四番ファーストテロス
初回、打球は高々と飛んだ。
ピッチャーが俯く。
テロスの放った客席に飛び込むかと思われた打球は風で失速してフェンスダイレクト。
二塁のランナーが本塁に帰って来る。
打たれたか。
失投ではなかった。
外角際どいところのストレート。
それを、打たれた。
これが元メジャーリーガーか。
テロスは一塁を蹴ったが外野の返球を見て戻った。
なんにしても、これで阪神に一点が入ったわけだ。
ただでさえアドバンテージが阪神にある状態。
これ以上負けたくない。
五番萩原。
今日の投手の調子なら抑えれるはずだ。
変化球から入る。
まさかのバント。
(五番にバント!?)
無警戒だった。
萩原は一塁で刺す。
テロスは二塁へと進んだ。
ブーイングが起こる。
五番にバント。ちょっと予想外すぎる。
そして、六番佐古田。
嫌なバッターだ。
「昔、こういうシーンがあったな」
佐古田が淡々とした口調で言う。
「その時、俺は打った」
そう言って構えた。
嫌な予見がする。
地鳴りがする甲子園。
主役は佐古田。
集中の領域に入っている。
得点圏の佐古田は強い。
今年も得点圏では三割五分以上の打率を残しているはずだ。
さて、どう攻める?
内角は駄目だ。
しかしそれで外角というのも安直。
変化球で打ち気を反らすか
そう考えた。
空振り。
一先ずワンストライク。
二球目を覚悟を持って内角少し外れた場所に構える。
内に入ったら。
内に入ったら持っていかれるだろう。
二球目はファール。
これでツーストライクに追い込んだ。
まな板の上の鯛だ。
後は外スラを一回挟んでおくか、と思う。
「お前なら」
ピッチャーの投球モーション中、佐古田がポツリと言った。
球が投じられる。
待て、と思った。
自分の配球を悔いた。
打球音。
打球は鋭く左中間を抜いた。
テロスは本塁へ。
初回から三点の先制を許したのだった。
(CS前とは別の打者だ)
呆れ混じりに思う。
だが、自分ならば。
自分なら取り返せるはずだ。
そう、三神は気合を入れた。
その裏、DeNAの攻撃が始まる前。
上位打線が並んだ。
一ノ瀬が言う。
「良いか、一点は返すぞ。ピッチャーを楽にしてやれ」
応じる声が重なる。
三神も、マウンドのピッチャーを見つめていた。
そう簡単に得点を取れる選手ではない。
そう思った。
つづく




