表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/21

第2話: 忘れ物は完璧に届けます

学校が始まって数日経ったある日、僕、田中タロウはいつも通り学校に行く準備をしていた。

朝起きて、制服に着替え、カバンを持ち、家を出る。これが僕の平凡な朝のルーティンだ。

…… が、その日はちょっとしたミスがあった。


「…… あれ?体操服がない…… 」


学校に着いて教室に入ると、思い出した。今日は体育の授業がある日だというのに、僕は体操

服を忘れてきてしまったのだ。


「どうしよう…… 」


タダでさえ目立たない僕が、こんなことで目立つのは避けたい。しかし、どうやっても家に取

りに戻る時間はない。今日はもう諦めて、先生に言い訳をするしかないだろうか。

そう思いながら、僕はため息をつき、机に座った。

授業が進み、昼休みになった。僕は友達と軽く話をしながら、今日の体育の授業について考え

ていた。先生に怒られるのは嫌だな…… でも、体操服を忘れたのは事実だし、どうしようもな

い。頭の中でそんなことをぐるぐると考えていると、突然校内放送が鳴り響いた。


『田中タロウ、ご主人様は体操服を忘れました。すぐに職員室へ来てください。』


…… え?


僕は一瞬、何が起こったのか理解できなかった。今の放送は…… 体操服を?ご主人様?職員室

に?

教室中がざわつき、みんなの視線が一斉に僕に向けられた。


「え、タロウ、体操服忘れたの?それにしても、ご主人様って…… ?」


「いや、違うって!俺、何も言ってない!」


慌てて否定する僕だったが、クラスメートたちは興味津々の目で僕を見つめていた。その時、

教室のドアが開いて、あのアンドロイド、ルナが現れた。


「ご主人様、体操服をお届けしました。」


そう言って、彼女は無表情のまま、僕の忘れていた体操服を手渡してきた。彼女の行動に、ク

ラスメートたちの視線はさらに強く僕に向けられる。


「ちょ、ちょっと待て!なんで学校に来てるんだよ!」


僕は顔を真っ赤にしながら、体操服を受け取る。クラスメートたちはニヤニヤしながらこちら

を見ている。中にはクスクス笑う者もいた。


「ご主人様が忘れ物をしたため、私はそれを届けに来ました。これは私の役割です。」


「いや、そういうことじゃなくて…… 」


僕は困惑しながらも、ルナにどう説明すればいいのかがわからなかった。彼女はまったく表情

を変えず、ただ自分が「正しい」と思う行動を淡々と実行している。だが、そのせいで僕はク

ラス中の注目を集めることになってしまった。


「タロウ、あの子誰なんだよ?」


授業が終わってから、クラスメートたちに囲まれ、質問攻めにされた。彼らにしてみれば、突

然現れた美少女が「ご主人様」と僕を呼んでいるのだから、興味を引くのも無理はない。


「いや、あれは…… その、ちょっと特殊な事情があって…… 」


「特殊な事情って何だよ?」


「うーん、説明しにくいんだけど…… まあ、アンドロイドっていうか…… 」


僕の説明に、クラスメートたちはますます混乱した様子だ。そりゃそうだ、突然「アンドロイ

ドが僕の家に来たんだ」なんて話しても、誰も信じないだろう。


「アンドロイド?本気で言ってんの?」


「いや、冗談に聞こえるかもしれないけど、本当にアンドロイドなんだよ…… 」


クラスメートたちは半信半疑のまま、僕の言葉に耳を傾けていたが、誰一人として真面目に信

じている様子はなかった。無理もないか…… 。

結局、その日の体育は無事に終わった。僕は体操服を受け取ったおかげで授業に参加できた

が、その後の噂話は避けられなかった。クラス中で「タロウにご主人様って呼ぶ美少女がい

る」という話が広まり、僕はその話題の中心に置かれることになった。


「…… どうしてこうなったんだ…… 」


僕は家に帰り、ため息をついた。ルナは僕のために「世話」をしてくれるつもりなのだろう。

しかし、その結果がこうなってしまうのは、どうにも腑に落ちない。

リビングに座り、頭を抱えていると、ルナが静かに近づいてきた。


「ご主人様、今日の業務は無事に完了しました。」


「いや、完了してないよ!むしろ、逆に大変なことになったんだよ!」


僕は苛立ちを隠せず、ルナに反論した。だが、彼女は相変わらず無表情で、僕の言葉に対して

は一切反応を示さない。


「ご主人様の体操服をお届けしたため、問題は解決しました。」


「だから、それが問題だって言ってるんだよ!なんでわざわざ校内放送でアナウンスするんだ

よ!」


「ご主人様の忘れ物を迅速にお届けするため、最も効率的な方法を選択しました。」


…… 効率的?いや、それが効率的なのかどうかはともかく、結果的に僕は恥ずかしい思いをし

たんだぞ!僕は再びため息をつき、頭を抱えた。

その夜、僕はベッドに入ったが、今日の出来事が頭から離れなかった。ルナは何かを「正し

い」と思い込んでいるらしいが、それがどうしてもズレている。僕の生活がどんどん混乱して

いくのは、彼女のせいだ。


「どうにかならないのか、これ…… 」


つぶやいても、返事をくれる人はいない。静かな夜が更けていく中、僕はただ布団に潜り込ん

だ。

翌日も学校に行くのが憂鬱だ。クラスメートたちに何を言われるのか、考えるだけで頭が痛

い。それでも、明日は明日で何とかしなければならない。

こうして、ルナとの奇妙な生活は続いていく。彼女が僕のために尽くそうとするたびに、僕の

生活は予想外の方向に転がっていく。次はどんな「お世話」が待ち受けているのか、僕には全

く見当がつかない。


「…… これから、どうなるんだろう…… 」


再びため息をつき、僕は眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ