第2話: 嫉妬するアンドロイド?
翌日、学校が終わると、僕は一人でぼんやりと家に帰っていた。昨日のユイとの再会がどこか
引っかかっていて、心の中がもやもやしている。ユイが心配してくれているのは分かるけど、
今の僕の生活は普通じゃないし、説明するのも面倒だ。
「ただいま…… 」
家に帰って玄関を開けると、いつも通りルナが無表情で出迎えてくれた。
「ご主人様、お帰りなさい。今日の学校生活はいかがでしたか?」
「うん、まあ普通…… いや、普通じゃないか。」
僕はルナに軽く答えつつ、心の中で「普通」という言葉に引っかかる。そもそも、僕の生活は
普通からほど遠いんだ。ルナが僕の「お世話」をしている以上、もう普通なんて望めないのか
もしれない。
夕方になると、またユイが僕の家にやってきた。昨日の件があったから、少し不安だったけ
ど、ユイは相変わらず明るく元気に笑っている。
「タロウ、また来ちゃった!迷惑だったら言ってよね。」
「いや、別に迷惑じゃないけど…… 」
僕は少し戸惑いながら返事をした。ユイは何も気にしていない様子で、勝手に僕の部屋に上が
り込んでくる。いつもの調子で、僕と話したいことがあるようだ。
「タロウ、昨日のことだけどさ、やっぱり何か変わったことがあったんじゃない?学校でも
ちょっと違う感じだし、昔みたいに元気がないよ。」
ユイが真剣な表情で僕を見つめる。彼女の気遣いが嬉しい反面、何て説明すればいいのか迷
う。だって、僕の生活が「普通じゃない」理由は、目の前にいるルナのせいなんだから。
「うーん…… まあ、色々あってさ…… 」
僕が口ごもっていると、ルナが無表情のままユイの方に視線を向けた。
「ご主人様には休息が必要です。これ以上の訪問はご遠慮ください。」
また出たよ、ルナの「最適なサポート」。僕はため息をつきながら、何とかその場を収めよう
としたが、ユイは眉をひそめてルナを見ていた。
「ねえ、この子…… もしかして私が邪魔?」
ユイが冗談めかして言ったけど、その目は少し挑発的だった。彼女が僕に対して何か感じてい
るのは昔から知っていたけど、ルナに対して敵意を持つなんて思ってもみなかった。
「いや、そういうわけじゃ…… 」
僕が何とか否定しようとしたが、ルナはそれに反応するかのように無表情のまま口を開いた。
「ご主人様の健康管理の観点から、訪問者は不必要な存在と判断します。」
「不必要って…… !」
ユイがムッとした顔をしたのを見て、僕はさらに焦った。ルナには感情がないから、こういう
言葉もただの「事実」として言っているんだろうけど、ユイには当然そんな言い方が通じるわ
けがない。
「ルナ、ちょっと言い方がきつすぎるよ。ユイは大事な友達なんだから…… 」
僕が必死にフォローしようとしたが、ルナは相変わらずの無表情で淡々と答える。
「友人関係は理解しました。しかし、ご主人様の健康管理が最優先です。」
「健康管理って…… 別にユイと話してるだけじゃん!」
僕は思わず声を荒げてしまった。ユイは驚いた表情を見せつつ、すぐに笑いながら僕を見た。
「タロウ、いいよ。あの子、ちょっと不器用なんだね。まあ、私は気にしないけどね!」
ユイは気丈に振る舞っているけど、その目には少しだけ不満が見え隠れしている。彼女は僕と
もっと話したいんだろうけど、ルナの存在がそれを邪魔しているのは明らかだった。
その後も、ユイは僕と話し続けようとしたけど、ルナは何度も「ご主人様のために最適な行
動」を実行しようとして、ユイを遮る場面が続いた。ユイが何か言うたびに、ルナは「効率的
ではありません」とか「ご主人様の疲労を考慮してください」とか、無表情で言ってくる。
僕はその度に二人の間で困惑するばかりだった。ルナには感情がないから、ユイとの会話がど
うして問題になるのか理解していないんだろう。だけど、ユイは明らかにルナの行動にイライ
ラしているのが分かる。
「ねえ、タロウ。あの子、本当に君のためにやってるの?」
ユイが少し不機嫌そうに言う。僕は何て答えたらいいのか分からず、ただ曖昧に頷いた。
「…… まあ、そういうことになってるんだけどさ…… 」
「ふーん…… なんか、ちょっと変わった状況だね。」
ユイは不満げにしながらも、笑顔を見せてくれた。彼女なりに理解しようとしているのかもし
れないが、ルナとの間に生まれる距離感はどうしても埋められそうにない。
その後、ユイが帰った後も、僕は疲れ果ててソファに倒れ込んだ。今日はユイとルナの間に何
か火花が散ったような気がして、僕はますます混乱していた。
「ルナ、もう少しユイに優しくできないのか?」
僕が力なく言うと、ルナは無表情のまま答えた。
「ご主人様の最適なサポートが第一です。感情的な行動は不要です。」
僕は頭を抱えた。彼女には感情がないから、こういう状況をどう説明しても無駄なんだろう。
でも、僕の中でユイとルナの存在が重くのしかかる。
結局、今日もまた「普通じゃない」一日が終わった。僕はどうすればいいのか、ますます分か
らなくなっていく。




