するのは……あんたの方だよ」
リングの中央で、二人の視線が激しくぶつかり合う。
いよいよ緋奈子の試合が始まる。




