14話 これまで受けた痛み〜全部返します〜
朱莉はリングサイドで深く息を吐いた。
彼女の視線は、リングの中央に立つ緋奈子の赤いシャツと赤い靴に注がれていた。
照明の下で鮮やかに輝くその赤は、まるで二人の情熱をそのまま映し出しているようだった。
朱莉(緋奈子……あなたはもう、私の時と同じように強くなった。
毎日一緒に練習したこのリングで、あいつの嫌いな赤を武器に……絶対に、勝って!
私はここで見守ってるから……信じてるよ)
緋奈子は静かに構えを取った。
赤いシャツの胸が、緊張と決意でゆっくりと上下している。
彼女の瞳には、恐怖の色はほとんどなく、代わりに強い光が宿っていた。
毎日このジムで積み重ねてきた努力、朱莉から受け取った言葉、そして自分の覚悟——それらが今、彼女の体を支えていた。
緋奈子「来てください。私は……もう逃げません。
あなたに、これまで受けた痛み……全部、返します」
DV野郎は舌なめずりをするように笑った。
酒のせいか、目は少し濁っているが、いつもの傲慢さが顔全体ににじみ出ていた。
DV野郎「へへっ……今日はたっぷり、楽しませてもらおうか!」
空気がピンと張りつめた。
リングの照明が、二人の影を長く床に落とす。
雪が窓を叩く音が、貸切のジムの中に静かに、しかし重く響いていた。
朱莉はリングロープを軽く握りしめ、静かに祈った。
朱莉(さあ……始まって!緋奈子さんの、本当の戦いが……
毎日一緒に汗を流したこのリングで、あなたが一番輝く瞬間を、私に見せて!)
赤いシャツを着た緋奈子と、酒に酔った最低の男。
二人の距離が、ゆっくりと、しかし確実に縮まっていく。
緋奈子は一歩も引かず、真正面からDV野郎を睨みつけた。
その姿勢には、2ヶ月間の特訓で培った自信と、朱莉から受け継いだ「赤い情熱」が確かに宿っていた。
DV野郎は拳を鳴らし、にやりと笑った。
DV野郎「よし、始めるか。クリスマスプレゼントに、たっぷり痛めつけてやるよ!」
聖夜のジムに、
長い間続いた恐怖と屈辱に、ついに決着の時が訪れようとしていた。
赤い情熱が、静かに、しかし激しく燃え始めていた。




